三教指帰(読み)サンゴウシイキ

デジタル大辞泉 「三教指帰」の意味・読み・例文・類語

さんごうしいき〔サンガウシイキ〕【三教指帰】

平安初期の仏教書。3巻。空海著。延暦16年(797)成立。儒道仏の三教を比較して優劣をつけ、空海が仏教を選んだ根拠を、四六駢儷体しろくべんれいたい漢文で明示したもの。

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共同通信ニュース用語解説 「三教指帰」の解説

三教指帰

三教指帰さんごうしいき 空海が24歳の時に書いた戯曲形式の著作。放蕩ほうとう生活を送る貴族のおいを説教しようと、儒教道教それぞれの立場の人物が登場するが、仮名乞児という仏教僧が両者を論破し、仏教が最も優れていることを主張している。序文では、阿波(徳島県)や土佐(高知県)での修行の様子や、大学を中退して仏教に帰依した際に親族から大反対されたことなどを、自己紹介している。

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精選版 日本国語大辞典 「三教指帰」の意味・読み・例文・類語

さんごうしいきサンガウシイキ【三教指帰】

  1. 三巻。空海著。延暦一六年(七九七)、空海が二四歳のときの作といわれる。儒・道・仏の三教の比較優劣を戯曲的手法のもとに論じ、仏教が最上であることを示したもの。文体四六駢儷体(べんれいたい)。別本に同じ頃の自筆稿本「聾瞽指帰」がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「三教指帰」の意味・わかりやすい解説

三教指帰 (さんごうしいき)

弘法大師空海出家宣言の書。797年(延暦16)成立,ときに空海24歳。一説には18歳作,24歳再治ともいう。草稿本の《聾瞽(ろうこ)指帰》とは序文と末尾の十韻の詩を異にする。内容は序と上,中,下に分かれる。序は製作の意図,上巻は亀毛(きもう)先生論で,儒教の学者亀毛先生,実際には空海の叔父阿刀大足(あとのおおたり)をさすが,主人兎角公(とかくこう)の要請で,外甥の不良青年蛭牙(しつが)公子忠孝の道を教誨し,中巻の虚亡隠士(きよぶいんし)論では,道教の仙術と理想をとく。下巻の仮名乞児(かめいこつじ)論では,仮名乞児すなわち空海自身の青年時代の実像を語り,仏教が儒教,道教よりもすぐれた教えであることを明らかにした。このような三教論は中国で盛んに行われ,登場人物の名称はそれを借用している。空海の思想や伝記資料としても,最も信憑性が高く,平安時代初期の学問,宗教の資料として貴重である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三教指帰」の意味・わかりやすい解説

三教指帰
さんごうしいき

平安初期の仏教書。3巻。空海24歳のときの著作。延暦(えんりゃく)16年(797)12月1日の手記がある。序文では自伝を述べ、出家を宣言する。上巻では亀毛(きもう)先生が儒教の立身出世の道を説き、中巻では虚亡隠士(きょぶいんし)が道教の不老不死の神仙(しんせん)術を述べる。下巻は空海の自画像と思われる仮名乞児(かめいこつじ)が登場して、無常の賦(ふ)、受報の詞(ことば)、生死海(しょうじかい)の賦などを唱え、すべてのものに対する仏の慈悲の教えこそもっとも優れたものであるとする。他の2人の人物は仮名乞児の説く仏教に服し、終わりに3人が十韻の詩を合唱して幕が下りるという構成。詩の趣旨は、人々の性向、素質、能力に応じて、それぞれに儒教、道教、仏教などさまざまな教えがあるが、そのなかですべての者を救済する大乗仏教が優れている、と説く。本書は中国六朝(りくちょう)から唐代にかけて行われた四六駢儷体(しろくべんれいたい)で書かれた思想劇であり、わが国漢文学史上の白眉(はくび)とされる。なお、別本に空海の真筆『聾瞽指帰(ろうこしいき)』3巻(国宝)があり、『三教指帰』の草本といわれる。

[宮坂宥勝]

『渡辺照宏・宮坂宥勝校注『三教指帰・性霊集』(『日本古典文学大系71』1965・岩波書店)』


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百科事典マイペディア 「三教指帰」の意味・わかりやすい解説

三教指帰【さんごうしいき】

平安初期の宗教書。3巻。797年空海24歳(18歳説などもある)の時の出家宣言書。儒教道教仏教を代表する3人の人物を登場させ,これらを訪れる放蕩(ほうとう)児蛭牙(しつが)公子が最後に仏教の仮名乞児(かめいこつじ)の下で,他の儒教の亀毛(きもう)先生や道教の虚亡隠士(きょぶいんし)とともに説破され,仏道に入るという筋書。三教の優劣を論じたもので,四六駢儷(べんれい)体の美文と,戯曲調の筆致で書かれている。なお本書の別本とされる《聾瞽(ろうこ)指帰》は金剛峯寺に残り,空海の真筆とされる。
→関連項目巡り物語

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「三教指帰」の解説

三教指帰
さんごうしいき

戯曲風の体裁をとった儒・道・仏の3教の優劣比較論。3巻。空海(くうかい)著。797年(延暦16)成立。空海の出家宣言の書といわれる。序でみずからの出家と本書執筆の動機をのべ,本文では儒・道・仏の3教を代表する亀毛先生・虚亡隠士・仮名乞児におのおの教えを語らせ,仏教の最勝を宣揚する。空海の青年時代の事績と思想が知られる。別本「聾瞽(ろうこ)指帰」2巻(伝空海真筆)が金剛峰寺に伝存。「日本古典文学大系」所収。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三教指帰」の意味・わかりやすい解説

三教指帰
さんごうしいき

平安時代前期の仏教書。「さんごうしき」ともいう。3巻。空海著。延暦 16 (797) 年成る。『聾瞽 (ろうこ) 指帰』を改訂したもの。儒,道,仏の三教のうち仏教が最もすぐれていることを説いた漢文体の戯曲的,討論的,寓話的手法の作。『文選 (もんぜん) 』などを受けているが後代文学に影響を与えた。

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旺文社日本史事典 三訂版 「三教指帰」の解説

三教指帰
さんごうしいき

平安初期,空海の著した寓意小説体の仏教書
成立年代は不詳だが,作者24歳の797年とするのが通説。3巻。初めにつくった『聾瞽指帰 (ろうこしいき) 』を少し修正したもので,出家の理由を記し,儒・仏・道3教の優劣を論じ,密教を最高としている。

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世界大百科事典(旧版)内の三教指帰の言及

【高野版】より

…開版者としてとくに知られる秋田城介(あきたのじようのすけ)(安達泰盛,1231‐85)は,鎌倉執権北条氏の姻戚として勢力をもち,祖父景盛以来の縁故で高野山にはいり,その金剛三昧院(こんごうさんまいいん)は10万余石の扶持を封禄し,武家の愛護のもとに偉大な勢力をもって,開版事業にも力をつくした。現存するものでは1253年(建長5)刊《三教指帰(さんごうしいき)》が最も古い。 高野版については,1260年(文応1)から1323年(元亨3)までのあいだに刊行された4種の開版目録が現存する。…

※「三教指帰」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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