検察官が請求した事件について,裁判官が公判前にこれを審理する手続。予審は大陸法系の制度であって,英米法系の予備審問preliminary hearingとは異なる。日本では,治罪法(1880公布)以来,旧刑事訴訟法(1922公布)の施行下まで行われていた。
予審は,本来,現行犯事件を除き,捜査における強制処分権限を裁判官だけに認めるとともに,公判を開く必要のない事件をその手続限りで打ち切るものである。しかし,機能的には,公判では収集しがたい証拠について綿密な証拠の収集および取調べを実施し,その結果を調書化することにより,公判での有罪宣告をほぼ完全に準備する手続と化した。第2次大戦後の司法改革では,捜査機関の権限濫用を防止するためには捜査機関にむしろ必要な強制的権限を付与することが必要であり,これに伴い裁判官の主宰する予審手続は不要となるとの見解と,他方では,訴訟手続を公判中心に再編成すべきであるとの見解とが一体となって,予審は廃止されるに至った(〈日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律〉。1947公布)。現行刑事訴訟法は予審を採用していない。なお,ドイツでも,1975年の刑事訴訟法改正により予審は廃止された。
執筆者:長沼 範良
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検察官の公訴提起を受けて、予審判事が被告事件を公判に付すべきか否かを決定するために必要な事項を取り調べる公判前の訴訟手続をいう(旧刑事訴訟法295条1項参照)。公判に付するに足りる嫌疑があるときは、予審判事は決定をもって、被告事件を公判に付する言渡しをなすべきものとされていた。この予審の制度は、フランス法を継受した日本の治罪法(1880年公布)以来、旧刑事訴訟法(1922年公布)に至るまで採用されていたが、この手続は非公開で、被告人の尋問には弁護人の立会いを認めず、また予審調書は公判期日において無条件で証拠能力を有するなど、かなり糾問主義的制度であったので、現行刑事訴訟法(1948年公布)は公判中心主義を強化し、この制度を廃止した。なお、ドイツも1975年に予審制度を廃止した。フランスは、予審の糾問主義的要素を改善したうえで、今日でも予審制度を維持している。
[内田一郎・田口守一]
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捜査と公判の中間に位置する非公開の刑事手続。1880年(明治13)制定の治罪法において導入され,昭和前期の刑事訴訟法まで存続した。検事の起訴を受理した予審判事によってなされる。予審判事は被告人の訊問,捜査内容の再検討と職権による事実調査を通じ,公判維持の可否を検討して公判開始・免訴・公訴棄却を判断する。1948年(昭和23)制定の現行刑事訴訟法では当事者主義の採用にともない廃止。
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