上方(読み)ジョウホウ

デジタル大辞泉 「上方」の意味・読み・例文・類語

じょう‐ほう〔ジヤウハウ〕【上方】

上のほう。⇔下方
[類語]うえ高みかみ上手うわて上手かみて上部上位優位優越高位上席

かみ‐がた【上方】

《「かみ」は皇居のある方角の意》京都およびその付近一帯をさす語。また広くは畿内地方。京阪地方。関西地方。「上方言葉」「上方漫才」

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精選版 日本国語大辞典 「上方」の意味・読み・例文・類語

じょう‐ほうジャウハウ【上方】

  1. 〘 名詞 〙
  2. うえのほう。上部。⇔下方(かほう)
    1. [初出の実例]「上方の恒河沙の世界を過て仏の世界有り」(出典:今昔物語集(1120頃か)三)
    2. [その他の文献]〔欧陽脩‐送陳経序〕
  3. 山上の寺院。また、寺院。
    1. [初出の実例]「上方伝仏教。名僧号鑑真」(出典:観智院本唐大和上東征伝(779))
    2. [その他の文献]〔解琬‐奉和九月九日登慈恩寺浮図応制詩〕
  4. 寺院の住持。寺僧。方丈。
    1. [初出の実例]「中使馬疑騎鶴至、上方人似踏雲昇」(出典:菅家文草(900頃)五・感雪朝)
  5. 身分や地位などの高い人。上方様。
    1. [初出の実例]「上方尊宿の句ども無骨にしななく返し侍るべからず」(出典:私用抄(1471))

かみ‐がた【上方】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 「かみ(上)」は皇居のある所の意 ) 都、また、その方面。現在では関東地方から京阪地方をさしていうが、古くは、大坂からは京都を、諸地方からは京坂地方を広くさした。
    1. [初出の実例]「命惜候者、可上方行脚外無他候」(出典:上杉家文書‐(年未詳)(室町)一二月一六日・長尾顕景書状)
  3. 江戸幕府で、特に三河(愛知県東部)以西、中国、四国、九州のことをいう。〔武家厳制録(1704‐11頃か)〕
  4. 京都の方角。
    1. [初出の実例]「お江戸を立(たっ)て二十里上方(カミガタ)、相州小田原、一しき町をおすぎなされて」(出典:歌舞妓年代記(1811‐15)一)

かん‐つ‐かた【上方】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「かむつかた」とも表記。「かんづかた」とも ) =かみ(上)つ方(かた)
    1. [初出の実例]「介より以上(カムツカタ)、法を奉(う)けたらば、必須くは褒め賞せよ」(出典:日本書紀(720)大化元年八月(北野本訓))
    2. 「潮は潯陽までさいて来て、其よりかんづかたへはささぬほどに」(出典:三体詩素隠抄(1622)一)

うえ‐つ‐かたうへ‥【上方】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「うえつがた」とも ) 身分や官位の高い人々。上流階級。貴人。うえうえ。
    1. [初出の実例]「うへつかたもしたしたまでもおどろきなげくばかりなり」(出典:御伽草子・扇流し(室町時代短篇集所収)(江戸初)下)

うえ‐ざまうへ‥【上方】

  1. 〘 名詞 〙 上の方。高い方。上部。かみざま。⇔しもざま
    1. [初出の実例]「衣うへざまにひきかへしなどしたるもあり」(出典:枕草子(10C終)一二〇)

かみ‐つ‐かた【上方】

  1. 〘 名詞 〙かみ(上)つ方

かむ‐つ‐かた【上方】

  1. 〘 名詞 〙かんつかた(上方)

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改訂新版 世界大百科事典 「上方」の意味・わかりやすい解説

上方 (かみがた)

一般には京都・大坂を含む京坂地方をさしていう。上は天皇のいる都をさして上る,反対は下るというように,上方は,大坂からでも都である京都をさして呼ぶことがあるが,広く京・大坂を含む京坂地方を他地方からいうことが多かった。また京の方角を上方と呼んだ例もある。江戸幕府は代官の管轄で関東,上方にわけているが,上方代官とは三河(愛知県東部)以西をいい,中部の一部,近畿,中国,四国,九州をさしている。関ヶ原の戦において東軍に加わった豊臣系大名を関東からみて上方の東海以西の大名であったため上方衆と呼んだこともあった。さて,このように上方という呼称は多様に使われているが,一般に京坂地方を上方というとき,単に地理的にいうだけでなく,経済,文化における独自の地位をもつものとして考えられていた。とくに江戸時代は,関東とくに江戸が将軍のお膝元として発展したため,それに対する意味で,京坂地方が上方として強く意識されるようになった。経済的には上方は全国市場のなかで,生産,流通の中心であり,江戸経済の重要な支えをなしていた。上方商人が江戸出店をもつことも多かったのである。文化でも,独特の風をもち,上方歌と呼ばれた地唄をはじめ,浮世絵,浄瑠璃などでは上方絵上方浄瑠璃として江戸のそれに対して区別されている。
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百科事典マイペディア 「上方」の意味・わかりやすい解説

上方【かみがた】

江戸時代に京都およびその周辺をさした呼び名。広義には大坂を含む。都のある地方の意で,言語,風俗,気質などの面で新興の江戸と比較された。公的には,畿内の山城(やましろ),大和(やまと),摂津(せっつ),河内(かわち),和泉(いずみ)の5国と,近江(おうみ),丹波(たんば),播磨(はりま)の3国を加え,五畿内三州とされている。現在も京都・大阪の代名詞として用いられる。
→関連項目関東・関西旭堂南陵人倫訓蒙図彙灘五郷

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「上方」の解説

上方
かみがた

室町時代から皇居のあった京都をさした語として用いられた。江戸時代,政治都市として発展した江戸を中心とする関東に対して,京風文化の浸透した山城・大和・河内・和泉・摂津の五畿内に近江・丹波・播磨を加えた8カ国をいう。あるいは東海道筋・中国筋・四国筋・西国筋・北国筋の総称,または五畿内以西の全地域をさす語としても用いられた。現在では京都・大阪を中心とする一つの文化圏・経済圏をさす場合が多い。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「上方」の意味・わかりやすい解説

上方
かみがた

近世に京阪地方とその近辺をさして呼んだ呼称。「上」とは御所があった京都に敬意を表わしたもの。江戸幕府勘定方では,畿内5ヵ国と近江,丹波,播磨の3ヵ国を上方筋と定めていた。現在でも,京阪地方あるいは関西地方の同義語として上方という呼称がしばしば用いられる。

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旺文社日本史事典 三訂版 「上方」の解説

上方
かみがた

京都を中心として広く畿内地方を呼んだ地理的名称
江戸時代に,関東に対し,三河(愛知県)以西を上方と称した。江戸と対比した意味では京都・大坂をさし,地理的意義のみならず,独自の文化相・経済力を包含するに至った。

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