江戸中期の学者。名は璋,通称丈右衛門,号は律襲または律聚。字は元圭のほか元珪とも書く。近江国浅井の出身で医者であった。後に京都の白山町に住み,白山先生と呼ばれる。元圭は暦学,算学,漢学,音律など広く深く研究し,学者として広く知られる。数え24歳で暦の書《新撰古暦便覧》(1685)を刊行している。続いて,《七乗冪演式》(1691),《律原発揮》《異体字弁》(ともに1692),《天文図解発揮》(1693),《筌蹄集》(1695),《授時暦図解発揮》《皇和通暦》(ともに1714)を刊行した。没後に《三正俗解》(1769)が出版されている。出版されていない著書も多数ある。元圭は1720年ころ建部賢弘の推挙により8代将軍徳川吉宗に仕え,賢弘に代わって,中国の《暦算全書》に訓点を施す。32年,吉宗の命により伊豆下田へいき,太陽および月の観測を行い,《日月高測》にまとめた。関孝和と建部賢弘の業績は,元圭によって松永良弼や山路主住に伝えられた。また鬼才久留島義太を見つけたのも元圭である。元圭の子彦循(げんじゆん)(1701-61)も数学に優れ,通称保之丞,法舳と号した。刊行された著書は《竿頭算法》(1738),《勘者御伽双紙》(1743)がある。後者は,日本で最初の数学遊戯をまとめた書として広く読まれ,今日にまでその影響は残されている。
執筆者:下平 和夫
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(内田正男)
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…また江戸時代以後の代表的ジャンルである三味線音楽や箏曲,尺八楽,琵琶楽などでは,音階理論に関係の深い理論用語はもっているが,近代西洋理論の音階に相当する理論的概念はほとんど見あたらない。17世紀末(元禄時代)の和算家である中根元圭のように,雅楽の音階と俗楽(当時の三味線や箏の音楽)の音階との関係を真剣に考えた理論的研究もあったが,日本の音楽の全般的視野に立って,その基本音階を考えたのは,明治中期の上原六四郎《俗楽旋律考》が最初である。そののち多くの研究家が音階を論じ,新しい体系化を試みたが,結局伝統的な雅楽の音階論を出発点とするという点において,大部分のものは共通している。…
…表3はハ調長音階について,ピタゴラス音律,純正律,中全音律,12平均律のちがいをセント値によって示したものである。 12平均律の理論はすでに16世紀末の中国の朱載堉(しゆさいいく)や17世紀末の日本の中根元圭にも見られ,西洋でも17世紀初頭から多くの例が存在したが,それが実用化されるのは18世紀後半を待たねばならなかった。J.S.バッハの《平均律クラビア曲集》第1巻(1722)は,12平均律を実用化した最初の芸術的成果とされてきたが,今日では,この曲集さえも一種の不等分平均律によっていたとするのが定説となった。…
…純正5度(2:3,平均律5度は2:2.9966)を重ねてゆくピタゴラス音律では,異名同音はあり得ず,永遠に同じ音には回帰しないので圏をなさず〈5度螺旋〉と呼ばれる螺旋状の図になる(図2)。なお,5度圏理論は西洋ばかりでなく,中国や日本にも古くから存在し,17世紀の朱載堉,および中根元圭の十二平均律理論の以前から実践的には5度圏によるエンハーモニックの解釈が行われていたと考えられる。【土田 英三郎】。…
…期間は同じであるが日月食の推算までを加え,全部を宣明暦法によって計算した。さらに中根元圭は1714年(正徳4)《皇和通暦》を刊行した。元圭は自分ではほとんど計算せずに春海のものをそのまま借用したと考えられているが,その計算された暦日を史実によって修正している点が評価され,1880年《三正綜覧》が政府により編纂(へんさん)刊行されたときは《皇和通暦》が参照された。…
…たとえば中国では南北朝の宋の何承天が447年ころに12平均律を算定したとされ,また,明代の人,朱載堉(しゆさいいく)も1596年に算定している。日本でも1692年に中根元圭が算定しており,一方,アラブでは現在,24平均律が実用されている。なお,中根が《律原発揮》(1692)において算定した方法はオクターブの12乗根を開いて求めるという今日の算定法と同じものである。…
…日本地図作製の責任者ともなった。中国から輸入された西洋暦算書の訓点を中根元圭(1662‐1733)の協力をえて施す。あるいはオランダ船の船長と会見するなど多方面で活躍した。…
※「中根元圭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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