両替(読み)りょうがえ

精選版 日本国語大辞典 「両替」の意味・読み・例文・類語

りょう‐がえ リャウがへ【両替】

〘名〙
金銀と銭など、ある種の貨幣を他の貨幣と取り替えること。また、それを業とする人や家。
多聞院日記‐天正二〇年(1592)八月三〇日「両替・金借両方糺決して」
② ある物を金銭と交換すること。
浮世草子西鶴織留(1694)二「彼目貫を両がへして、買掛のかたへすこしづつ渡して」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「両替」の意味・読み・例文・類語

りょう‐がえ〔リヤウがへ〕【両替】

[名](スル)
ある種の貨幣をそれと等しい額の他の種類の貨幣と交換すること。「千円札両替する」「円をドル両替する」
有価証券物品などを現金と交換すること。「当たり馬券を両替する」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「両替」の意味・わかりやすい解説

両替
りょうがえ

各種の貨幣を交換し、また有価証券やその他の物品を貨幣と交換することも含めて両替という。この貨幣の交換業務や預金貸付手形業務などを営む商人両替屋とよび、単に両替ともいう。わが国では、中世替銭屋出現し、替屋、割符(さいふ)屋、両替衆ともいわれ、両替や為替(かわせ)業務を行ってきた。江戸時代に入って両替業は発達し、江戸・大坂・京都の三都ほか主要な城下町門前町宿場町、港町などにおいてもその発展をみた。そのうち「天下の台所」と称された大坂では早くからその制度が整った。天王寺屋五兵衛は1628年(寛永5)に初めて両替屋を開業し、続いて小橋屋浄徳(じょうとく)、鍵屋(かぎや)六兵衛が加わり、鴻池善右衛門(こうのいけぜんえもん)も1656年(明暦2)に両替業を開始した。大坂の両替商は本両替、南両替、銭両替の3種類からなり、本両替の取締りを目的として1670年(寛文10)に十人両替の制度が設けられた。嘉永(かえい)期(1848~54)の記録によると、もっとも資力や信用のあった本両替は179名、それに次いだ南両替は544名、単に金銭の両替のみを業とした銭両替は617名となっていた。そのほかに入替(いれかえ)両替、遣来(やりくり)両替(米方両替)があり、商品や米切手などを担保として貸付を行った。

 江戸における両替商の成立は大坂よりも後れるが、1657~82年(明暦3~天和2)のころには本両替仲間30名くらいを数えた。代表的な江戸両替商の三井両替店が本両替となったのは1689年(元禄2)であった。江戸の両替商には、本両替のほかに銭両替があり、本両替は金銀両替・為替取組・金銀相場立て・上納金検査などを主要な業務としたのに対して、銭両替は五組・三組・番組・寺社方・仮組の五組に分かれて両替を主として行った。1854年(安政1)には、本両替4名、銭両替662名となっていた。京都の両替商は三井高房(たかふさ)が1726年(享保11)から33年にかけて著した『町人考見録』のなかで書いているように、江戸初期において豊臣(とよとみ)秀吉時代以来の多数の資力のある両替商がみられたが、享保(きょうほう)期(1716~36)のころになると倒産した場合が多くなり、京都と大坂の勢力交代の状況が明らかにされている。京都の両替商には本両替、小両替、新規小両替、銭屋などの種類があった。三都のほかに、主要な城下町や地方都市にも両替商が現れ、全国的な規模における金融のネットワークが形づくられていた。

 明治維新に際して、欧米の銀行制度がわが国に導入され、近代金融機関が設けられたが、その場合、江戸時代の両替商が銀行に転化したことも少なくなかった。

[作道洋太郎]

『松好貞夫著『日本両替金融史論』(1932・文芸春秋社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

山川 日本史小辞典 改訂新版 「両替」の解説

両替
りょうがえ

金銀銭三貨の交換を中心に行われた多様な金融業務,またそれを業務とする金融業者。中世にも両替や割符(さいふ)という為替取組みを行った両替衆の存在が知られるが,近世に入ると三都をはじめ地方都市にも出現,業務内容・規模ともに発達して機能が分化した。銭の交換を主とし手数料を得る銭両替が一般的だが,三都とくに大坂には本両替が存在し,より高度な金融業務をはたした。大坂の本両替は,金銀貨の交換,預金,貸付け,手形の振出し,為替の取組みなど,銀行業務のおもなものはすでに行っている。明治期に,経済制度の変化や藩債処分などにより打撃をうけるが,銀行資本に転換したり,洋銀・藩債証券を取り扱い,明治中期まで両替商として存続した者もいた。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典 第2版 「両替」の意味・わかりやすい解説

りょうがえ【両替】

元来は客が差し出した貨幣と客が望む他種の貨幣とを交換することをいう。また有価証券や米,特産品など他の物と貨幣を交換することや,両替制度の整備に伴いそれにかかわる当事者,すなわち両替屋を指す場合もある。したがって,広義には両替屋の業務内容をも含む。
【日本】
 戦国期に現れ江戸時代に隆盛した両替屋は,貨幣の交換,預金,貸出しを業とするとともに,その他諸種の手形発行も行った。中世における替銭屋(かえせんや∥かえぜにや),割符屋(さいふや)を系譜とし,それが整備・拡充されたともいわれている。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「両替」の意味・わかりやすい解説

両替【りょうがえ】

ある通貨を他種の通貨と手数料を取って交換すること。貨幣制度が未発達で多種の通貨が流通していた時代には都市の大商人が両替業を営み,それを起点に為替の取組,手形の振出し,預金の受付・貸出しなどをも営み,有力な金融業者に成長。
→関連項目鴻池善右衛門割符三井高利

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「両替」の意味・わかりやすい解説

両替
りょうがえ
money exchange

種類の異なる通貨の交換行為。営業的商行為の一種で,これを業とする者は商人である。商法は銀行取引の一態様として規定しているが(502条8号),銀行法による銀行だけがこの取り引きを行ないうるというわけではない。(→外国為替及び外国貿易法

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典内の両替の言及

【外国為替】より

…これを有事規制という。 両替money change異なる国の通貨(銀行券,硬貨などのいわゆる現金)を特定の為替相場で相互に交換することをいう。旅行小切手などの売買もこれに含まれる。…

【利子】より

…年利1割半とは20両に月金1分ということである。利子は両替商,商人,大名,幕府,職人,農民の間で相互に結ばれた貸借関係において決定される。そのなかには年利2割を超す高利のものから,年賦償還,無利子等の諸条件を強制されたものもあった。…

※「両替」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

暖冬

冬期3カ月の平均気温が平年と比べて高い時が暖冬、低い時が寒冬。暖冬時には、日本付近は南海上の亜熱帯高気圧に覆われて、シベリア高気圧の張り出しが弱い。上層では偏西風が東西流型となり、寒気の南下が阻止され...

暖冬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android