中央アジア(読み)ちゅうおうアジア

精選版 日本国語大辞典 「中央アジア」の意味・読み・例文・類語

ちゅうおう‐アジア チュウアウ‥【中央アジア】

(アジアはAsia) ユーラシア大陸中央部の乾燥地帯。西はカスピ海、北はシベリア平原、東はアルタイ山脈、南はヒンズークシ・崑崙(こんろん)山脈に囲まれた、パミールを中央とする地域をさす。古代から遊牧とオアシス農業、シルクロードによる隊商の中継貿易が行なわれ、数多くの国家が交替。現在は中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区、カザフスタンウズベキスタンキルギストルクメニスタンタジキスタンの五か国、アフガニスタンの北部とに分かれる。

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デジタル大辞泉 「中央アジア」の意味・読み・例文・類語

ちゅうおう‐アジア〔チユウアウ‐〕【中央アジア】

ユーラシア大陸中央部の内陸地域。乾燥地帯。一般に、カザフスタンウズベキスタントルクメニスタンタジキスタンキルギス各共和国および中国の新疆しんきょうウイグル自治区にまたがる地域をいう。中世まで東西交易の中継地として栄えた。

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百科事典マイペディア 「中央アジア」の意味・わかりやすい解説

中央アジア【ちゅうおうアジア】

広義にはユーラシア大陸中央部,ゴビ砂漠からカスピ海に至る地域をさし,さらに西アジアの一部も含めることもあるが,狭義には,トルキスタンと呼ばれる地域をさす。政治上は,旧ソ連の5共和国(カザフスタントルクメニスタンウズベキスタンタジキスタンキルギス)と中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区を中核として,アフガニスタン,モンゴルなどにまたがる。中央のパミール高原で東西に2分され,東部サヤン山地天山山脈崑崙(こんろん)山脈があり,その間にタリム盆地などの盆地がある。西部はトゥラン低地が広がる。東西で地形上はかなりの相違があるが,一般に内陸河川,塩湖が多い。気候は大陸性で,乾燥。広大な面積のわりに人口は少ない。民族は複雑であるが,トルコ系イスラム教徒が多い。古来東西交通の要地でシルクロードが貫通,モンゴルをはじめ,遊牧民族の活躍の舞台であった。10世紀ころから共通の歴史・文化圏を形成しており,18世紀以降はロシアと清の二大勢力によって支配された。この地域の埋もれた文化を発掘したA.スタイン,S.ヘディンらの調査,探検は著名。 旧ソ連の中央アジア5国は1924年の民族的境界画定による人為的国境で区切られたため,民族集団が分断あるいは統合されたりしており(例えばタジク人の圧倒的に多いブハラサマルカンドをウズベキスタンに編入),またロシア人をはじめ外来の民族が多数定住するという複雑な民族構成をかかえている。さらにソ連時代以来,農業集団化や遊牧民定住化政策がもたらした歪みに加えて,綿作モノカルチャー的な産業構造に象徴される経済的自立性の弱さも,各共和国が独立した今日あらためて克服すべき課題となっている。一方,中国の新疆ウイグル自治区となっている東トルキスタンでも事情は似ており,漢族の大量入植も見られ,旧ソ連中央アジア諸国の独立にともなってトルキスタン・ナショナリズムの機運が高まっている。
→関連項目アジア

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「中央アジア」の解説

中央アジア(ちゅうおうアジア)
Central Asia

アジア大陸中央部の地域名称。その境界は一定ではなく,狭義には1991年にソ連から独立したカザフスタン共和国クルグズ共和国ウズベキスタン共和国タジキスタン共和国トゥルクメニスタンの5カ国をさし,これに中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区を加えることもある。これはほぼ歴史的なトルキスタンに相当する。広義には,これにモンゴル,チベット,アフガニスタンを加えた地域をさす。中央に万年雪を戴くパミール高原があり,これからの東方に天山山脈,崑崙(こんろん)山脈が,西方にはヒンドゥークシュ山脈がのびる。気候は乾燥していて,砂漠が多い。山岳に発する河川沿いに都市が発達し,農耕が行われる一方,広大な草原地帯では遊牧が行われてきた。古代の住民はイラン系で,古代ギリシア人がトランスオクシアナ(Transoxiana)と呼んだアム川シル川の流域やタクラマカン砂漠の周縁には,多くのオアシス都市国家が栄え,ゾロアスター教マニ教,仏教が普及した。6世紀の突厥(とっけつ)以降,北部草原のトルコ系遊牧民の勢力が南部のオアシス地域に及び,19世紀まで続いたトルコ系遊牧民の南部への移動と定住の結果,住民のトルコ化が進んだ。また8世紀のアラブの侵攻以来イスラーム化が進展し,東部の仏教圏と対照をなした。中央アジアの歴史は,北部の遊牧民と南部の定住民との相互関係を縦軸,ユーラシアの東西を結ぶ通商と文化交流の関係を横軸として展開し,モンゴル帝国ティムール帝国は遊牧民の卓越した軍事力と定住民の経済力とを統合した代表的な例である。18世紀以降,中央アジアはしだいにロシアと清朝の周縁と化したが,20世紀に入ると東西の帝国における革命を契機として民族運動の胎動が始まり,ソ連と中国のなかで社会主義的な変革を経験した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中央アジア」の意味・わかりやすい解説

中央アジア
ちゅうおうアジア
Central Asia

アジア大陸の内奥部で,その範囲は曖昧であるが,普通,パミール高原を中心とする東西トルキスタンをいう。東トルキスタンは中華人民共和国のシンチヤン (新疆) ウイグル (維吾爾) 自治区,西トルキスタンはウズベキスタン,キルギス,タジキスタン,トルクメニスタンの4国になっている。気候は大陸的で寒暑の差が激しく,雨量がきわめて少なく,砂漠や半砂漠が多い。中央アジアの南西部 (コペト・ダグ北麓) は農耕文化の発生地の一つで,水の便のよいところでは人工灌漑に基づく農業が発達し,都市文化が栄えた。他方,砂漠や半砂漠では遊牧民が生活し,独自の文化を発達させた。これら農業,遊牧の2文化が中央アジア文化の根幹となっている。中央アジアは古くから東アジアと西アジアとの交通路を占めていたので,東西文化交流の場として大きな歴史的意義をもっている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中央アジア」の意味・わかりやすい解説

中央アジア
ちゅうおうあじあ

アジア大陸内陸部の地域名。その範囲はかならずしも一定していないが、一般にパミール高原を中心として、東はタリム盆地から西はカザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンの5共和国を含む。

[編集部]

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世界大百科事典 第2版 「中央アジア」の意味・わかりやすい解説

ちゅうおうアジア【中央アジア Central Asia】

中央アジアとは,〈アジアの中央部〉を意味する漠然とした用語である。したがって,アジアの〈中央部〉をどこと考えるかによって,この用語の含む地理的範囲は変化する。すなわち広義には,東・西トルキスタンのほかに,カザフ草原,ジュンガル草原,チベット,モンゴリア,アフガニスタン北部,イラン東部,南ロシア草原を含み,その内容は〈内陸アジア〉という用語の内容とほぼ一致する。これに対して狭義には,東・西トルキスタンのオアシス定住地帯のみを指す。

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