精選版 日本国語大辞典 「三体問題」の意味・読み・例文・類語
さんたい‐もんだい【三体問題】
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相互距離の2乗に逆比例する力(ニュートンの万有引力)に従って動く3個の天体の運動を明らかにする問題。2個の天体の場合を二体問題といい、これはニュートンが解き、運動の性質は完全に解明されている。二体問題の次の三体問題は、ニュートン以後、多くの研究者の努力にもかかわらず解明されず、19世紀後半になって、ブルンスErnst Heinrich Bruns(1848―1919)、ポアンカレらによって、三体問題は積分を求めるという方法では解きえないことが証明された。この解けないということは、任意の係数をもった五次方程式が解けないことと似ている。しかし特殊な係数の場合には五次方程式は解ける。三体問題にも、三体が特殊な配置をしている特殊解がみつかっている。三体が正三角形の頂点に位置する場合と、三体が一直線上の特殊な位置(三体の質量比によって決まる)にいる場合であって、ともに重心の周りを回転していて、それぞれ正三角形解、直線解とよばれている。直線解は不安定であって太陽系内には存在しないが、正三角形解は安定であり、太陽系内にいくつかその例がみつかっている。2011年4月現在、太陽と木星を底辺とする正三角形の頂点付近にはトロヤ群小惑星が4852個、火星には4個、海王星には7個の同様な小惑星が発見されている。また土星とその衛星であるテチスを一辺とする正三角形の頂点に2個、同じくディオネには2個の同様な衛星が発見されている。1993年に、等質量の三体が8の字形をした軌道上を運動する特殊解(8の字解)が発見された。
現実の太陽系内の惑星は巨大な質量をもった太陽の周りを、衛星は衛星の質量に比べてはるかに大きい質量をもっている惑星の周りを近似的には二体問題的運動をしているという階層構造をなしている。三体の質量が同程度で、互いに強い相互作用を及ぼし合って運動している例はみつかっていない。太陽系内の天体の運動は、二体問題からのずれは小さくて、摂動(せつどう)論を用いて取り扱える。摂動論によって得られる近似解は高精度観測をも十分に説明しうる精度をもっている。この際には相対論による効果をも考慮しなければならない。しかし摂動論によって得られる近似解は、有限の時間内でのみ有効であって、数学的な意味での無限の過去と未来の運動の状況についての情報は、この近似解からは得られない。
制限三体問題とは、三体のうちの一つの質量を0と考え、他の二体の有限質量の引力で、質量0の天体の運動を求める問題をいう。このとき有限質量の二体は質量0の天体の影響は受けないと考える。このように簡単化しても三体問題の本質的困難さはなんら変わりない。しかし小惑星・衛星(月)の運動を研究するには、制限三体問題から出発することが多い。
[木下 宙]
『堀源一郎著『天体力学講義』(1988・東京大学出版会)』▽『木下宙著『天体と軌道の力学』(1998・東京大学出版会)』
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…これらの事情は古典力学だけでなく,量子力学で電子などを扱うときにも同じである。古典力学で扱われた特殊な三体問題としては,3質点がつねに一直線に並んでいる場合(オイラーの直線解という),3質点が伸縮する正三角形の配列を保ちながら重心を焦点とする楕円を描く場合(ラグランジュの正三角形解という)などが有名である。 一般の場合の近似法としては,十分に正確な一体問題の解を出発点とし,それからのわずかのずれを摂動とみなす摂動論が,天文学では有効で広く使われる。…
※「三体問題」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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