三階教(読み)さんかいきょう

精選版 日本国語大辞典 「三階教」の意味・読み・例文・類語

さんかい‐きょう ‥ケウ【三階教】

〘名〙 仏教一派中国、隋の信行(しんぎょう)が地蔵十輪経の説によって唱えたもの。釈迦入滅後の仏教を三階に分け、末法のいまは、人は鈍根で、第一階の一乗や第二階三乗によることができないから、ただ第三階の普法によるほかないと説いたもの。信行の死後禁止され、日本には伝来しなかった。三階の仏法

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三階教」の意味・わかりやすい解説

三階教
さんがいきょう

中国隋(ずい)~唐代に流行した仏教の一派。三階宗、普法(ふほう)宗ともいう。開祖は信行(しんぎょう)。『法華経(ほけきょう)』『大方広十輪経(だいほうこうじゅうりんきょう)』『涅槃経(ねはんぎょう)』『華厳経(けごんきょう)』などの諸教説の独自の把握に基づいて形成されたもので、末法・末世の自覚のもとに、仏の教えに3段階を区別し、第三階の「普仏法(ふぶっぽう)」こそ末世の邪見の人を救うものであると説く。その「普仏法」の中心的教義は、一切の衆生(しゅじょう)はもともと仏であり、かつまた未来にはかならず仏となると信じてこれを敬う「普敬(ふきょう)」と、内に省みて自分は邪見と悪行を重ねるばかりの悪人であると認める「認悪(にんあく)」とであり、これらの実践によって往生(おうじょう)ないし成仏(じょうぶつ)が実現されるとする。このような立場から、貧しい者や弱い者への経済的援助も重視され、無尽蔵施(むじんぞうせ)(一種の金融事業)がかなり大規模に行われた。しかし、その異端的な教義とこうした経済活動のために、教団は信行没(594)後まもなくから断続的に弾圧され、宋(そう)代の初めころ滅亡した。

[木村清孝]

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百科事典マイペディア 「三階教」の意味・わかりやすい解説

三階教【さんがいきょう】

中国,隋の信行〔540-594〕が開いた仏教の一派。隋〜宋間に流行した新宗教運動でもある。三階宗,三階仏法,普法宗とも。一切の仏法に三階を立て,第一階を一乗,第二階を三乗,第三階を普法とし,末法の世を救うのは三階に依るべしと説いた。無尽蔵院(金融としての無尽)を作り,乞食(こつじき),布施(ふせ)を行い,社会事業を興したが,隋・唐代に禁圧され,典籍もすべて消滅した。しかし敦煌(とんこう)遺跡の発掘により,教説,歴史がほぼ明らかになった。
→関連項目信行

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世界大百科事典 第2版 「三階教」の意味・わかりやすい解説

さんがいきょう【三階教 Sān jiē jiào】

中国,北斉から隋にかけて活躍した僧信行(しんぎよう)が開いた新興仏教の一派。三階宗,三階法あるいは普法宗(ふほうしゆう)ともよばれた。三階とは正法,像法,末法の3段階であり,現在が第3段階の末法時代に属することをいう。この汚濁にみちた悪世では,われわれ衆生は愛憎の偏見からぬけられない破戒邪見の,救われがたい鈍根しかもたず,僧侶自身も同じく愚劣な羊のごとき存在(〈鈍根瘂羊僧(どんこんあようそう)〉とよぶ)でしかなく,そのことを僧も衆生も徹底的に自覚すべきだと主張する。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三階教」の意味・わかりやすい解説

三階教
さんがいきょう
San-jie-jiao

中国の信行 (540~594) の唱えた宗教。三階宗,三階仏法,普法宗ともいう。隋,唐,宋にわたり約 400年間行われた。仏法に三階 (3種の段階) があるとし,仏法の衰えた末法のときには第三階の法である普真普正法 (仏,法,僧の三宝に帰依し,すべての悪から離れ,すべての善を修する法) を修すべきであるとする一派で,『地蔵十輪経』の説によっているといわれる。

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