上臈(読み)じょうろう

精選版 日本国語大辞典 「上臈」の意味・読み・例文・類語

じょう‐ろうジャウラフ【上臈・上郎ラウ】

  1. [ 1 ] ( 「臈」は、もと僧侶の夏安居(げあんご)修行の回数を数える語 )
    1. 修行の年数を多く積んだ僧。年功を積んだ高僧。⇔下臈
      1. [初出の実例]「この僧たち、さるべき上らう僧綱などのは、やがて御弟子どもとり続いていとめやすし」(出典:栄花物語(1028‐92頃)音楽)
    2. 上位着座すべき官位の高い人。身分の高貴な人。上流の人。上席。⇔下臈
      1. [初出の実例]「有荷前事、遭故勤子内親王喪之後未随例、加以上臈公卿数参仕、無闕怠云々」(出典:九暦‐九条殿記・荷前・承平八年(938)一二月二四日)
      2. 「今は、なかなか上らうになりにて侍り、まして御いとまなき御有様にて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蜻蛉)
    3. じょうろうにょうぼう(上臈女房)
      1. [初出の実例]「あるなかの上らうなれど、おほやけに世をしづめ久しう仕うまつりたる人の女なり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲下)
    4. 一般に、格式の高い家の女性。貴婦人
      1. [初出の実例]「心ちにはさしも思はざらめど、おのづからこはごはしき声に読みなされなどしつつことさらびたり。上らうの中にも多かる事ぞかし」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
    5. 江戸時代、幕府大奥の職名の一つ。御殿女中の上級者で、堂上家の女が多くこれに当たった。
    6. 女性、特に若い女性を敬っていう。
      1. [初出の実例]「その上らうの御ゆくゑ、このそうよくしりたり」(出典:御伽草子・高野物語(室町末))
    7. 遊女女郎
      1. [初出の実例]「われあまた上臈を持ちて候ふ中に花子と申し候ふ人は」(出典:謡曲・班女(1435頃))
    8. 明治二年(一八六九)一〇月一二日に置かれた宮中女官女房の次の位であったが、同四年七月二四日廃止された。
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙 ( 上郎 ) 女性の名前の下に付けて、その人に対する軽い敬意や親愛の情を表わす語。
    1. [初出の実例]「お七上郎の手前も有る」(出典:浄瑠璃・潤色江戸紫(1744)二)

じょうろう‐&GIE599;しジャウラフ‥【上臈】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙 上臈のようである。気品があって、いかにも上臈の地位や身分にふさわしい。
    1. [初出の実例]「大殿はいかめしう上らうしう造りたることこそあれ、見所えかうはあべきならず」(出典:宇津保物語(970‐999頃)楼上下)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「上臈」の意味・わかりやすい解説

上臈
じょうろう

年功を積んだ位階の高い人をいい,下臈に対する。また上臈女房の略で,御匣殿 (みくしげどの) ,尚侍 (ないしのかみ) ,二位,三位典侍 (すけ) ,禁色 (きんじき) を許された大臣の娘または孫娘をいう。また,明治2 (1869) ~4年におかれた宮中の女官。女房の次に位置した。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「上臈」の解説

上臈
じょうろう

上位に着座すべき官位の高い人。臈とは年功の意。とくに高位の公卿を上臈公卿といい,滝口の武士のうち一・二・三臈を上臈とよぶ。また年功を積んだ高僧をも意味する。

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