丁子(読み)チョウジ

デジタル大辞泉 「丁子」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐じ〔チヤウ‐〕【丁子/丁字】

フトモモ科の常緑高木。芳香があり、葉は楕円形両端がとがる。筒状の花が房状に集まってつき、つぼみは淡緑色から淡紅色になり、開花すると花びらは落ちる。つぼみを乾燥したものを生薬香辛料にし、また油をとる。モルッカ諸島原産で、東南アジアやアフリカなどで栽培。クローブ
丁子油」「丁子頭がしら」「丁子香」「丁子染め」などの略。
紋所の名。1の実をかたどったもの。
刀剣の刃文の一。乱れ刃一種で、チョウジの実を並べたような形状のもの。

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精選版 日本国語大辞典 「丁子」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐じチャウ‥【丁子・丁字】

  1. 〘 名詞 〙
  2. フトモモ科の常緑高木。モルッカ諸島原産で、アジアの、主に熱帯で広く栽植されている。幹は高さ一〇メートルくらい。葉は長さ約七センチメートルの先のとがった卵状長楕円形で、対生し光沢があり革質で油点を散在する。花はつぼみで白色、やがて淡紅色の小さな筒状花となり、枝先に集まって咲く。花弁は落ちやすく、多数の雄しべをもち、強い芳香がある。果実は紡錘形で長さ二センチメートルくらい。つぼみを乾燥させたものを丁子、あるいは丁香といい、古来、有名な香料の一つで、紀元前からギリシアや漢に知られ、日本では正倉院御物にみられる。一五世紀ヨーロッパではこの香料を求めて争奪戦が起こった。香料や健胃・防腐など多方面に用いる。クローブ。丁子香(ちょうじこう)。《 季語・春 》
    1. [初出の実例]「其実鶏舌。其花丁子。其脂熏陸。沈水久者為沈水香」(出典聖徳太子伝暦(917頃か)上)
  3. ちょうじいろ(丁子色)」の略。
    1. [初出の実例]「丁子に深く染めたるうすものの単衣を」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蜻蛉)
  4. ちょうじこう(丁子香)」の略。
    1. [初出の実例]「丁字(ちゃうじ)の香(か)、極(いみじ)く早う聞(かが)ゆ」(出典:今昔物語集(1120頃か)三〇)
  5. ちょうじゆ(丁子油)」の略。
    1. [初出の実例]「紅、おしろいで年を化かし、梅花、丁字で髪を化かし」(出典:松翁道話(1814‐46)三)
  6. ちょうじがしら(丁子頭)」の略。
    1. [初出の実例]「世をすつる心もほそきともし火に物おもはする吉丁子かな」(出典:狂歌・徳和歌後万載集(1785)一〇)
  7. ちょうじびき(丁子引)」の略。
  8. 紋所の名。丁子の実をかたどった図柄のもの。丸に一つ丁子、六つ丁子、折れ丁子、三つ丁子、丁子桐、丁子車、丁子菱、抱き丁子、違い丁子などがある。
    1. 丸に一つ丁子@折れ丁子@六つ丁子@三つ丁子
      丸に一つ丁子@折れ丁子@六つ丁子@三つ丁子
  9. 刀剣の刃文の一つ。沈丁花に似た賑やかな乱れ刃。
    1. 丁子<b>⑧</b>
      丁子

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漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典 「丁子」の解説

ちょうじ【丁子】

漢方薬に用いる生薬(しょうやく)の一つ。丁香(ちょうこう)、クローブともいう。フトモモ科チョウジのつぼみを乾燥したもの。殺菌強壮胃液の分泌を盛んにするなどの作用がある。打撲捻挫(ねんざ)などの腫(は)れや痛みをおさえる治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)更年期障害月経不順、産前産後の神経症に効く女神散(にょしんさん)、しゃっくりを止める柿蔕湯(していとう)などに含まれる。

出典 講談社漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典について 情報

普及版 字通 「丁子」の読み・字形・画数・意味

【丁子】ていし

蛙の子。

字通「丁」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「丁子」の解説

丁子 (チョウジ)

植物。フトモモ科の常緑小高木,園芸植物,薬用植物。チョウジノキの別称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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