精選版 日本国語大辞典 「世代交代」の意味・読み・例文・類語
せだい‐こうたい ‥カウタイ【世代交代】
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一つの生物種が生殖法の異なる世代を周期的ないし不規則的に繰り返す現象をいう。世代交番ともよぶ。ドイツの生物学者シャミッソーが1819年に原索動物のサルパの生殖を研究するうち、単独生活する個体と鎖状につながったチェーンサルパ(連鎖個体)とが交互に生ずることからこの概念を考えた。このように有性生殖によって増殖する有性世代と、無性生殖によって増える無性世代とが交互に繰り返す場合を世代交代というのに対し、細胞内の核相が単相(n)世代と複相(2n)世代を交互に繰り返す場合を核相交代とよんでいる。
[町田武生]
生殖様式にさまざまの分化がみられるのに対応して、世代交代の形式も多様であるが、大別すると、配偶子生殖と無配偶子生殖が繰り返す一次世代交代と、配偶子生殖の世代が二次的な無性世代と交代する二次世代交代とがある。前者はさらに、核相が両世代を通じて単相か複相かのいずれか一方だけの同相世代交代と、世代ごとに核相の異なる異相世代交代とに分けられる。
同相世代交代の例としては原生動物のステファノスファエラStephanosphaeraがあげられる。この動物は世代交代の全過程が単相世代の生物で、無配偶子で増殖を続けるが、ある条件下で配偶子を生じ接合すると、接合子はただちに減数分裂して単相となる。異相世代交代では複相の無性世代が単相の有性世代と交代する。原生動物の有孔虫にこの例がみられる。
二次世代交代もさらにいくつかの様式に分けられる。すでに述べたサルパの例のように、配偶子生殖と無性生殖とが交互に繰り返されるもっとも典型的な世代交代は、真正世代交代(メタゲネシスmetagenesis)とよばれる。ミズクラゲでは、有性生殖により生じた受精卵が発生し、プラヌラ幼生となる。これはやがて定着生活をし、ストロビラとなり、無性的に横分裂してエフィラ幼生を生じ、これがクラゲになる。アブラムシ、ブドウノコブムシなどの昆虫類、ワムシ類、蛙肺(かえるはい)線虫などでは、両性生殖と単為生殖とが交代して現れ、周期性単性生殖(ヘテロゴニーheterogony)といわれる。両性生殖と幼生生殖を交代するのは混合生殖(アロイオゲネシスalloiogenesis)とよばれ、肝蛭(かんてつ)やタマバエなど寄生生活をする動物にみられる。
[町田武生]
種子植物には明らかな形としての世代交代はみられないが、シダ植物以下の下等植物ではほとんどすべてについて明瞭(めいりょう)な世代交代がみられる。
シダ植物では、普通にみる植物体は胞子形成を行い(無性生殖)、胞子が発芽して成長すると前葉体をつくる。前葉体は直径1センチメートル以下の小形であるが、この上に造卵器、造精器の生殖器官をつくり、有性生殖が行われる。有性生殖の結果つくられる胚(はい)が成長して、普通にみられるシダ植物となる。無性生殖をする植物体を胞子体(無性世代)とよび、前葉体を配偶体(有性世代)とよんでいる。コケ植物では普通にみられる植物体が配偶体であり、この上に雌雄の生殖器官がつくられる。胞子体は配偶体の体の上に半寄生状態でつくられ、普通にはあまり発達しない。
有性世代、無性世代の体制の発達程度およびおのおのの世代における核相の状態などから、植物にみられる世代交代は次の四型に分けられる。(1)ヒトエグサ型 配偶体は大きく、これに雌雄の配偶子ができて接合する。接合子(2n相)はのちに減数分裂を行い、多数の遊走子をつくる。この遊走子から配偶体が成長する。無性世代は単細胞の接合子だけで代表される。緑藻類のヒトエグサにみられる型。(2)ムチモ型 配偶体が胞子体よりも発達するもので、コケ植物や褐藻類のムチモなどにみられる。(3)アミジグサ型 胞子体と配偶体が形態的にまったく同じで、おのおのの核相と生殖器官のみが異なる。褐藻類のアミジグサ、緑藻類のアオノリ、アオサ、紅藻類のテングサなどに代表的な例がみられる。(4)コンブ型 胞子体がよく発達するが、配偶体は発達せず小形で肉眼的に識別がむずかしい。褐藻類のコンブに代表される型で、シダ植物の場合もこの型である。種子植物もコンブ型の極端な型と考えられ、配偶体は花粉管および胚嚢(はいのう)で代表されると考えられている。
[井上 浩]
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出典 四字熟語を知る辞典四字熟語を知る辞典について 情報
…蘚類,苔類,ツノゴケ類に三大別され,世界に約2万種,日本に約2000種ある(図1)。
[生活史]
明瞭な世代交代を行う。すなわち,配偶子(卵細胞と精子)をつくる有性世代の植物体(配偶体)と胞子をつくる無性世代の植物体(胞子体)とが交互に繰り返される(図2)。…
…一般にシダ類といわれるものは真正シダ類fernで,シダ植物にはほかにマツバラン類psilotum,石松(せきしよう)類lycopod,トクサ類(有節類)horsetail(これらをひっくるめてfernalliesという)が含まれる。
[生活環]
種子をつくらない維管束植物はすべて,生活史のうちに,独立の生活を営む胞子体の世代(ふつうにみられるシダの体)と配偶体の世代(前葉体)をもち,それらが交互に現れる規則正しい世代交代を行っている。胞子が発芽すると配偶体になるが,シダ植物のうちの多くのものでは,心臓形をしてせいぜいmm単位の大きさの前葉体と呼ばれる構造をもっている。…
…
【植物の生活史】
植物には核相が単相の細胞でつくられる配偶体の世代と,複相の細胞でつくられる胞子体の世代があり,配偶体につくられる生殖細胞の配偶子は合体して接合子となり,胞子体では減数分裂の結果核相が単相の胞子をつくる。このため,配偶体の世代と胞子体の世代が交互に現れる世代交代がみられる。後生動物では生活環は単純で,成体に卵と精子がつくられ,受精が行われると胚発生を経て成体となる。…
…次いで,成熟した造卵器の頸部が開かれ,精子はそこを通って卵まで到達する。 コケ植物,シダ植物とも胞子が発芽して造胞体になる無性世代と配偶体のつくられる有性世代の両方が存在し,これを世代交代と呼ぶ。種子植物にも無性世代と有性世代があるが,配偶体は小さくなって,造胞体にあたかも寄生するような形態をとっている。…
…最も複雑な形態は(6)に見られ,褐藻ホンダワラ属の体は藻類の中で最高度に分化して,根,茎,葉の区別が外見上明りょうであり,陸上植物の体を思わせる。
[世代交代]
藻類の世代交代には大別して三つの様式がある。第1は外見上同形の配偶体と胞子体の間で世代交代をする。…
※「世代交代」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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