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デジタル大辞泉
「中海」の意味・読み・例文・類語
ちゅう‐かい【中海】
四方を陸地で囲まれている海。内海。なかうみ。
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中海
なかうみ
県北東端部、鳥取県にまたがる汽水湖。湖は松江市・安来市・美保関町・八束町・東出雲町と鳥取県米子市・境港市に属している。「なかのうみ」「ちゅうかい」ともいう。古くは入海・飫宇の海などの名称で「出雲国風土記」「万葉集」にみえる。近世には内海とも記される。雅称は錦海。
〔現況〕
日本の湖沼中では五番目の大きさをもつ。北側の島根半島と南側の中国山地に挟まれた東西に延びる宍道低地帯に形成された海跡湖。西側には宍道湖が位置し、宍道湖から東流する大橋川は中海の西端に注ぐ。東側は北西に延びる鳥取県の弓浜半島によって日本海と隔てられ、同半島先端が島根半島に向合う狭隘部の境水道で日本海の美保湾に通じる。南岸中央部に安来平野が開け、湖中の島は八束町の大根島・江島、松江市の弁慶島など。一級河川斐伊川水系の端末にあたり、建設省の管理下にある。流入河川は西岸の大橋川、南岸の意宇川・意東川・飯梨川・吉田川・伯太川、北岸の長海川など。面積八八・七平方キロ、最大水深約八・四メートル、平均水深五・四メートル、湖岸線延長約八四キロの富栄養型湖で、人工湖岸が八割を超える。湖底地形は大橋川河口から北東の弓浜半島に向けて徐々に深くなり、境港市・米子市境の米子空港沖では七・五メートルを超えるが、半島付近で急激に浅くなる。飯梨川河口部では約一キロ沖まで湖底三角洲が確認されている。湖底の土質は飯梨川河口部・弓浜半島沿岸部・境水道を除く大部分がシルト質粘土。
汽水湖の特徴として、夏期には淡水下に塩水が侵入する二層構造をとり、湖底部は無酸素状態となるが、冬期にはそれらは解消される。かつては日本海の海水が底流となって境水道から入り、大根島北部を西へ流れ、大橋川から流入する淡水は表層流として大根島南部を東へ流れ、境水道から日本海へ出ていた。現在は中海干拓事業により堤防が築かれ大根島北側は閉鎖水域となったため、潮流は江島と境港市の間にある中浦水門から出入りしている。汽水湖独特の生態系を構成し、四七科七九種の魚種が確認されている。湖に飛来する野鳥はコハクチョウ、キンクロハジロ、マガン、ヒシクイなど二〇七種に上る。
〔中海の形成〕
ウルム氷期最盛期には中海は陸地で、古意宇川が現在の大橋川の塩楯島付近を分水嶺として東流し日本海に注いでいた。気候の温暖化に伴う海面上昇により約一万年前に島根半島と中国山地の間に海が侵入、約七千年前に古中海湾が形成された。
中海
なかのうみ
県北西端、島根県境にある汽水湖。「なかうみ」「ちゅうかい」ともよばれる。東は南東から北西に延びる弓浜半島(幅約四キロ・長さ約一八キロ)によって外海と区切られ、北は島根半島。東側は米子市・境港市、北側は島根県八束郡、西側は同県松江市など、南側は同県安来市などに属している。現在一級河川斐伊川の一部に含まれており、周囲八四キロ、面積九八・五平方キロ、日本の湖沼中第五位の規模である。北東の境水道で美保湾に通じ、西方から斐伊川・宍道湖などの水が流入する。北岸島根半島寄りに最深部があり、平均深度は約五―六メートル程度。南岸部には伯太川・飯梨川などの沖積平野が形成されている。湖中には大根島・江島(八束町)、弁慶島(松江市)などがある。
〔中海の形成〕
現在の湖盆形成は約一五〇万―七〇万年前の更新世中期以降と考えられる。更新世末期から完新世に入り、いったん陸地となったのち、縄文海進期(約六千年前)に宍道湖地溝帯に沿った古中海湾に再び海形成が始まり、のちの中海と宍道湖の連なった形の入海ができあがった。弥生海退期に弓浜砂洲が現れて外海と隔てられた潟湖となり、七世紀頃弓浜半島基部が海没したらしい。天平五年(七三三)成立の「出雲国風土記」島根郡の条に記される「伯耆の国郡内の夜見の島」は、弓浜半島北端部が島状の砂洲となっていた様子を示すと推定される。またこの頃には中海と宍道湖は朝酌の促戸(現松江市)の地狭部を挟んで通じる形となっていた。その後遅くとも平安期には砂洲の発達により弓浜半島が再び形づくられたとみられ、近世以後中海の湖形は安定した。また同書同郡条には「南は入海」とみえており、この入海が中海の称であろう。「万葉集」巻三雑歌に「出雲守門部王、京を思ふ歌一首」として「飫宇の海の河原の千鳥汝が鳴けばわが佐保河の思ほゆらくに」、同書巻四相聞に同じく門部王の「飫宇の海の潮干の潟の片思に思ひや行かむ道の長道を」の歌がある。歌枕となっているこの飫宇の海も意宇(おう)川の注ぐ中海の呼称とされる。
〔中海域の開発と生産〕
縄文・弥生期の遺跡は沿岸部に多数存在し、これらの遺跡から検出された自然遺体のうち魚介類は外海性・内海性とも多種に及び、マダイ、クロダイ、スズキ、フグ、アカニシ、ハマグリ、サルボウなどがみられる。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
中海【なかうみ】
島根・鳥取両県にまたがる潟湖。〈なかのうみ〉とも。弓ヶ浜の砂州で日本海と隔てられた半塩湖で,面積85.68km2,最深8.4m。貝類などの産が多く,アカガイ採取のソリコ舟は有名。中央に大根島,江島がある。江戸時代には浮網・手繰網・赤貝網・刺網などの網漁や,延縄(はえなわ)漁が行われ,漁民間の争いがあった。また米・木綿・鉄などを運ぶ水上交通も盛んであった。干拓と淡水湖化が進められたが1988年に凍結され,2000年に中止された。2005年11月にラムサール条約登録湿地となる。
→関連項目島根[県]|島根半島|東出雲[町]|松江[市]|八束[町]
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中海
なかうみ
島根県北東部の島根半島と,鳥取県北西部の弓ヶ浜に囲まれた潟湖(→潟)。「なかのうみ」ともいう。境水道で日本海と,大橋川で宍道湖と結ばれる。海水と淡水の入り混じる汽水湖である。宍道地溝帯の東部を占め,周囲 105km,面積 86.2km2,最大水深 8.4m。中央に大根島,江島などがあり,沿岸に松江(馬潟),安来,米子などの港がある。かつてはエビ,ウナギ,ボラ,クロダイなどの漁獲があったが今日ではほとんどない。1968年から埋め立てが始められ,干拓とともに淡水化事業が計画されたが,湖の汚染が問題となり,2000年に干拓,2002年には淡水化の中止が決定した。2005年ラムサール条約に登録。
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なかうみ【中海】
島根県東部の潟湖。〈なかのうみ〉ともいう。島根半島の南にある宍道(しんじ)低地帯東部の凹所が,日野川の運び出す土砂により形成された砂嘴(さし)の弓ヶ浜(夜見ヶ浜)で外海と区切られてできた。周囲84km,面積98.5km2。富栄養の汽水湖で,平均水深5.4m,最大水深17.1m。島根県松江市,安来(やすぎ)市,東出雲町,美保関町と鳥取県米子市,境港(さかいみなと)市に囲まれ,湖のほぼ中央に大根(だいこん)島,江島の2島からなる島根県八束町がある。
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中海
(鳥取県米子市;鳥取県境港市;島根県松江市;島根県安来市)
「ラムサール条約湿地」指定の地域遺産。
大規模コハクチョウ・ホシハジロ・キンクロハジロ・スズガモ渡来地。国指定中海鳥獣保護区中海特別保護地区
出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
世界大百科事典内の中海の言及
【宍道湖】より
…来侍(きまち)川,玉湯川などの小河川が注ぐが,最大の流入河川は出雲平野を貫流する斐伊(ひい)川である。排水は,おもに東岸松江市街を経て中海(なかうみ)につながる大橋川による。 宍道湖は,《出雲国風土記》には中海と合わせて入海(いりうみ)と記されている。…
【中海】より
…流入河川のおもなものは,大橋川,意宇川,伯太(はくた)川,飯梨(いいなし)川など湖の南岸にあり,北東端の境水道で美保湾から日本海へと通じる。中海の沿岸は先史時代から古代にかけて出雲文化の栄えた地域で,多くの古墳や遺跡があり,意宇川下流域には出雲国庁跡もある。《出雲国風土記》には,宍道湖とともに〈入海(いりうみ)〉と記されている。…
※「中海」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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