精選版 日本国語大辞典 「人類学」の意味・読み・例文・類語
じんるい‐がく【人類学】
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人類学はギリシア語の「人間」をさすanthroposと「学」logosからなり、文字どおり「人間の学」を意味する。しかし、人類学の研究領域についての考え方は欧米の間においても異なる。アメリカでは、人類学を、生物としての人間と文化を担う人間とを切り離さずに、総合的に研究する学問としてとらえ、大学の人類学科は、生物学的人類学(自然人類学、形質人類学ともいわれる)、先史考古学、言語人類学、文化人類学の四つの領域の研究を重視している。これはアメリカ人類学会が1902年に創設されてからの伝統である。現在では人類学の細分化の進展によって、これらの四つの領域が同じように深く、一人の人類学者によって研究されることはないが、アメリカの人類学においては、人間の研究では、「全体的holistic」な研究を進めるために、これらの四つの領域の研究はやはり重視すべきであるという考え方が強い。事実、この領域間の共同研究も行われ、たとえば、旧ハワイ王国の歴史に関する、考古学者カーチと文化人類学者サーリンズによる詳細な共同研究の成果が1992年に刊行されている。
アメリカの文化人類学はさらに社会人類学、経済人類学、生態人類学、心理人類学、認識人類学、象徴人類学などに分かれている。さらに医療人類学や、「開発」に関する問題を研究する開発人類学が生まれている。
ドイツ、オーストリアでは、人類学という語はアメリカの生物学的人類学のみをさし、文化面を扱うものとして民族学がある。後者は民族文化史を扱い、考古学もこれに含まれる。イギリスでは人類学を生物学的人類学、先史考古学、社会人類学に分け、社会人類学を文化人類学の一分野とみなさず、独立の学問と考え、文化人類学という名称は使わない傾向にある。社会構造の分析を重視するイギリスの社会人類学と文化の研究を重んずるアメリカとの間に1950年代に論争があったが、いまではその違いはあまりない。ただイギリスの社会人類学は、アメリカと異なり、言語学も含まない。研究方法としては、イギリスの社会人類学はアメリカと異なり、フランスのデュルケームやモースに由来する社会学的方法が重視されてきているのに対して、アメリカでは、心理学的方法が尊重されることが少なくない。
フランスでは、従来は民族学という語が使われていたが、最近では社会人類学という名称も使われている。フランスで最高の研究・教育機関であるコレージュ・ド・フランスで社会人類学の講座が創設されたのは1958年で、この最初の教授がレビ(レヴィ)・ストロースである。
現在、人類学という語が文化人類学や社会人類学をさす場合がアメリカやイギリス、そしてわが国においても少なくない。
[吉田禎吾]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
ヨーロッパでは,人類学は生物学的存在としての人類(化石人類,人種,人体の機能など)を研究する学問(自然人類学)を意味しているが,アメリカではもっと大きい概念であり,自然人類学と,文化的存在としての人類を研究する文化人類学の双方を含み,文化人類学は民族学のみならず考古学や言語学の一部を含む。文化人類学(民族学)はいわゆる伝統文化の比較研究から出発した学問で,19世紀半ばに独立の学問となったが,その成立のゆえに研究の対象の多くはいわゆる近代化の影響が比較的少ない諸民族の文化で,研究者のフィールドワークが大きな役割を果たしてきた。また,文字史料が多く職能分化の進んだ欧米や一部のアジアの地域における文化や人間の研究を拡大し,またときには批判する働きをしてきた。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
…ギリシア語のanthrōpos(人間)とlogos(言葉,理論,学)とに由来する16世紀のラテン語anthropologium,anthropologiaにさかのぼる用語で,〈人間の学〉を意味する。訳語の歴史は複雑で,1870年(明治3)西周(にしあまね)による〈人身学〉〈人学〉〈人道〉〈人性学〉の試みのあと,81年の《哲学字彙(じい)》は人と人類を訳し分け,anthropologyを〈人類学〉と訳し,84年の東京人類学会創立以来,明治・大正期には,もっぱら獣類・畜類と区別された人類の自然的特質の経験科学すなわち〈自然人類学〉の意味で使用され,人類の文化的特質に関する〈文化人類学〉としての使用は昭和期のことである。…
…人類学を大きく分けたときの一分野である。ギリシア語の人間anthrōposと学問logosを語源とする人類学は,文字どおり人間の科学である。…
…法律学を基礎的分野に含めない理由は,法律学の中心をなす法解釈学が経験科学とは性質を異にする技術学だと考えられることによる。経験科学として考えられた法律学は法社会学や法人類学となって,社会学,人類学に帰着する。人類学は自然科学と社会科学にまたがる学問であるが,それの社会科学部門である社会人類学および文化人類学は,その理論的な部分を社会学と共有する。…
…ギリシア語のanthrōpos(人間)とlogos(言葉,理論,学)とに由来する16世紀のラテン語anthropologium,anthropologiaにさかのぼる用語で,〈人間の学〉を意味する。訳語の歴史は複雑で,1870年(明治3)西周(にしあまね)による〈人身学〉〈人学〉〈人道〉〈人性学〉の試みのあと,81年の《哲学字彙(じい)》は人と人類を訳し分け,anthropologyを〈人類学〉と訳し,84年の東京人類学会創立以来,明治・大正期には,もっぱら獣類・畜類と区別された人類の自然的特質の経験科学すなわち〈自然人類学〉の意味で使用され,人類の文化的特質に関する〈文化人類学〉としての使用は昭和期のことである。これに対し〈人間学〉は,1871‐73年西周によりコントのsociologieの訳に当てられたが(人間は人間(じんかん)として人の世,世間を指すから),これは一般化せず,92年には倫理学を人間学と呼びうるという主張が生じ,97年に〈人間知〉〈世間知〉の意味で初めて著書の題名となった。…
…文化人類学は,自然(形質)人類学physical anthropologyと並んで人類学の一分科をなし,人類の集団的変異と類似を,とくに文化面について記述し,説明もしくは解釈することを基本的課題とする学問である。ここでは人類学の発達を,その誕生時にまでたどって整理・詳述する。…
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