予て(読み)カネテ

デジタル大辞泉 「予て」の意味・読み・例文・類語

かね‐て【予て/兼ねて】

[副]の一語化》
以前から。前から。前もって。かねがね。名詞的にも用いる。「―聞いていたとおり」「―(から)の望み」「―より予期していたことだ」
以前に。前に。かつて。
「―敬之進と一緒に飲んだところ」〈藤村破戒
[連語]《動詞「か(兼)ぬ」の連用形接続助詞「て」》…前から。…前に。多く日数を表す語を受けて、副助詞的に用いる。
「二、三日―、空晴れ」〈大鏡・道長上〉
[類語]過去以前かつ在りし日往年往時往日旧時昔日せきじつ昔時せきじ昔年せきねん往昔おうせき往古古昔こせきいにしえ古くそのかみ当時前前かねがね何時か既往これまで従来従前し方先年当年一時一頃その節先に当時古来あらかじめ前以て年来旧来在来その昔太古千古大昔元元元来本来大体どだい自体そもそも元より根っから何等なんら全然全く一向さっぱりまるきりまるで今まで常常つねづね間断かんだん延延連綿長長ながなが脈脈綿綿縷縷るるずっと生まれつき生来

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精選版 日本国語大辞典 「予て」の意味・読み・例文・類語

かね‐て【予て・兼て】

  1. [ 1 ] 〘 連語 〙 ( 動詞「かねる(兼)」の連用形に助詞「て」の付いたもの )
    1. 将来のことを見越す心情を表わす。将来まで続かせようという気持にも、将来のことを先まわりして行なう気持にも用いる。…を見越して。…までも。ゆとりを持たせて…。
      1. [初出の実例]「梓弓いそべのこまつたが世にかよろづよかねてたねをまきけん〈よみ人しらず〉」(出典:古今和歌集(905‐914)雑上・九〇七)
    2. ( 日数、期間を表わす語を受けて ) …前から。
      1. [初出の実例]「ふた月ばかりかねてむまれ給はん日まで」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開上)
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙 ( [ 一 ]が一語化したもの )
    1. 将来の状態を見越して、今からそのような状態になっている、という気持を表わす。今からもう。早くも。
      1. [初出の実例]「あしひきの山の嵐は吹かねども君なきよひは予(かねて)寒しも」(出典万葉集(8C後)一〇・二三五〇)
      2. 「『人のみかどまでおもほしやれる御后ことばのかねても』とほほゑまれて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)紅葉賀)
    2. 一つの行為、状態を基準に、それに先立つ時点を漠然(ばくぜん)と示す。事前に。前もって。
      1. [初出の実例]「かからむと可禰弖(カネテ)知りせば越の海の荒磯(ありそ)の波も見せましものを」(出典:万葉集(8C後)一七・三九五九)
      2. 「兼(カネ)てお春にも親類始め郷里の人々に交際する注意を示し置きたれば」(出典:花間鶯(1887‐88)〈末広鉄腸〉中)
    3. 以前からずっとその状態を続けてきたという気持を表わす。前から。今までずっと。
      1. [初出の実例]「つひにゆく道とはかねてききしかどきのふけふとは思はざりしを〈在原業平〉」(出典:古今和歌集(905‐914)哀傷・八六一)
      2. 「何か書いて見ようといふ、兼ての希望が」(出典:ヰタ・セクスアリス(1909)〈森鴎外〉)
    4. 過去のある時点を示す。以前に。かつて。
      1. [初出の実例]「一ぜんめし、御酒肴、笹屋、としてあるは、かねて敬之進と一緒に飲んだところ」(出典:破戒(1906)〈島崎藤村〉一六)
    5. 一つの事柄をこれと並行するもう一つの事柄に合わせて示すのに用いる。一方。あわせて。
      1. [初出の実例]「いはんや、また、この経を、たもち、かねて、布施・持戒・忍辱、ありて、禅定をねがひ、いからず、悪口せず」(出典:妙一本仮名書き法華経(鎌倉中)分別功徳品第十七)

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