翻訳|Mesozoic era
地質時代の一区分で,化石に残りやすい生物が出現した以降の顕生累代を三分した第2の地質時代をいう。放射性同位体による絶対年代の推定では,約2億4800万年前から約6500万年前までの約1億8300万年の期間に相当する。これよりも古い古生代Paleozoic era,これよりも新しい新生代Cenozoic eraとの境界はそれぞれ動物界に起こった大きな変革によって引かれる。すなわち,古生代末には三葉虫,四射サンゴ,フズリナなどが絶滅し,その他の海生の動物分類群も大きな打撃を受けて内容が一新している。アンモナイト類では古生代に栄えたゴニアタイト類が絶滅し,代わって三畳紀を特徴づけるセラタイト類が繁栄するようになった。中生代末にはアンモナイト,恐竜などの絶滅が起こっている。また,二枚貝類ではイノケラムス類,ヒプリテス類が絶滅し,サンカクガイ類が急速に衰退するなどの変革があり,海洋の生態系は大きく変化したと考えられる。これらの変革はいずれも世界的規模で起こった広範な海退とほぼ呼応している。そのため古生代から中生代にまたがって地層が連続的に堆積したところは,地球上のごく一部に限られており,大洋底以外では中生代と新生代の地層の間にも,多くの場合不整合がある。したがってこの時代区分は,生物学的にも地質学的にも意味が深い。ただし,植物界での大きな変革はこれらの境界とは一致せず,動物界の変革に先がけて起こった。中植代Mesophytic eraは裸子植物が全盛をきわめた時代で,その期間は二畳紀中葉から白亜紀中葉までとされている。
中生代はさらに古いほうから三畳紀,ジュラ紀,白亜紀の三つの地質時代に区分される。三畳紀とジュラ紀の間にはかなり急激な海生動物の入れかわりがあった。しかし,ジュラ紀と白亜紀の動物群は漸移的で二つの時代にまたがって生存した種も少なくない。この区分は,がんらいこれらの時代の地層が最初に研究された西ヨーロッパで海退の時期があって,海成層の化石記録が途切れることに由来する。
中生代は恐竜とアンモナイトの時代であったといわれる。古生代後期に両生類から進化した爬虫類は中生代に入ると多くのグループに分かれ,陸上のみならず空中や海中に生活圏を広げた。中でも恐竜類(竜盤類と鳥盤類)は時代とともに巨大化し,海には魚竜,首長竜が,空には翼竜が君臨した。しかし,一方では原始的な哺乳類や鳥類も出現し,大型の爬虫類が衰退する新生代に大発展を遂げることになる。軟体動物ではアンモナイト類とベレムナイト類が全盛をきわめるとともにサンカクガイ,イノケラムス,ヒプリテスなどの特徴ある二枚貝類,ネリネアと呼ばれる特殊な腹足類が繁栄した。示準化石としては,当初はこのような中・大型の動物化石だけが利用されていたが,近年の調査・観察技術の進歩により,微小化石も時代決定に用いられるようになった。とりわけ三畳紀ではコノドント,ジュラ紀では放散虫,白亜紀では浮遊性有孔虫,ナンノプランクトン,放散虫が化石層位学にきわめて有効であることが知られ,中生代の地史の解明に大いに役立っている。
西ヨーロッパの標準地域をはじめ,各大陸の安定した基盤がある地域では,中生代の地層はわずかに傾斜している程度で,ほとんど褶曲や変形を受けていない。これに対して,各大陸の縁辺部の基盤が不安定な地域ではしばしば強く褶曲し,時には変成作用を被った中生層が見られる。とりわけ太平洋を取り巻く大山脈や花綵(かさい)列島の地帯では,中生代は激しい地殻変動が起こった時代で,マグマの活動や広域変成作用が著しい。このような地域では,一般に安定な地域に比べて地層が厚く,岩相の側方変化が顕著である。多くの場合,中生代の地殻変動は現在まで続いている。最近の大洋底堆積物の研究や各大陸における古地磁気の研究は,かつてウェゲナーが提唱した大規模な大陸移動が,大洋底の運動にともなって起こっていることを実証しつつある。太平洋,大西洋の深海底には白亜紀前期以降の堆積物が知られている。したがって,この時期にこれらの海洋が存在したことは確実であるが,ジュラ紀以前の状態については明らかではない。しかし,種々の事実から古生代に存在した唯一の大陸パンゲアが分裂し,海嶺から広がり,海溝下に沈みこむ海洋プレートの動きに乗って各大陸が移動して,現在の位置を占めるに至った経過が説明されている。
日本列島では二畳紀~三畳紀とジュラ紀~白亜紀にそれぞれ秋吉,佐川と呼ばれる2回の造山運動によって現在の地質構造の骨組みができたと考えられている。これらの変動は列島の大陸側と太平洋側に並ぶ2列の変成岩帯と花コウ岩の形成によく対応している。しかし前記の新しい示準化石の利用,海洋プレートの理論により,その中生代の地史は大きく書きかえられつつある。
→地質時代
執筆者:速水 格
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
地質時代区分で、現在から数えて二番目の代。古生代と新生代の間の約2億5217万年から約6600万年までの約1億8617万年に相当する。イギリスの地質学者J・フィリップスが1841年に命名した。この期間に形成された地層・岩石を中生界という。中生代(界)はさらに3分され、古いほうから三畳紀(系)、ジュラ紀(系)、白亜紀(系)となる。中生代の始まりと終わりは、動物界におこった大きな変革で定義されるが、これらは広範な陸化がおこった時期とも一致している。古生代末には三葉虫、四放サンゴ、紡錘虫など多くの動物群が絶滅し、腕足類、ウミユリなども大きく衰退した。中生代にはアンモナイト、ベレムナイト(矢石、箭石(やいし))、巨大な爬虫類(はちゅうるい)(恐竜など)が大発展を遂げるが、これらも中生代末には絶滅して、現在に近い新生代の動物と交代する。この白亜紀と次の古第三紀の境界(K-T境界。英語の白亜紀の頭文字Cがカンブリア紀、石炭紀の頭文字Cと重なるため、ドイツ語で白亜紀を意味するKreideの頭文字Kと、英語で第三紀を意味するTertiaryの頭文字Tと組み合わせた呼称。古第三紀の英語Paleogeneの頭文字Pと組み合わせてK-P境界ともいう)の大量絶滅の原因については、現在ではメキシコのユカタン半島への大隕石(いんせき)の衝突による全球的地球表層環境の激変に帰せられている。植物界の大変革は動物界に先駆けておこっている。中生代は全体として裸子植物が繁栄した時代であったが、白亜紀後半はすでに被子植物の時代に入る。中生代は、古生代末に成立した超大陸パンゲアが次々に分裂、移動を始めた時代であった。ヨーロッパや大西洋両岸の地域は比較的静穏であったが、環太平洋地域ではプレートにのって運ばれた陸塊が周辺の大陸地殻に衝突、付加し、これに関連して激しい地殻変動や火成活動、変成作用が生じた。有用な鉱床の形成もこの時代に多い。
[速水 格・小澤智生 2015年8月19日]
『市川浩一郎他著『改訂新版地史学 下巻』(1967・朝倉書店)』▽『木村敏雄・速水格・吉田鎮男著『日本の地質』(1993・東京大学出版会)』▽『ドゥーガル・ディクソン著、小畠郁生監訳『生命と地球の進化アトラスⅡ デボン紀から白亜紀』(2003・朝倉書店)』
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…地質時代,歴史時代,観測時代を通じて,これまで明らかになっている気候変化の事実を要約すると次の通りである。(1)古生代,中生代 古生代より前,すなわち先カンブリア時代(約38億~5.9億年前)における気候はほとんどわかっていない。古生代の大半の期間は両極地方には氷がなく,今日より温暖であった。…
※「中生代」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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