乳腺炎(読み)ニュウセンエン

精選版 日本国語大辞典 「乳腺炎」の意味・読み・例文・類語

にゅうせん‐えん【乳腺炎】

  1. 〘 名詞 〙 乳頭にできた小さな傷口から化膿菌が侵入して起こる乳腺の炎症。乳腺が赤くはれ、触れると熱感があり、じっとしていても痛む。出産後十数日頃に起こりやすい。乳房炎

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「乳腺炎」の意味・わかりやすい解説

乳腺炎
にゅうせんえん

乳腺が赤く腫(は)れ、触れると熱感があり、じっとしていても痛む、いわゆる乳腺の炎症をいう。急性のものが多く、臨床上しばしば遭遇するのは産褥(さんじょく)性乳腺炎である。

[新井正夫]

産褥性乳腺炎

大部分は授乳期、とくに産褥1か月の婦人におこる乳腺炎で、まれに授乳しない産褥婦にもみられる。臨床的には、うつ乳性乳腺炎と化膿(かのう)性あるいは蜂巣織炎(ほうそうしきえん)性乳腺炎とに区別される。いずれも産褥初期に乳房の腫れと痛みがみられる。

 うつ乳性乳腺炎は、不十分な授乳のために乳汁がうっ積しておこるものであり、搾乳することによって治癒するが、化膿性乳腺炎に移行するものもある。

 化膿性乳腺炎は、黄色ブドウ球菌や連鎖球菌などの化膿菌が乳頭部の表皮の損傷から乳管またはリンパ道を通って乳房中に侵入することによりおこるもので、発熱、乳房の痛み、発赤を特徴とし、ときに悪寒戦慄(おかんせんりつ)を伴う。高熱が48時間以上も続く場合には膿瘍(のうよう)の形成が疑われる。いったん症状が治まりながら再発してくるものもある。化膿性乳腺炎と診断されれば、ただちに授乳を中止する。治療としては、ペニシリンなどの抗生物質による化学療法を行い、膿瘍形成に対しては切開手術が必要となる。

 産褥性乳腺炎のほか、予後の良好な新生児乳腺炎や青年期乳腺炎、外傷性乳腺炎などもある。なお、両側の乳腺が腫れてくる場合は、生理的な内分泌性のもの(乳腺症)が多い。

[新井正夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「乳腺炎」の意味・わかりやすい解説

乳腺炎 (にゅうせんえん)
mastitis

乳腺の炎症で,急性と慢性に分けられる。急性炎症はおもに,授乳期または産褥(さんじよく)期に起こる細菌感染で,黄色ブドウ球菌や連鎖球菌によって起こることが多い。細菌は乳頭の糜爛(びらん)や亀裂から侵入し,乳腺内に貯留している乳汁を良い培地として急速に増殖するため,短期間で膿瘍を形成する。乳房は発赤,腫張し,膿瘍部にしこりができ,激痛を伴う。重症例では発熱,悪寒,震えも生じる。治療は,早期であれば抗生物質の全身投与と局所の冷却で治癒するが,膿瘍を形成した場合には切開手術が必要で,授乳中であれば授乳を中止する。まれな急性炎症として,ホルモン刺激によって生理的に乳腺が増殖して乳腺が腫張し,疼痛のあるしこりができる。これは新生児期,青春期,老年期に出現し,まもなく自然消退する。男性にも起こることがある。また乳腺の慢性炎症は現在ではまれになってきたが,おもな起炎菌は結核菌である。
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百科事典マイペディア 「乳腺炎」の意味・わかりやすい解説

乳腺炎【にゅうせんえん】

女性の乳腺に化膿菌が感染して起こる乳房の炎症。特に授乳期に多い。主症状は乳房内の硬結と疼痛(とうつう)で,局所の熱感から時に全身の発熱をきたす。治療は,軽症では局所の冷湿布と安静,抗生物質,消炎鎮痛薬投与。膿瘍(のうよう)を形成すれば手術により切開,排膿する。
→関連項目乳癌乳腺症魔乳リンパ節炎

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「乳腺炎」の意味・わかりやすい解説

乳腺炎
にゅうせんえん
mastitis

乳腺の炎症で,産褥期の女性にみられ,初産婦に多い。化膿性のものは,乳汁のたまったところがブドウ球菌,レンサ球菌などの細菌に感染することによって起る。急性では,乳輪またはその付近の皮膚が発赤し,はれ,圧痛があり,熱っぽさを感じる。軽いものは冷湿布で消炎する。一般に,なるべく乳汁を出したほうがよく,化膿にいたるまでは授乳してもよいとされている。乳房のマッサージは不可で,搾乳器を利用する。抗生物質を使用したり,ホルモン剤で乳汁分泌を抑制することもある。急性症状のない慢性乳腺炎による硬結は,乳癌との鑑別がむずかしいので,注意する必要がある。

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妊娠・子育て用語辞典 「乳腺炎」の解説

にゅうせんえん【乳腺炎】

お乳が内部にたまって起こる「うっ滞性乳腺炎」と、細菌が入り込んで炎症を起こしている場合(化膿性乳腺炎)があります。サインは「乳房がパンパンに張って痛い」「乳房が熱を持っている」「微熱」「だるい」など。ときには高熱が出る人もいます。「変だ」と感じたら産婦人科を受診して。

出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報

栄養・生化学辞典 「乳腺炎」の解説

乳腺炎

 乳腺の炎症で,原因菌は黄色ブドウ球菌であることが多い.

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世界大百科事典(旧版)内の乳腺炎の言及

【乳房炎】より

…原因のいかんにかかわらず,家畜における乳腺の炎症をいう。乳牛,ヤギがかかりやすいが,乳牛においては経済的損害を与える第1の疾患とされている。乳汁中に固形物が混入され,多くの白血球が出現する。乳腺も腫張したり,痛みを伴うことがある。原因は連鎖球菌,ブドウ球菌,大腸菌,クレブシエラ属,コリネバクテリウム属の菌や,その他の細菌,真菌などの感染による。微生物が乳房の乳頭管へ侵入し,乳汁中で増殖,乳腺組織へ侵入感染するが,乳房だけに限局した病巣でとどまる場合と,全身的症状を伴う重度の毒血症に陥る場合まである。…

※「乳腺炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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