体腔(読み)たいこう

精選版 日本国語大辞典 「体腔」の意味・読み・例文・類語

たい‐こう ‥カウ【体腔】

〘名〙 動物の体壁と内臓との間にある空所扁形動物以上の動物に発達し、哺乳類では横隔膜により胸腔腹腔とに分かれる。ふつう中胚(はい)葉性の壁によって囲まれ、発生的由来から原体腔真体腔とに区別される。
野火(1951)〈大岡昇平二九「私は〈略〉ふくらんだ体腔を押し潰して、中に充ちた血をすすった」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「体腔」の意味・読み・例文・類語

たい‐こう〔‐カウ〕【体×腔】

動物の体壁と内臓との間のすきま。扁形へんけい動物以上の動物に発達し、哺乳類では横隔膜により胸腔と腹腔とに分かれる。たいくう。

たい‐くう【体×腔】

たいこう(体腔)」の慣用読み医学ではこの読みを用いる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「体腔」の意味・わかりやすい解説

体腔
たいこう
coelom

動物の体壁と内臓との間の空所。原生動物中生動物海綿動物刺胞動物にはないが(無体腔動物),扁形動物以上の動物には体腔があるため体腔動物と呼ばれる。体腔には発生途上の胞胚期(→胞胚)の胞胚腔がそのまま成体の体腔となる原体腔(第一次体腔,偽体腔)と嚢胚期(→嚢胚以後に形成される中胚葉で裏打ちされた真体腔(第二次体腔。→真体腔動物)とがある。哺乳類では,体腔は横隔膜によって胸腔と腹腔に分けられる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「体腔」の意味・わかりやすい解説

体腔
たいこう

動物の体内で、消化管などの諸器官と体壁の間にあるすきま(腔所)のこと。海綿動物、腔腸(こうちょう)動物にはみられない。それ以外の動物の体腔は原体腔と真体腔に分けられる。胚(はい)の原腸陥入ののち、ポケット状に落ち込んだ原腸(内胚葉)と外胚葉の間のすきま、つまり胞胚腔がそのまま体腔となっている場合、これを原体腔(一次体腔)とよぶ。原体腔をもつ動物を原体腔動物といい、扁形(へんけい)動物、紐形(ひもがた)動物、線形動物、輪形動物などがこれに属する。内・外両胚葉が中胚葉により裏打ちされる場合(たとえば、脊椎(せきつい)動物胚の内臓葉と体壁葉)、この中胚葉に囲まれたすきまを真体腔(二次体腔)とよぶ。真体腔をもつ動物が真体腔動物であり、環形動物、節足動物、軟体動物、毛顎(もうがく)動物、棘皮(きょくひ)動物、原索動物および脊椎動物はこれに属する。原体腔動物の線形動物、輪形動物では外胚葉(体壁)は中胚葉で裏打ちされているが、内胚葉(内臓)はそうではないため、擬体腔類(偽体腔類)とする場合がある。

[竹内重夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典 第2版 「体腔」の意味・わかりやすい解説

たいこう【体腔 body cavity】

動物の体の中にできた空所のこと。そのでき方には発生中の卵の割球の間や,下等動物の体を満たしている間充組織の中に現れたすきまのような簡単なものから,他方,体節形成の一定の順序を経て発生するものまでいろいろの段階のものがある。そこで,前のような簡単なものを原体腔protocoel,それに対して後のものを真体腔deuterocoelと呼んで区別をしている。一般に原体腔を有するものは,無脊椎動物の中でもごく下等な種類(扁形,ひも形,袋形(たいけい)などの動物群)で,これらを原体腔類と総称する。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「体腔」の意味・わかりやすい解説

体腔【たいこう】

動物の体内で外界との連絡をもたずに形成された腔所をいう。胞胚の内部の卵割腔や,内臓諸器官と体壁との間の腔所(胸腔や腹腔)がこれである。排出物や生殖細胞の放出のために二次的に体外と連絡するものもある。カイメン動物や腔腸動物にはない。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

少子化問題

少子化とは、出生率の低下に伴って、将来の人口が長期的に減少する現象をさす。日本の出生率は、第二次世界大戦後、継続的に低下し、すでに先進国のうちでも低い水準となっている。出生率の低下は、直接には人々の意...

少子化問題の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android