中国山地(読み)チュウゴクサンチ

デジタル大辞泉 「中国山地」の意味・読み・例文・類語

ちゅうごく‐さんち【中国山地】

中国地方を東西に走る大山地。江川ごうがわ水系を除いて山陰山陽分水嶺

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精選版 日本国語大辞典 「中国山地」の意味・読み・例文・類語

ちゅうごく‐さんち【中国山地】

  1. 近畿地方の西部から中国地方を東西に走る山地。山陰道山陽道とを分ける。主峰は兵庫・鳥取県境の須賀ノ山(一七〇〇メートル)。中国山脈。

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日本歴史地名大系 「中国山地」の解説

中国山地
ちゆうごくさんち

兵庫県北西部から山口県まで広がる山地。狭義には中国地方の脊梁山地のみをさすが、広義にはその周辺の吉備きび高原・石見いわみ高原を含めて中国山地とよぶ。脊梁山地は標高一〇〇〇メートルないし一三〇〇メートル、最高峰は兵庫・鳥取県境のひようノ山の標高一五〇九・八メートルである。全般になだらかな山容を呈し、山頂部に高位平坦面がみられる。吉備高原石見高原は標高四〇〇―五〇〇メートル、隆起準平原で山間に小さな盆地が開ける。古くから風化花崗岩中の砂鉄を利用して蹈鞴製鉄が行われた。山地の中の集落には蹈鞴製鉄に起源をもつものも少なくない。中国山地は山陽・山陰地方分水界をなし、中国地方全体からみると北に偏っており、瀬戸内海に注ぐ河川は長くて下流に広い沖積平野が開け、日本海に注ぐ河川は短い。ただごう川だけは脊梁山地を横断して北の日本海へ注いでいる。

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改訂新版 世界大百科事典 「中国山地」の意味・わかりやすい解説

中国山地 (ちゅうごくさんち)

中国地方の中央やや北寄りを兵庫県北東部から山口県周防灘沿岸まで東西に走る脊梁山地。広義には北の石見(いわみ)高原,南の吉備(きび)高原を含むこともあるが,ここでは狭義に従う。中国山地は山陰地方山陽地方の分水界をなすが,江の川のみは山陽側にも広い流域をもちながら,中国山地を横断して日本海に注ぐ。この横断部分より東側を東中国山地,西側を西中国山地(冠山(かんむりやま)山地)と呼ぶ。

 東中国山地はほぼ東西に走るが,細かくみると吉井川,旭川,高梁(たかはし)川などの上流によっていくつかの山塊に分断されている。分断個所には南側の吉備高原から入り込んできた盆谷状の幅広い谷がみられ,古くから人々が住み,また山陰と山陽を結ぶ街道が通じていた。現在山地を横断する交通はJR因美線,伯美線,木次(きすき)線と江の川沿いに三江線,岡山・米子自動車道,国道53号,179号,180号,181号,183号,314号線が走る。一方,西中国山地は全体として北東~南西方向にのび,同方向に卓越する数条の断層構造に沿って太田川,錦川,高津川などの本支流が深い谷をうがち,ところどころに滝や急湍(きゆうたん)をつくっている。したがって西中国山地の横断は困難で,JR可部線と錦川鉄道錦川清流線は山地南側で行止りとなり,道路は国道186号,187号,191号線以外はあまり進んでいなかったが,1991年広島・浜田自動車道が開通した。

 中国山地の主稜は標高1000~1300mの丸みをおびた山頂をもつなだらかな山地である。こうした円頂山稜はかつて同一水準に形成された浸食平たん面の遺物であり,脊梁山地面あるいは高位平たん面と呼ばれている。おもな山塊としては東中国山地に後(うしろ)山(1345m),那岐(なぎ)山(1255m),津黒山(1118m),道後山(1271m),比婆(ひば)山(1264m)があり,西中国山地には阿佐山(1218m),恐羅漢(おそらかん)山(1346m),冠山(1339m),莇ヶ岳(あざみがだけ)(1004m)がある。これらの山塊はほとんどが中生代の花コウ岩類および古生層からなるが,部分的には第三紀中新世層や第四紀の玄武岩がのっている。なお,中国山地の主軸より北にずれて大山(だいせん)(1729m),三瓶(さんべ)山(1126m),青野山(908m)などの第四紀火山が点在し,また氷ノ山ひようのせん)(1510m),扇ノ山(おうぎのせん)(1310m),上蒜山(かみひるぜん)(1202m)などは第三紀鮮新世の溶岩からなる。中国山地の主軸には,標高800~900mの脊梁山地面より一段低い浸食平たん面の,遺物があり,岡山・鳥取県境では人形峠面,広島県北部では高野面,広島県南部では八幡高原面と呼ばれる。これらは南に向かって低下し,山地南側に広がる吉備高原面(中位平たん面)に連続するので,第三紀鮮新世の生成と考えられる。脊梁山地面の生成時代については第三紀中新世の海進よりも古いとする見解と,断層変位を伴う曲隆運動によって吉備高原面から上昇段化した中新世海進以後のものとする見解がある。三次(みよし)盆地や津山盆地の周辺で断層変位の証拠が発見されるにつれて後者の可能性が濃くなってきたが,なお検討されるべき点が多い。

 中国山地の鉱業といえば,風化した花コウ岩中の砂鉄から鉄を産するたたらによる製鉄が古代から行われ,近世には中国山地の奥深くまで鉄山師のほかに炭焼き,荷運びなど関連労働者が多く住みつき,山内(さんない)集落を形成した。明治中期以降,たたらは洋鉄におされて衰退したが,人々の多くは炭を焼き和牛を飼うなどして山地に残った。しかし,1960年代の高度経済成長期以降の人口流出が激しく,挙家離村により廃村に追い込まれた所が多い。たたら製鉄のほかに石見銀山,吉岡銅山などがあったが,多くは閉山した。現在は全国の70%余を産する広島・岡山県下の蠟石が目だつ程度である。
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百科事典マイペディア 「中国山地」の意味・わかりやすい解説

中国山地【ちゅうごくさんち】

中国地方の脊梁(せきりょう)山地。江川を境に東中国山地と西中国山地(冠山(かんむりやま)山地)に分かれる。山陽地方と山陰地方を南北に分け,分水界が各県境をなす。古生層,中生層と,これらを貫く花コウ岩が主体で,北側に大山(だいせん),三瓶(さんべ)山などの火山が噴出。冠山,道後山,三室山など分水界に連なる山々は残丘と考えられる。
→関連項目生野[町]岡山[県]加計[町]口和[町]芸北[町]西城[町]山陰地方山陽地方島根[県]神郷[町]道後山鳥取[県]兵庫[県]広島[県]比和[町]美土里[町]山口[県]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中国山地」の意味・わかりやすい解説

中国山地
ちゅうごくさんち

兵庫県北西部から山口県まで広がる山地で、脊梁(せきりょう)山地のみをさす場合と、その周辺の吉備(きび)高原や石見(いわみ)高原を含む場合とがある。脊梁山地は標高1000~1300メートル、全般的になだらかで、最高点は氷ノ山(ひょうのせん)の1510メートル。山頂にはのろとよばれる高位平坦(へいたん)面がみられる。山陰、山陽の分水界をなすが、江の川(ごうのかわ)水系だけは中国山地を横断して日本海に注いでいる。江の川が横断する部分から西を冠山山地(かんむりやまさんち)、東を東中国山地ともいう。脊梁山地は北に偏っており、日本海側に流れる千代(せんだい)川、天神(てんじん)川、日野川、神戸(かんど)川などは急傾斜地を流れ、山地が日本海に迫っている地も多い。瀬戸内海へ流下する吉井川、旭(あさひ)川、太田川などは下流に広い沖積平野を形成する。

 吉備高原、石見高原は標高400~500メートル、隆起準平原で多くの山間盆地がみられる。中国山地では古くから風化花崗(かこう)岩中の砂鉄を利用するたたら製鉄が行われ、山地中の集落にはたたら製鉄に起因する集落が多い。また平坦面では和牛飼育が盛んであり、山地のわりには水田化も進んでいる。

[北川建次]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中国山地」の意味・わかりやすい解説

中国山地
ちゅうごくさんち

兵庫県北西部から山口県まで続く中国地方の山地。西南日本内帯の主軸をなす山地で中国脊梁山地のほかに白山火山帯に属する大山 (だいせん) ,三瓶 (さんべ) 山青野山などの火山群がある。広義には吉備高原石見高原などを含むが,狭義には江川 (ごうがわ) 流域の東部を中国山地といい,西部は冠山山地 (西中国山地) と呼ぶ。那岐山 (1240m) ,三国山 (1252m) ,阿佐山 (1218m) ,冠山 (1339m) などの 1000m級の山が続き,脊梁山地と吉備高原との間に津山,勝山,新見,三次の各盆地が点在している。砂鉄,石灰岩などの埋蔵量が多く,明治以前はたたら製鉄で知られた。その後,製鉄用薪炭材伐採跡地を利用して和牛飼育が行われている。中国縦貫自動車道をはじめとする高速道路の開通により開発が進められている。

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世界大百科事典(旧版)内の中国山地の言及

【島根[県]】より

…出雲国では松江藩,広瀬藩,母里藩が廃藩置県を経た後,71年島根県となり,76年浜田県,鳥取県を合併したが,81年鳥取県が再置され,現在の県域が確定した。出雲国石見国隠岐国【狐塚 裕子】
[狭い平野と長い海岸線]
 中国山地の北側斜面から日本海に至る〈山陰〉の西部を占める島根県は,中国山地の分水嶺が北にかたよっているため,地形は比較的急な傾斜を示す。河川は急流が多く,高津川による益田平野,斐伊(ひい)川,神戸(かんど)川による出雲平野のほかは,平野の発達はよくない。…

※「中国山地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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