家庭医学館 「伝音難聴と感音難聴」の解説
でんおんなんちょうとかんおんなんちょう【伝音難聴と感音難聴 (Conductive Hearing Loss / Sensorineural Hearing Loss)】
難聴は、伝音難聴、感音難聴、混合難聴の3つに大きく分けられます。
伝音難聴は、音が伝わっていく過程の伝音機構に障害が生じたための難聴で、外耳(がいじ)、中耳(ちゅうじ)に問題があります。感音難聴は、伝わった振動が内耳(ないじ)(蝸牛(かぎゅう))の感覚細胞(かんかくさいぼう)を刺激し、その興奮が聴神経(ちょうしんけい)を伝わって大脳(だいのう)で音として認識されるまでの過程に障害が生じた難聴で、内耳、後迷路(こうめいろ)(聴神経から中枢(ちゅうすう))に問題があります。混合難聴は、この伝音難聴と感音難聴が混在しておこったものです。
聴力(ちょうりょく)は、平均聴力レベル(コラム「デシベルとは」)20dB(デシベル)までを正常聴力、40dBまでを軽度難聴、70dBまでを中等度難聴、70dB以上を高度難聴としていて、100dBを超えるものはろう(聾)といいます。
両耳の聴力が40dBを超えると日常生活に支障をきたし始め、補聴器(ほちょうき)が必要になるといわれています。また、両耳の聴力が70dB以上の難聴、または片方が50dB以上、もう片方が90dB以上の難聴などの場合は、身体障害者福祉法の対象となります。
◎難聴の程度と原因
伝音難聴は、音の感覚機構そのものには障害がなく、聞こえのゆがみなどはおこらないため、病気に応じた治療、鼓室形成術(こしつけいせいじゅつ)などの手術、補聴器の装用などによって、伝音機構を修復したり、耳に入る音を大きくしたりできれば聞こえがよくなります。
原因となる病気には、耳垢栓塞(じこうせんそく)、外耳道閉鎖症(がいじどうへいさしょう)、耳管狭窄症(じかんきょうさくしょう)、各種の中耳炎(ちゅうじえん)、鼓膜裂傷(こまくれっしょう)、耳硬化症(じこうかしょう)、耳の腫瘍(しゅよう)などがあります。
感音難聴は、音の感覚機構そのものが障害を受けているため、さまざまな聞こえのゆがみが生じます。たとえば、高い周波数領域が障害されるタイプでは、母音は聞き取れても子音の聞こえが悪く、聞きちがいが多くなります。また、小さい音が聞き取りにくく、大きい音は大きく響いて不快になったりします。耳鳴(みみな)りをともなうことが多いのも特徴です。
原因となる病気には、老人性難聴(ろうじんせいなんちょう)、薬剤性難聴(やくざいせいなんちょう)、内耳炎(ないじえん)、突発性難聴(とっぱつせいなんちょう)、騒音性難聴(そうおんせいなんちょう)、メニエール病、聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)などがありますが、原因不明のものも多く、決め手となる治療のないケースも少なくありません。
◎補聴器活用のポイント
補聴器(「補聴器の選び方、使い方」)が適応となるのは、難聴であることを自分でわかっていて、会話が不自由で、日常生活に不便を感じている場合です。
補聴器は、外界の音を大きくして耳に伝える電気的増幅器で、音質調整、出力制限などの機能がついています。いろいろな型があって、目立たない小型のタイプが主流です。
補聴器はその人に合わせた細かな調整が必要です。耳鼻咽喉科(じびいんこうか)で聴覚検査(ちょうかくけんさ)を受け、適応かどうかの判断をしてもらったうえで、専門店で購入するのがいいでしょう。
ふつう、補聴器が適応となるのは、伝音難聴や中等度難聴ですが、これを超える難聴でも、訓練によっては効果が期待できます。
感音難聴は、簡単に補聴器を活用することはむずかしいのですが、選択・調整を慎重にくり返し、徐々に慣らしていくと、その活用性はぐんと広がります。
最近では、デジタル型の補聴器も発売され、従来、活用困難だったタイプの難聴にも適応が広がりつつあります。