日本の古辞書の一つ。1444年(文安1)成立。著者は,序末に〈東麓破衲〉とあるのみで不明。京都東山建仁寺の住僧かといわれる。ただし,その成立には《壒囊鈔(あいのうしよう)》と密接な関係があると推定される。内容は〈天地〉〈時節〉以下18の門目を立てて,中世に行われた通俗の漢語の類を標出し,多くの場合それに注を加えてある。配列が《節用集》のようにいろは順でないから,語の検索には不便である。大まかにいえば,《節用集》のほうは《下学集》をいろは引きに改修したものである。《節用集》とならび行われ,しだいに《節用集》の勢力におされた。室町時代に属する写本が相当多数伝わっているほか,板本としては,1617年(元和3)以後,幾版かを重ねている。元和の板本は〈岩波文庫〉に復刻されている。
執筆者:亀井 孝
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国語辞書。2巻。東麓破衲(とうろくはのう)(東山の麓(ふもと)の僧の意で、実名不明)著。1444年(文安1)の成立とされる。天地から言辞、畳字に至る18の部門に、日常に用いる漢字漢語を中心として約3000語を分類する。室町時代には盛んに利用されていたらしく、慶長(けいちょう)(1596~1615)以前の古写本だけでも30以上現存する。版本は1617年(元和3)刊本がもっとも古い。しかし、のちに成立した『節用集(せつようしゅう)』が、いろは順配列で検索に便利であったため、江戸時代の版行は振るわなかった。書名は『論語』憲問篇(へん)の「下学而上達」による。
[沖森卓也]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
室町時代の国語辞書。2巻。著者不詳。1444年(文安元)成立。配列は,いろは順でなく語義分類による。天地・時節以下18の語義を掲げ,合計約3000の語をおのおのに配列し,若干の注をつける。意味の近い語をまとめてあるため,百科語彙あるいは教科書の性格もある。古写本の数も多く,1617年(元和3)の刊本でさらに流布したが,いろは順の「節用集」にかわられた。刊本は「岩波文庫」所収。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…意義分類に四声・イロハの分類を加味したもので,嘉慶2年(1388)書写の奥書をもつ本が伝わっている。 日常所用の語彙の辞書としては,まず意味分類のものに《下学(かがく)集》がある。著者は建仁寺の僧かといわれ,1444年(文安1)の成立である。…
※「下学集」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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