(読み)ヘキ

デジタル大辞泉 「僻」の意味・読み・例文・類語

へき【僻】[漢字項目]

[音]ヘキ(漢) [訓]ひがむ
本筋からずれて、正しくない。一方に偏する。「僻見僻説僻論
場所中央から離れている。「僻遠僻陬へきすう僻村僻地
難読僻耳ひがみみ僻目ひがめ

ひが【×僻】

正常でないこと。妥当でないこと。まともでないこと。多く、名詞の上に付いて、複合語の形で用いられる。「心」「事」「目」
阿波の客が―起こして」〈浄・阿波の鳴門
(「非我」とも書く)遊里などで、無粋なこと。また、その者。やぼ。
「あの柳助といふ―は」〈洒・色深猍睡夢〉

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精選版 日本国語大辞典 「僻」の意味・読み・例文・類語

ひが【僻】

  1. [ 1 ] 〘 造語要素 〙 人、または人間の部分の名称や行為、状態などに関係のある名詞の上に付けて、正当でないこと、妥当でないことを表わす。「ひが事」「ひが耳」「ひが者」「ひが覚え」など。また、動詞「ひがむ」、形容詞「ひがひがし」などを作る。
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙
    1. ( 形動 ) 正当でないさま、かたよったさま、変わっているさまなどをいう。
      1. [初出の実例]「西僻とは西のはてのをかしいひがな処ぞ」(出典:史記抄(1477)一一)
    2. かんしゃくなど正常でない心のたかぶり。
      1. [初出の実例]「阿波の客が僻起こして」(出典:浄瑠璃・傾城阿波の鳴門(1768)六)
    3. ( 「非我」とも書く ) ばか者。特に遊里で、やぼな客、侍客など。
      1. [初出の実例]「金持自慢する客は非我の随一なり」(出典:談義本・つれづれ睟か川(1783)一)
    4. 男色での若衆のこと。
      1. [初出の実例]「若衆をヒガ、ヒガといふは大古の言にして」(出典:洒落本・男倡新宗玄々経(1751‐64頃))

ひがみ【僻】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「ひがむ(僻)」の連用形名詞化 )
  2. ひがむこと。素直に見ないで、疑い曲解すること。また、その見解
    1. [初出の実例]「いとど、老いの御ひがみさへ添ひ給に」(出典:源氏物語(1001‐14頃)賢木)
    2. 「老親うちうなづきて得心しぬ。それより後、僻(ヒガミ)もやみ、いかり腹だつ事なし」(出典集義和書(1676頃)二)
  3. ゆがみ曲がっていること。
    1. [初出の実例]「他の一寸のゆがみはとがめて、おのれが一尺のひがみはみゑず」(出典:俳諧・父の終焉日記(1801)五月八日)

へき【僻・辟】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動 )
  2. 正しくないこと。一方にかたよっていること。また、性質などのかたよったさま。
    1. [初出の実例]「僻(ヘキ)をやめ邪をふせぐをしへなるべし」(出典:神皇正統記(1339‐43)中)
    2. [その他の文献]〔書経‐洪範〕
  3. 中央、都会から遠く離れていること。また、そのさまやその所。へんぴ。僻地。
    1. [初出の実例]「地僻にして吏に権多し」(出典:経国美談(1883‐84)〈矢野龍渓〉前)
    2. [その他の文献]〔史記‐孔子世家〕

いせ【僻】

  1. 〘 名詞 〙 似て非であること。まやかし。えせ。

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