精選版 日本国語大辞典 「倉庫」の意味・読み・例文・類語
そう‐こ サウ‥【倉庫】
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財貨の保管を目的として設けられた建物およびそれに付帯する設備。
[森本三男]
倉庫の基本的機能は財貨の保管である。保管とは、財貨を貯蔵し管理することによって、流通の時間的調節を図ることをいう。運送が財貨の場所的移転によって財貨の価値を増大するのに対して、保管は、生産と消費の間を時間的に調整することによって財貨の価値を増大する。たとえば、農産物のように収穫が一定期で消費が年間を通じて行われるものは、非収穫期の消費のための保管が必要である。この場合は、単に物理的な性状維持のためばかりでなく、等級分類など流通上の処理を加えて行われるのが普通である。工業製品でも季節性商品(クーラーなど)を年間平均的に生産すれば、消費に至るどこかの段階で保管をしなければならない。このような季節性以外に、大量生産製品の少量運送単位への分割、少量・分散生産物の大量集荷、過剰生産物の価格維持などのためにも、財貨の保管が必要となる。
[森本三男]
いくつかの分類基準がある。
(1)だれの財貨を保管するかによって、自家倉庫と営業倉庫に分けられる。前者は個々の企業などが自己の財貨を保管するために設ける倉庫であり、後者は他人の財貨を保管するために経営される倉庫である。保管を業として営業倉庫を経営する事業を倉庫業という。倉庫業を営む企業には、専業と兼業の両形態がある。専業は倉庫業のみを営むものであり、兼業は他の事業(たとえば運送業)をあわせ経営するものである。
(2)保管する財貨に対する倉庫の立地からみると、生産地倉庫、集散地倉庫、消費地倉庫に三分される。生産地倉庫は生産物を消費地に向けて出荷するまで保管する倉庫であり、農村の農業倉庫や乾繭倉庫、漁港の冷蔵倉庫などはこれである。生産地から送られてきた財貨を消費地へ送り出すまでの間、保管する倉庫が、集散地倉庫である。駅倉庫、卸売商の倉庫、港湾倉庫、高速道路インターチェンジ付近の積替え倉庫などはこれである。消費地に位置し、その地域で消費される生活用品や工業用原材料などを保管するのが、消費地倉庫である。都市倉庫はその典型である。
(3)保管を行う目的によって、保管倉庫、保存倉庫、加工倉庫、保税倉庫に分けられる。保管倉庫と保存倉庫の相違は、主として倉庫に財貨を寄託する期間の長短による。この区分では、保存倉庫は長期寄託のための倉庫をいう。加工倉庫は、冷蔵倉庫のように、単に生鮮食料品の保管を行うだけでなく、製氷や冷凍食品の生産のようなある種の処理を加えるものをいう。保税倉庫は、関税等の税金の納付を猶予してもらう目的で税関の指定を受けてその所在地に設けられる。一定期間を限り、保管財貨は輸入品とみなされず、したがって課税されず、蔵出しのときに初めて課税される。
(4)保管する貨物の種類によって、普通倉庫と特別倉庫に分けられる。普通倉庫は一般貨物を保管するもので、大量貨物の保管に適した構造をもつものが多い。都市倉庫、港湾倉庫の大部分は普通倉庫に属する。これに対して、米穀、繭糸、砂糖、酒類、たばこ、塩、鮮魚、危険物など、特別の保管条件を必要とする特定財貨のための倉庫を特別倉庫という。
[森本三男]
一般に耐火・耐震・耐熱・耐湿・耐水で、盗難や虫害に対しても安全でなければならない。これに加えて、保管する財貨の性状に応じた構造と設備が必要である。たとえば、特別に引火しやすいもの(化学薬品、セルロイド、ガソリンなど)には、完全な防火・消火・警報設備を、米穀その他の食品のように湿気や虫害を嫌うものについては、防湿・換気・防虫設備を、鮮魚のように低温保管を必要とするものについては、強力な冷蔵・冷凍設備を用意しなければならない。また、保管財貨の搬入・搬出、倉庫内の財貨の積上げ・積替え、構内での貨車・自動車・艀(はしけ)などへの積降ろしなどのために、各種の荷役設備が整っていなければならない。保管作業の能率化と保管財貨の性状保全は、倉庫の重要条件だからである。土地の有効利用に伴う多階建て倉庫では、起重機、エレベーター、コンベヤー、スパイラルシュートのような設備・施設が不可欠である。
[森本三男]
他人から寄託された財貨を自己の営業倉庫に保管し、その代価として一定の保管料(倉敷料(くらしきりょう))を受け取る事業をいう。この事業を営む企業を倉庫業者という。倉庫業者は、財貨の保管と管理を通じて、次のような機能を果たす。
(1)供給と需要を時間的に調整することにより、財貨の価値を増大する。上述したように、これが基本機能である。
(2)保管財貨の荷造り、仕分け、燻蒸(くんじょう)による虫害防止、乾燥、手入れなどのサービスを提供することにより、財貨の価値を維持し、あるいは増大する。
(3)供給と需要の時間的調整を通じて、価格を安定させる。
(4)運送途中の財貨を駅や港で積み替える必要がある場合、その財貨の一時保管によって運送を円滑化する。
(5)寄託財貨の所有権を表す倉荷(くらに)証券(倉庫証券)を発行することにより、荷主に対し次の2点の便宜を与える。荷主は保管中の財貨をいちいち出し入れしなくとも、倉荷証券の裏書によってその財貨を自由に売買できること、同様にして寄託中の財貨を担保にして資金の融通が受けられることである。
(6)財貨の保管以外の付随業務による機能である。それは、貸庫(かしぐら)(貸倉庫)、金融、荷役、港湾運送、代金・運賃の取り立てなどである。
倉庫業は公共性の強い事業であるばかりでなく、業務の性質上、巨額の資本の大半を土地・建物のような固定資産に投下しなければならない設備集約的な事業であるため、倉庫業法(1956年)によって規制が加えられている。
[森本三男]
第一は、自動倉庫、自動化倉庫、無人倉庫などとよばれる倉庫の近代化である。内部を多数の棚で仕切った構造にした多層式の格納倉庫をつくり、コンベヤー、リフトなどの自動化運搬機器を備え、それらをコンピュータでオンライン制御する方法をとる。これによって財貨の出入庫を無人で自動的に遂行できるばかりでなく、在庫内容を即時・完全に掌握できるようになるから、作業の効率化と在庫適正化の管理が同時に可能となる。百貨店、大手スーパー、多数部品を使用する組立て型製造業などの自家倉庫から始まり、営業倉庫にも広まりつつある。第二は、トランク・ルームとよばれる主として個人を相手にした新しい業態である。家の建て替えや海外勤務などのため、家財を保管してもらいたいという個人需要にこたえて、湿度・温度をコントロールした倉庫を用意し、家財の保管を行うものである。
[森本三男]
字通「倉」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
出典 リフォーム ホームプロリフォーム用語集について 情報
…作家ジャン・ドノー・ド・ビセJean Donneau de Viséが法廷ニュースや小話や小詩片を編集したこの雑誌のあとを追って,数年のうちにドイツ,イギリスなどに同種の雑誌が続いた。 イギリスの印刷業者エドワード・ケーブEdward Caveが《ジェントルマンズ・マガジンGentleman’s Magazine》を1731年に創刊して成功してのち〈マガジンmagazine〉の語をつけた雑誌が次々に生まれた。もとは倉庫や貯蔵庫を意味したこの語が18世紀なかばには雑誌をさすことばとして定着して,アメリカ最初の雑誌が41年にフィラデルフィアで2誌生まれたときにも,その名は《アメリカン・マガジンAmerican Magazine》(創業者ベドフォードAndrew Bedford),《ゼネラル・マガジンGeneral Magazine》(同B.フランクリン)であった。…
…貨物輸送において貨物を一時的に保管したり,輸送を中継したりする機能をもつ保管場所のこと。貨物の保管場所としては,古くから倉庫(倉,庫裏などとよばれた),野積場,上屋,貯木・貯炭場などがあるが,これらは二つの役割をもっていた。その一つは,海上輸送と陸上輸送を中継する例にみられるように異種交通機関相互の連絡,中継をする機能である。…
…江戸中期以後,土間の面積は縮小し,主屋面積の3分の1くらいになるが,その時期が農家に納屋が普及した時期に見合っているものと考えられる。【鈴木 充】(2)室町時代,港町に設けられた海産物などを収蔵するための倉庫をいう。堺では貿易品を扱う有力商人がこれを所有し,品物の保管をおこない,他人の商品をも預かった。…
※「倉庫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
固定翼機でありながら、垂直に離着陸できるアメリカ軍の主力輸送機V-22の愛称。主翼両端についたローターとエンジン部を、水平方向から垂直方向に動かすことで、ヘリコプターのような垂直離着陸やホバリング機能...
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