以前(読み)イゼン

デジタル大辞泉 「以前」の意味・読み・例文・類語

い‐ぜん【以前/×已前】

その時よりも前。「一二時―に到着する」⇔以後
今より前の時点。現在から見て近い過去。副詞的にも用いる。「―と違って今では」「―会ったことがある」
ある状態に達する前の段階。「結婚―の住所」「能力―の問題だ」
[補説]「以」は基準となる数値を含むのが普通であるが、例えば「明治以前」というときに、明治時代を除いて、その前をさす場合もある。
[類語]前前かつてかねてかねがね何時か既往これまで従来従前し方先年当年一時一頃その節先に当時古来あらかじめ前以て年来旧来在来過去かつ在りし日往年往時往日旧時昔日せきじつ昔時せきじ昔年せきねん往昔おうせき往古古昔こせきいにしえ古くそのかみ当時その昔太古千古大昔

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「以前」の意味・読み・例文・類語

い‐ぜん【以前・已前】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 時、年齢、事件などを表わす語について ) その時点を含み、それより前。また、その時点を含まないでいう場合もある。⇔以後
    1. [初出の実例]「八月卅日以前挍定」(出典:令義解(718)考課)
    2. 「いくさ以前より大事の御いたはりとて」(出典:平家物語(13C前)一〇)
    3. [その他の文献]〔史記‐趙世家〕
  3. 現在からだいぶ隔たった過去のある時期。むかし。
    1. [初出の実例]「以前某に心をつくさせられ候、その返報に」(出典:大観本謡曲・七騎落(1483頃))
    2. 「この四十年ばかり以前、江州永原に祈祷連歌ありし」(出典:咄本・醒睡笑(1628)三)
  4. 勅や太政官符などの公式様文書(くしきようもんじょ)において、事書(ことがき)の次の行の本文(事実書という)の書き出し部分に使われた文言。事書の内容が二か条以上にわたるときは「以前」、一か条の場合は「右」と書く習慣であった。
    1. [初出の実例]「太政官符。右一十九国、承前依令不駅。〈略〉以前件状如前。謹以申聞」(出典:類聚三代格‐一八・養老六年(722)八月二九日)
  5. 聞き手に対して、前に一度紹介した人や物事を再び述べるとき用いる。さっき。
    1. [初出の実例]「以前になのっつる武蔵国住人、熊谷次郎直実、子息小次郎直家」(出典:平家物語(13C前)九)
    2. 「今はこれまでと、いぜんのかみそりとりいだし、すでにあやうく見へたるに」(出典:洒落本・傾城買二筋道(1798)冬の床)
  6. ある事柄や範囲に達する前の段階。
    1. [初出の実例]「換言すれば倫理以前、実践以前の大問題」(出典:竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生の人生観)

以前の補助注記

は基準点を含んで(あるいは、含まないで)前であることを表わし、ほぼ「以後」の反対の意味になる。また、基準点より離れた点に新しい基準点を設ける数値をつける場合もある(「試験のある三日以前に問題を発表する」)。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「以前」の読み・字形・画数・意味

【以前】いぜん

~より前。〔戦国策、趙四〕今より三世、趙の趙爲(た)るに至るまで、趙子孫の侯なる、其の繼ぎて在るるか。

字通「以」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android