知恵蔵 「三星電子」の解説
三星電子
90年代に入って半導体分野で急速に力をつけ、2000年以降も安定的な成長を実現し、リーマン・ショックの影響で多くの企業が業績を悪化させている中、直近の業績も好結果を残した。09年度の売上高は前年比15.1%増の136兆2千900億ウォン(10兆9千32億円)と、創業以来最高の売上高を達成しており、ソニーの09年度売上高7兆3千億円(2010年4月現在での見通し)を大きく上回っている。
特筆すべきは利益の高さ。ソニーをはじめ、日本の総合電機・電子部品メーカーが低水準にとどまるのに対して、高い営業利益・営業利益率を維持しており、09年度の営業利益は過去最高の10兆9千200億ウォン(8千736億円)、営業利益率8.0%を実現した。
三星が成長し続けている背景には、積極的な海外戦略が挙げられる。韓国市場が小さなこともあるが、日本メーカーに比べて国内売上比率はかなり小さく、海外売上比率は80%を超える傾向にある。BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)と呼ばれる巨大・成長市場で圧倒的な存在感を示しており、ブランドとしての認知度は日本メーカーをしのぐ。現地での徹底したマーケティングをもとに、価格を含めて現地のニーズに見合った製品を素早く開発し、大量に生産・販売するビジネスモデルを確立している。携帯電話はBRICsなどで売り上げが飛躍的に伸長しており、フィンランドのノキアに次いで世界第2位にまで成長を遂げた。市場全体がマイナス成長となった09年も好調で、年間2億3千577万台を出荷している。世界シェアは19.5%。
イ・ゴンヒ会長の指揮のもと、トップダウン型で意思決定を行うことも特徴の1つ。市場の変化に素早く対応しながら、設備投資や研究開発を積極的に行っている。その象徴が三星を世界的企業に押し上げた半導体事業。1980年代までは国際的に目立つ存在ではなかったが、90年代に入って、積極的な設備投資により生産力を上げ、コスト競争力を飛躍的に高めた。80年代後半、日本メーカーの独壇場だったメインメモリー用のDRAMは、三星電子がシェアを奪い取り、現在もDRAMのトップメーカーとして君臨している。データストレージ用のNAND型フラッシュメモリーも、追い上げを図る東芝を抑えて、世界第1位のシェアをキープし続けている。半導体全体では、米インテルに次ぐ世界第2位の事業規模を誇り、2009年の半導体売上高は前年比20.1%増の26兆8千500億ウォン(2兆1千480億円)となった。世界シェアは7.6%としている。
(西山和敏 ライター / 2010年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報