三国志(読み)サンゴクシ

デジタル大辞泉 「三国志」の意味・読み・例文・類語

さんごくし【三国志】

中国二十四史の一。しょく三国の歴史を記した書。西晋陳寿の撰。魏志30巻・呉志20巻・蜀志15巻の65巻からなる。魏志の「東夷伝倭人の条」(魏志倭人伝)は3世紀ごろの日本に関する重要な文献。→三国志演義
北方謙三の長編歴史小説原典とする。平成8年(1996)から平成10年(1998)にかけて全13巻を刊行
NHKで昭和57年(1982)から昭和59年(1984)にかけて放映された人形劇。全68話。「三国志演義」を原作に、後漢王朝滅亡から魏・蜀・呉の三国時代までの約1世紀にわたる中国乱世の英傑たちの姿を描く。人形美術は川本喜八郎脚本は小川英などが担当。第17回テレビ大賞特別賞、第26回児童福祉文化奨励賞などを受賞。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「三国志」の意味・読み・例文・類語

さんごくし【三国志】

  1. 中国の正史。六五巻。晉の陳寿撰。魏・呉・蜀三国の歴史。魏志三〇巻、呉志二〇巻、蜀志一五巻からなる。魏志の「東夷伝‐倭(魏志倭人伝)」は日本に関する最古の文献の一つで、日本上代史研究上貴重な資料となっている。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「三国志」の意味・わかりやすい解説

三国志 (さんごくし)
Sān guó zhì

中国,西晋の陳寿(233-297)の著。の3国が鼎立した3世紀の歴史をあつかう正史。《史記》《漢書》《後漢書》とあわせて〈四史〉と呼ばれる。〈魏志〉30巻,〈蜀志〉15巻,〈呉志〉20巻。〈魏志〉の東夷伝に倭人伝がそなわることは有名(魏志倭人伝)。〈魏志〉は王沈の《魏書》と魚豢(ぎよかん)の《魏略》を,〈呉志〉は韋昭の《呉書》を参考とし,〈蜀志〉は蜀の遺臣である陳寿みずからの見聞にもとづいて書かれたものと考えられる。陳寿の記述は簡約をむねとしたため,南朝宋の裴松之(はいしようし)(372-451)の注釈は200種にあまる史料を精査のうえ,事実を補うことにこころがけた。《三国志》が3国のなかで魏を正統の王朝としてあつかったことは,後世さまざまの議論を呼び,宋の朱熹(しゆき)の《通鑑綱目(つがんこうもく)》はそれを不満として蜀を正統と定めた。《三国志》と裴松之注に材を取る明の羅貫中の小説,《三国演義》もその立場をとる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「三国志」の意味・わかりやすい解説

三国志【さんごくし】

中国,三国時代に関する史書。西晋の陳寿著。3世紀末成立。《魏志》26列伝30巻,《蜀志》15列伝15巻,《呉志》20列伝20巻よりなる。魏を正統としているが,全体として編纂(へんさん)の態度は慎重,また記述は簡約をむねとした。南宋の裴松之(はいしょうし)の注がある。《魏志倭人伝》は日本に関する最古の文献。→三国演義
→関連項目川本喜八郎後漢書三韓正史東夷夫余

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「三国志」の意味・わかりやすい解説

三国志
さんごくし

中国、三国時代の歴史を記した歴史書。65巻。陳寿(ちんじゅ)(233―297)の撰(せん)。もとは私撰の書であった。魏(ぎ)志30巻、蜀(しょく)志15巻、呉(ご)志20巻よりなり、魏志にのみ本紀を設け、志、表の類はいっさいない。このように魏を正統として蜀を退けたので、後世、正統論が盛んになると本書も非難の対象となり、蜀を正統とする『続漢書』なども書かれたが、資料批判が厳密であり、記述も三国に公平であるので、正史中でも良書のなかに入る。ただ叙述のやや簡略にすぎるところを、南朝宋(そう)の裴松之(はいしょうし)(372―451)の注が補っている。裴松之は多くの書籍を集めて注を施したが、現在散逸して伝えられていないものが含まれていて重要である。しかし本文と裴注を比較することにより、陳寿の資料批判の厳正さがよくわかることもある。魏志巻30「東夷伝」(とういでん)中に倭人伝(わじんでん)があり、わが国に関する最古のまとまった記録である。また『三国志演義』は陳寿の三国志をもとにしてつくられたものである。

[狩野直禎]

『宮川尚志訳『三国志』(1970・明徳出版社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三国志」の意味・わかりやすい解説

三国志
さんごくし
San-guo-zhi; San-kuo-chih

中国,三国時代史実を記した正史。の陳寿撰。魏書 30巻,蜀書 15巻,呉書 20巻の全 65巻。表と志とはない。この書はもともと陳寿が私撰したもので,官撰国史ではなかった。それだけに著者史観や史才が制約を受けることなく発揮されている。陳寿の死後正史とされた。現行の『三国志』の刊本は南朝宋の裴松之の注がついていて,この注には『魏略』をはじめとする今日散逸した書物の記事が多く残っている。『魏志倭人伝』の日本に関する記述は,日本上代史研究に不可欠のものである。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「三国志」の解説

三国志
さんごくし

魏(ぎ)・呉(ご)・蜀(しょく)3国(220~280)の興亡を扱う中国の正史。魏書30巻,蜀書15巻,呉書20巻。それぞれ通称魏志・蜀志・呉志。陳寿(ちんじゅ)(233~297)撰。蜀書・呉書は伝のみ。魏書は伝以外に帝紀があり,魏を正統視する。官修の王沈「魏書」,韋昭「呉書」,私撰の魚豢(ぎょかん)「魏略」を参照した。これらは散逸。「後漢書」成書よりも古い。東夷伝倭人条(「魏志倭人伝」)に,邪馬台(やまたい)国ほかの諸国や倭の女王卑弥呼(ひみこ)のことが記述されている。中華書局刊。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

防府市歴史用語集 「三国志」の解説

三国志

 中国の三国時代[さんごくじだい]を扱う歴史書で、同じ名前の歴史小説ではありません。魏書[ぎしょ]・呉書[ごしょ]・蜀書[しょくしよ]の3つに分かれ、魏書の中の一部が『魏志倭人伝[ぎしわじんでん]』と呼ばれる、邪馬台国[やまたいこく]や卑弥呼[ひみこ]について書かれているものです。

出典 ほうふWeb歴史館防府市歴史用語集について 情報

デジタル大辞泉プラス 「三国志」の解説

三国志〔横山光輝〕

横山光輝による漫画作品。紀元2世紀の中国を舞台に、劉備、関羽、張飛の桃園の誓いから、魏呉蜀の三国鼎立、蜀の滅亡までを描く。『希望の友』『少年ワールド』『コミックトム』1972年~1987年に連載。潮出版社希望コミックス全30巻。第20回(1991年度)日本漫画家協会賞 優秀賞受賞。

三国志〔吉川英治〕

吉川英治の長編歴史小説。1939~1943年新聞連載。中国の歴史小説「三国志演義」をベースとした、著者の代表作のひとつ。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

とっさの日本語便利帳 「三国志」の解説

『三国志』

西晋の人、陳寿(二三二~二九七)の著。三国時代(二二○~二八○)の「魏志」「蜀志」「呉志」からなる。「本紀」は「魏志」だけにあり、簡潔すぎるのを補うため、のち南朝・宋の裴松之(はいしょうし)が詳しい注を付けた。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「三国志」の解説

三国志
さんごくし

晋の陳寿が著した三国時代の歴史書。正史の1つ
65巻。魏を正統とし,魏志にのみ帝紀を設けている。簡潔な記述は正史中の異色。『魏志倭人伝』には3世紀の日本についての記述がある。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「三国志」の解説

三国志
さんごくし

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
宝永6.夏(大坂・嵐座)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「三国志」の解説

三国志
さんごくし

中国三国時代の正史
晋の陳寿の撰。魏志30巻,蜀志15巻,呉志20巻からなる。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android