平安末期の歴史物語。10巻。《小鏡》《続世継》とも呼ばれる。1170年(嘉応2)成立。著者には中山忠親,源通親などが擬せられるが,未詳。《大鏡》の後を継ぐ書として,《大鏡》の記事が終わる後一条天皇の万寿2年(1025)から高倉天皇の嘉応2年までの13代145年間をあつかう。叙述は《大鏡》の語り手大宅世継(おおやけのよつぎ)の孫で150歳をこえる老女が語るという体裁をとる。内容は天皇について述べる〈すべらぎ〉3巻,藤原氏を対象とする〈藤浪〉3巻,皇族に関する〈村上の源氏〉および〈御子たち〉の諸巻を中心とし,末尾に〈昔語(むかしがたり)〉〈打聞(うちぎき)〉2巻を置く。なお各巻の節ごとには,《栄華物語》風の優雅な名称が付けられている。
執筆者:今西 祐一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
平安末期の歴史物語。1170年(嘉応2)成立説とそれ以後とする説とがあり、作者は藤原為経(ためつね)(寂超)説が有力。『大鏡(おおかがみ)』を受けて、1025年(万寿2)から1170年までの歴史を、座談形式を用い、紀伝体で叙述したもの。巻1~3は後一条(ごいちじょう)天皇から高倉(たかくら)天皇までの帝紀(ていき)、巻4~6は藤原氏、巻7は村上源氏、巻8は諸皇子の各列伝で、巻9、10は風流譚(たん)、霊験譚(れいけんたん)などからなる。宮廷貴族社会の朝儀典礼や風流韻事に多くの筆が費やされ、現実の政治的・社会的変動には意識的に深く立ち入っていない。これは、当時危殆(きたい)に瀕(ひん)していた王朝とその文化を、依然として確かに存在するものとして描こうとしたためで、ここに『今鏡』の独自性がある。
[竹鼻 績]
『山内益次郎著『今鏡の研究』(1980・桜楓社)』▽『板橋倫行校注『日本古典全書 今鏡』(1950・朝日新聞社)』
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「続世継(ぞくよつぎ)」とも。平安時代の歴史物語。10巻。藤原為経(ためつね)(寂超(じゃくちょう))作とみるのが定説。1170年(嘉応2)かその数年後の成立。「大鏡」の語り手大宅世継(おおやけのよつぎ)の孫で,紫式部に仕えたこともある150歳をこえる老女が語るという形式をとる。「大鏡」の終りの1025年(万寿2)から1170年までを描く。紀伝体で,「すべらぎ」3巻が天皇,「藤波」3巻が藤原氏,「村上の源氏」「みこたち」が源氏と親王を描き,さらに「昔語」「打聞(うちぎき)」という逸話を収めた巻をもつ。保元・平治の乱などは簡単にふれるだけで,貴族社会の種々相を肯定的に記す。平安後期の史料としても重要。「講談社学術文庫」所収。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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