動物体の内外のすべての表面を覆っている組織をいう。上皮組織は内胚葉(ないはいよう)、中胚葉または外胚葉に由来し、体表面、消化管や呼吸器などの管腔(かんこう)、腹膜腔や胸膜腔などの体腔の表面を1層から数層の細胞で石垣のようにすきまなく覆っている。原則として血管が入らず、隣り合う細胞は密着して並び、細胞間物質が介在しない。このような細胞層を上皮という。電子顕微鏡で見ると、上皮細胞間の接着は何種類かの構造が組み合わさった接着複合体による。上皮を構成する細胞の層数により単層上皮と重層上皮に、細胞の形により扁平(へんぺい)上皮、立方上皮、円柱上皮に分ける。これらを組み合わせて重層扁平上皮(表皮など)、単層円柱上皮(腸の粘膜上皮など)などとよぶ。
また上皮組織は、機能上は次の五つに分類される。
(1)被蓋上皮(ひがいじょうひ) 体の外表面や中空器官の内面を覆い、保護する。
(2)腺上皮(せんじょうひ) 上皮組織はときに上皮の自由表面から陥入し、分泌細胞群をつくる。腺上皮には、外分泌腺と内分泌腺がある。
(3)吸収上皮 腸の粘膜上皮のように被蓋上皮が吸収機能を発揮する場合に吸収上皮とよぶ。
(4)感覚上皮 上皮が特殊な分化を遂げ、外界の刺激を受けると興奮し、その興奮を神経系に伝えるようになったもの。たとえば、網膜、鼻粘膜などの感覚上皮がある。
(5)呼吸上皮 肺胞上皮はガス交換にあずかるため、呼吸上皮とよばれる。
そのほか、毛、つめ、水晶体などは特異的な物理学的性質を獲得した一種の被蓋上皮である。なお、上皮の下には一般に結合組織があり、境界に基底膜が介在する。
[川島誠一郎]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…体表面,管腔(たとえば消化管,呼吸器の管系,泌尿生殖器の管系など),体腔(心膜腔,腹膜腔,胸膜腔)など,動物体の内外の遊離面をおおう細胞層を上皮組織epithelical tissueという。上皮組織は上皮細胞の集まりからなっている。…
…未分化細胞から特定の形態と機能をもった組織が分化する過程(組織分化または組織発生)の研究にも,組織培養法は有力な手段として利用されている。
【動物の組織】
動物の組織は形態と機能から,上皮組織,結合組織,軟骨組織,骨組織,血液とリンパ,筋組織,神経組織に分けられる。また,発生学的に上記の結合組織から血液とリンパまでの5組織はすべて間充織(間葉組織)に由来する。…
※「上皮組織」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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