乱視とは、眼球の屈折面が球面ではなく、眼の経線方向によって屈折力が異なるため、外界の1点から出た光が眼内で1点に結像しない眼の屈折状態を総称したものです。
乱視はその光学的性質から、図75のように分類されています。
①正乱視
正乱視は、
円柱レンズとは、円柱を軸に平行な平面で切り取ったものです(図76)。軸方向には屈折力がありませんが、軸と垂直方向に屈折面があるレンズで、凹と凸の円柱レンズがあります。その円柱レンズと球面レンズの組み合わせのパターンにより、
別の分類方法として、屈折力が強い強主経線が垂直方向の
さらに、強主経線が正視つまり球面レンズでの補正を必要としない
いずれにせよ正乱視と総称される乱視は、球面レンズだけでは光学的に補正ができず、円柱レンズを組み合わせることにより光学的に補正できる乱視と考えてよいでしょう。
②不正乱視
屈折面での屈折が不規則で、円柱レンズで補正することができない乱視を総称して不正乱視といいます。
原因としては円錐(えんすい)角膜、
近年、不正乱視は「
乱視のために視力障害、とくに低年齢で
①正乱視
一般に角膜の歪みによる正乱視は、円柱レンズまたはハードコンタクトレンズによる矯正が適しています。
最近では、ソフトコンタクトレンズでもトーリックレンズと呼ばれる乱視矯正レンズも多種ありますが、矯正可能な乱視屈折度数が限られていて、
水晶体が原因である正乱視は、コンタクトレンズでは補正できません。また、とくに子どもでは乱視による屈折異常弱視(経線弱視)が発生しやすいので、眼鏡処方を行うことはとても大切なことです。眼鏡が顔に対して位置ずれを生じると矯正効果が大きく変わるので、眼鏡の顔に対するフィッティングもしっかり行うことが大切です。
②不正乱視
不正乱視の治療は、その原因が角膜の形状異常によるものであれば、第一選択としては、やはりハードコンタクトレンズが適しています。ただし、水晶体が原因である不正乱視は、正乱視と同じくコンタクトレンズによる治療では補正できません。
現在、近視や乱視は、エキシマレーザーによる角膜の
ただし、このような屈折矯正手術は、手術適応か否かなどを明確に診断できる眼科専門医の知識がなくては不可能です。簡便で安価な非眼科専門医の施設で手術を受け、とんでもないことになってしまったケースが多く報告されています。屈折矯正手術を受ける場合は、まず眼科専門医に相談することが肝要です。
黒田 輝仁
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
一般に角膜の表面、ときに水晶体の表面が球面になっていないため、あるいは角膜と水晶体の中心がずれているために、外界の一点から出る光線が網膜上に一点として結像しない状態をいう。だれでも多少の乱視はあるが、それが目の調節力の範囲を超える場合は、眼精疲労の原因となったり、小児では視力の発達が阻害されて弱視となる場合もある。
乱視には正乱視と不正乱視がある。乱視を矯正するには、角膜が上下または左右、あるいは斜めから圧迫されたような形の乱視(正乱視)の場合は、眼鏡による矯正で円柱レンズというレンズを用いる。角膜表面の凹凸不整のための乱視(不正乱視)や強度の正乱視の場合は、ハードコンタクトレンズによる矯正のほうがよい視力が得られる。これは、涙がコンタクトレンズと角膜表面の間を埋めて角膜表面の屈折力を減少させるからである。
円柱レンズというのは、ある面では凹レンズあるいは凸レンズのような屈折力をもち、それと直角な面では屈折力をもたないようなレンズで、円柱レンズを加えたほうがよいかどうかは、乱視の程度や年齢によっても異なる。なお、円柱レンズを入れると、像が多少ゆがんで見える感じがあり、よく見えるが、つらくて眼鏡をかけていられないという場合もある。若い人ほど順応性は高いが、中年以降になって初めて円柱レンズの入った眼鏡をかける場合、慣れるのに時間がかかることがある。円柱レンズの仕組みを導入したソフトコンタクトレンズは、ハードコンタクトレンズより乱視の矯正力は一般に弱いが、これは、角膜の変形に伴ってレンズが形を変えてしまうためである。強度の乱視では、とくにそれが一眼だけの場合、弱視をきたすことがある。それに気づかずに成長期を過ぎて手遅れになることがあり、早期に眼科での診察を受け、眼鏡により矯正する必要がある。
[中島 章 2024年9月17日]
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…眼の屈折に異常があって,眼の調節を休めたとき,遠方の像が網膜上に結ばない状態。近視,遠視,乱視がこれに含まれる。
【眼の屈折と調節】
眼に入ってくる光は角膜で強く屈折され,瞳孔を通って,水晶体でもさらに屈折され,硝子体ではわずかに拡散して,網膜に到達する。…
…〈両眼の前に常用するに適合した光学器械〉もしくは〈レンズまたは平板を細工して眼前に掛け視力の増進または眼の保護に用いるもの〉と定義される。視力の増進とは,近視,遠視,乱視等の屈折異常を矯正したり,老視(俗に老眼という)による調節の衰弱を補ってやったりして,生活上不便をきたさない視力を得るという意味である。
[視力の増進用の眼鏡]
(1)近視 近視は屈折に比して眼軸が長いか,眼軸に比して屈折が強いかによって平行な入射光線が網膜前方に結像するような眼である。…
※「乱視」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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