②は、あくまでも書をひきたたせるための装飾であり、書との適合に重点が置かれ、書くべき内容の主題や趣意に沿ったものが要求された。古筆の古い遺品としては、一〇世紀の伝小野道風筆「下絵万葉集抄切」、伝藤原佐理筆「綾地切」、小野道風筆「絹地切」があり、近世初頭では、俵屋宗達の斬新な画風による下絵と本阿彌光悦の書とは、絶妙の調和を見せた。
完成画(本絵(ほんえ))を描く前の準備段階で、構想をまとめるためにつくる図。初めに小さな画面に画想の大略を表して構図化するのが普通で、これを小下絵(こじたえ)とよぶ。次にこれを基に本絵の大きさに拡大し、細部まで整えて下絵(または下図)をこしらえる。日本画の場合はこの下絵に紙や絹を重ね、敷き写して本絵の構図を決めるが、敷き写しのできない壁画や板絵などでは念紙を用いる。また、先のとがったもので下絵の上から傷をつけて下に写す釘(くぎ)彫りや、重ねた紙に針で線をなぞって写し取り、上から白い粉をはたき点線で記す法もある。
西洋画ではエチュード、エスキス、エボーシュ、デッサンなどの語をあててよぶが、本絵と同寸大の下絵にカルトン、フレスコではシノピアなど、用語も多様である。油絵の場合、スケッチを小下絵にしてカンバスに直接下絵を施し、その上に絵の具を塗り重ねて本絵をつくる。
また染織の場合の下絵は、青花(ツユクサ)汁など、水染で脱色可能なもので描く方法が古くから用いられた。
[村重 寧]
「カルトン」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…これには2種類あり,初歩の練習用写生と,タブローなどの制作の準備段階として,個々の事物を個別的に描く場合とがある。(3)下絵(カルトン) タブローなどの制作の準備の最終段階として,彩色する寸前の状態にまで完全に作られた構図のことをいう。これにも2種類あり,布や壁面にそのまま転写される原寸大のものと,寸法が異なっているがすでに完成図となっているものとがある。…
…なお羅文の中に飛雲が加わったり,羅文の飛雲もあるので,両者の技法は近いとみられる。 仕上がった紙を加工する装飾には〈からかみ〉や墨流し,金箔,描(かき)文様,下絵,継紙(つぎがみ)など数多くの技法がある。〈からかみ〉は初め中国から輸入された唐紙の意味であったが,しだいに装飾紙の技法をさすようになった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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