精選版 日本国語大辞典 「偏光」の意味・読み・例文・類語
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光波の振動方向が規則的なものおよびその状態。光は電磁波の一種で、一様な媒質中ではその電界・磁界の振動方向、伝搬方向の三つが互いに垂直な横波である。
[田中俊一]
直線偏光は平面偏光ともよばれる。Eの振動を式で表せば
で与えられ、Aは電界の振幅、νは振動数、tは時間、δは初期位相で、図の波動は全体としてzの正方向へ速度vで伝搬することになる。一般の偏光は互いに垂直方向に振動する二つの直線偏光の合成とみなすことができ、それらの電界を
で表せば、合成されたEの軌跡は普通、 に示すように螺旋(らせん)状に回転し、このような光は回転偏光とよばれる。そのxy面への射影は一般に楕円(だえん)で、この光を楕円偏光というが、とくにAx=Ayでかつδy-δx=mπ/2ラジアン(mは奇数の整数)の場合は円になり、これを円偏光という。直線偏光の場合と同様に、光波は全体として速度vでzの正方向に伝搬するので、螺旋が のように右ねじの場合は、あるzの面(たとえば図のxy面)を螺旋が切る点は、偏光に正対して見たとき、時間の経過とともに時計回りに回転し、この場合を右回り楕円偏光または円偏光という。逆に螺旋が左ねじの場合は左回り偏光である。とくにδy-δx=mπラジアン(mは整数)の場合はxy面への射影は直線となり、これは先に述べた直線偏光に相当する。
これに対して、刻々に見れば振動方向が不規則な変化をしているが、ある時間の平均をとったときには、方向分布があらゆる方向に一様である光を自然光といい、自然光と偏光が合成されたとみなされる光を部分偏光という。部分偏光に対して、純粋な偏光(楕円、円、直線偏光)を完全偏光ということもある。
[田中俊一]
普通の光源から出る光は近似的に自然光とみなされる。自然光が粒子や粒子群で散乱されるときの散乱光や、ガラスなどの非吸収性媒質の表面で反射や透過をする光は一般に部分偏光になる。1808年フランスのマリュスはガラス面からの反射光についてはじめて偏光を発見した。とくにブルースターの法則を満足する入射角のときには、反射光は直線偏光になる。
自然光を偏光に変える素子を偏光子polarizer(または偏光器)といい、ニコルのプリズムや偏光板がその例であるが、非吸収性媒質表面での反射や透過を利用するものもある。偏光子はまた光の偏光状態を調べるのにも用いられ、この場合はとくに検光子analyserという。偏光子、検光子を
のように配置したものは偏光計polarimeter(偏光器ということもある)とよばれ、試料による偏光の変化を、普通、検光子を光軸の周りに回転して調べ、試料の物理的性質を明らかにするのに用いられる。とくに砂糖溶液の濃度を測定するために用いられるものを検糖計という。 は直線偏光の変化を調べるものであるが、楕円偏光の測定を行うものもある。人間の目は、網膜が屈折率や吸収率の異方性をもつ物質で構成されているので一種の検光子の働きをし、入射する光の電界の振動方向を知覚することができる。すなわち、直線偏光の白色視野を注視すると、
のAのように電界の振動方向に垂直に伸びる黄色でやや暗い砂時計状の模様が見え、その大きさは視角で2~4度、また周りに青みを帯びた部分がある。これは発見者の名前をとってその形状からハイディンガー・ブラシとよばれているが、入射する偏光の振動方向を固定すると、じきに見えなくなってしまう。ミツバチの複眼を構成する各個眼も入射偏光方位を識別でき、それぞれの個眼に入射する偏光方位の相違から、太陽の方向(大気中の微粒子の散乱によって太陽光は偏光している)を視角にして精度1~5度で検知できるといわれている。[田中俊一]
『土井康弘著『光学技術シリーズ4・偏光と結晶化学』(1975・共立出版)』
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電磁波の振動に偏りのある光.光は電磁波であって,その振動方向は光の伝搬方向と垂直な面内にある.このうち,電場の強さがこの面内の特定の方向に強く振動している光を直線偏光(または平面偏光)といい,電場ベクトルの先端を結ぶ曲線が光の進行方向から見て右まわりのものを右円偏光,左まわりのものを左円偏光という.直線偏光や円偏光はだ円偏光の特殊な場合と考えられる.単色光の断面図は一般に図のようにだ円である.だ円の主半軸aとX軸との間の角αをその断面の方位角といい,
90° ≧ α ≧ -90°
である.主半軸の比b/aをだ円率とよぶ.偏光はその偏り方によって直線偏光,円偏光,だ円偏光の3種類に分類されるが,直線偏光,円偏光はだ円率がそれぞれ0および1の特殊な場合と考えられる.直線偏光には方位角αの異なる無数の偏りの形があり,円偏光には向きの違う二つの形がある.だ円偏光では方位角とだ円率および向きを異にする無数の形がある.伝搬方向が同じで,方位角が90°異なる二つの直線偏光は直交しているという.右円偏光と左円偏光は互いに直交しているという.二つのだ円偏光は主軸の方位角が90°異なり,だ円率が等しく,向きが反対のときに直交するという.偏光面という用語はこれまで2種類の定義で用いられており,混同されがちである.すなわち,磁気的振動方向と伝搬方向を含む面,および電気的振動方向と伝搬方向を含む面の2種類である.最近は混乱を避けるために,電気的振動方向を明示して,偏光面という用語は用いない傾向にある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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… 1669年,デンマークの物理学者バルトリヌスE.Bartholinus(1625‐98)は,細い1本の光線を氷晶石の結晶に入れると,屈折光線が二つに分かれること(複屈折)を見いだした。次いでオランダのC.ホイヘンスは,二つに分かれたこれらの光の振動方向が,かたよっていること(偏光)を見いだした。1813年には,イギリスのブリュースターD.Brewster(1781‐1868)によって,結晶には1軸性と2軸性のものがあることが発見された。…
※「偏光」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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