三人片輪(読み)サンニンカタワ

デジタル大辞泉 「三人片輪」の意味・読み・例文・類語

さんにんかたわ〔サンニンかたは〕【三人片輪】

《「さんにんがたわ」とも》狂言三人ばくち打ちが盲人などをよそおって金持ちに抱えられ、留守大酒を飲み、主人が帰ると慌てて各自の役を取り違える。

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精選版 日本国語大辞典 「三人片輪」の意味・読み・例文・類語

さんにんかたわ‥かたは【三人片輪わ】

  1. [ 1 ]
    1. [ 一 ] ( 「さんにんがたわ」とも ) 狂言。各流。博打(ばくち)に負けた三人の男が、それぞれ、にせの盲人や聾唖(ろうあ)などになって有徳人を訪れ、順々に召しかかえられる。主人の留守に、三人が預かった酒蔵の酒を盗み、大いに飲んで謡い舞ううちに主人が帰宅し、すっかりあわて、にせの役柄を互いにとりちがえて逃げ出す。
    2. [ 二 ] 歌舞伎所作事。常磐津・長唄。竹柴其水(きすい)作詞。岸沢古式部作曲。初世花柳寿輔振付。明治三一年(一八九八)東京明治座初演。[ 一 ]に取材したもの。口の利けない男を女にかえ、腰元を二人登場させて、歌舞伎的な色彩を加えたにぎやかな曲。昭和一二年(一九三七)、義太夫節に作曲し、文楽でも行なわれる。
    3. [ 三 ] 歌舞伎脚本「繰返開花婦見月(くりかえすかいかのふみづき)」の通称。
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙 目、足、鼻に不自由な部分を持った三人が、自分の欠点を機知で隠そうとする笑話。

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改訂新版 世界大百科事典 「三人片輪」の意味・わかりやすい解説

三人片輪 (さんにんかたわ)

(1)狂言の曲名雑狂言。〈さんにんがたわ〉ともいう。身障者を召し抱えようという有徳人(うとくじん)(富豪)のもとへ,無一文になった博奕打(ばくちうち)が3人,それぞれ盲目,いざり,おしを装って雇われる。主人は3人に留守をいいつけて外出すると,3人は窮屈な変装を解き,酒蔵を開いて酒盛りに興じる。主人が帰宅するとあわてた3人は変装を間違え,追い込まれて逃げ去る。3人がほぼ等しく活躍する狂言で,おしに扮した博奕打がシテ。酒盛りの場面での小舞が中心趣向。
執筆者:(2)歌舞伎舞踊。原曲は常磐津と長唄の掛合。1898年10月東京明治座初演。演者大名を5世市川寿美蔵,盲人を5世市川小団次,おしを4世沢村源之助,いざりを初世市川左団次。作詞竹柴其水。作曲7(8)世岸沢式佐,9世杵屋六三郎。振付初世花柳寿輔。本行狂言から摂取。現行は常磐津のみの上演が多い。沢瀉十種の一。

(3)河竹黙阿弥作の散切狂言《繰返開化婦美月(くりかえすかいかのふみづき)》(1874年7月東京守田座初演)の通称。
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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「三人片輪」の解説

三人片輪
(通称)
さんにんかたわ

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
誘謂色合槌 など
初演
嘉永5.8(江戸・中村座)

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