くだん【件】
〘名〙 (「
くだり(件)」の変化した語。ふつう、「くだんの」の形で連体詞的に用いる)
① 前に述べた
事柄を、読者や聞き手がすでに承知しているものとして、さし示す語。「の」を伴った形で、前に述べた、さっきの、例の、の意に用いる。→
件の如し。
※
今昔(1120頃か)一三「
天皇、此の事を聞き給て、
宣旨を下して、件
(くだん)の僧を召す」
② その行動、状態などが人々によく知られているものとして、その事柄をさし示す語。「の」を伴った形で、例の、いつもの、あの、の意に用いる。
※
吾妻鏡‐元暦二年(1185)一月六日「さやうの論をすべきやうなし。件のさまたげ止させ給ふべく候」
※仮名草子・
伊曾保物語(1639頃)中「鶴、件の
くちばしを伸べ、狼の口をあけさせ、骨をくはへて」
③ なにかさしさわりがあって、はっきりことばで表わすのを避けるときに用いる語。あれ。例のもの。
※
古今著聞集(1254)二〇「五六尺ばかりなる
くちなは、いづくよりかきたりつらん、件の
かしらにあやまたずくひつきにけり」
けん【件】
[1] 〘名〙
問題としてとりあげられた、ある
特定のことがら。
※
社会百面相(1902)〈
内田魯庵〉虚業家尺牘数則「其折御相談の件本日当銀行重役に談じ候」
[2] 〘接尾〙 事柄を数えるのに用いる。〔
俚言集覧(
増補)(1899)〕〔
汪元量‐湖州歌〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「件」の意味・読み・例文・類語
くだん【▽件】
《「くだり(件)」の音変化。1、2はふつう「くだんの」の形で用いる》
1 前に述べたこと。例の。くだり。「件の用件で話したい」
2 いつものこと。例のもの。
「―の売卜者の行灯が」〈鏡花・婦系図〉
3 頭が人、体が牛の形をした妖怪。疫病の流行や災害などについて予言するといわれる。→予言獣
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
件(くだん)
日本の妖怪。半人半牛の姿で、生まれて数日の間に災害や疫病の予言をし、言い終えると死んでしまうとされる。
出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報