人工内耳(読み)ジンコウナイジ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「人工内耳」の意味・わかりやすい解説

人工内耳
じんこうないじ

内耳に電極を埋め込んで聴神経を刺激し、聴力を得るための人工臓器重度難聴(聴力レベルが80~90デシベル以上の補聴器を使用しても人のことばが聞き取れない)で、内耳より奥の細胞や神経の障害により起こる両側性の感音性難聴におもに適用される。鼓膜から伝わった振動は内耳で電気信号に変換されるが、人工内耳では電気信号を直接的に内耳に伝えるため、電極を内耳にある蝸牛(かぎゅう)のなかに埋め込む。耳にかけるタイプの補聴器に似た体外装置により、マイクで拾った音声をスピーチプロセッサーで周波数を分析処理して得られた電気信号が人工内耳へ伝えられる。電気信号は電極から聴神経を伝わって脳へ送りこまれ、最終的に音声として認識される。日本では1994年(平成6)に保険適用となり、扱う医療機関も多い。先天性難聴への適応例も増え、生後の早い時期に人工内耳を装着することにより言語習得の促進につながるため、先天性難聴の早期発見のための新生児聴覚スクリーニング検査なども行われるようになった。

[編集部]

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百科事典マイペディア 「人工内耳」の意味・わかりやすい解説

人工内耳【じんこうないじ】

音がから入って聞こえるということは,外耳→中耳→内耳→聴神経→大脳というルートを,音が瞬時に伝わっていることである。難聴はこのルートのどこかに障害があることで起こるが,このうち内耳が原因による難聴を治すために,内耳の役割を果たす装置を人工内耳という。 これは音の振動を感じる蝸牛(かぎゅう)の働きを機械化したもので,聴神経を刺激する装置と音声分析器,プログラム作製装置からできている。 手術では,聴神経の刺激装置を側頭骨に埋め込んで,これに接続している電極を蝸牛に挿入する。さらに,音声分析器をポケットなどに入れ,耳の上にマイクをセットする。会話などの音声がマイクに入ると,音声分析器が音の高低子音母音などを判断して,音声を高周波電波に変えて電極を刺激する。これによって,聴神経から脳に信号が伝わる。セットしたばかりの人工内耳では,本当の耳のように正常な音として聞こえないが,聞き取りのリハビリテーション訓練をすることで,1〜2ヵ月で話が分かるようになる。 1994年から人工内耳の手術は健康保険が適用された。手術対象は,日本では途中聴覚を失った人が多いが,欧米では先天性難聴にも数多くの症例がある。→補聴器

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家庭医学館 「人工内耳」の解説

じんこうないじ【人工内耳】

 重度の聴覚障害(ちょうかくしょうがい)のある人に音を聞こえるようにする装置が人工内耳です。音を増幅する補聴器(ほちょうき)とちがい、音を電気信号にかえ、直接、聴神経(ちょうしんけい)に伝えます。体外装置と耳の後ろの皮膚の下に植え込むインプラントからなっています。
 体外装置には、マイクロホンやスピーチプロセッサ、送信コイルがあります。外耳にかけたマイクロホンが音(空気の振動)を拾い、スピーチプロセッサというコンパクトな装置に送り、音を大きさや高低などによって電気的に処理します。こうして処理された信号は、送信コイルを通して、インプラントに伝わります。
 インプラントは受信器と多数の電極でできています。受信器は側頭骨(そくとうこつ)にくぼみをつくって植え込まれ、電極は蝸牛(かぎゅう)に挿入されて聴神経を刺激します。この刺激が脳に伝わって、音と認識されるわけです。
 植え込み手術のために2~4週間入院し、装着後は、2~3か月のリハビリテーションが必要です。植え込んだ部分に強い衝撃を与えないように注意すれば、とくに日常生活に問題はありません。
 人工内耳の適応となるのは、生後に両方の内耳(ないじ)の機能を失った人で、補聴器が有効でない人です。人工内耳の装用については、担当の医師と十分相談して決定してください。

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