判決で刑事裁判を打ち切ること。刑事訴訟法は/(1)/同一事件で確定判決が既にある/(2)/犯罪後に刑が廃止/(3)/大赦/(4)/時効が成立―の場合、免訴を言い渡さなければならないと定めている。戦時下最大の言論弾圧とされる「横浜事件」の再審では、治安維持法廃止を理由に元被告の免訴が確定した。最高裁によると、2006年~15年に全国の地裁・簡裁で計12人に免訴が言い渡された。
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刑事訴訟において,一定の事由があることを理由として言い渡される形式判決。理由とされる事由を免訴事由という。免訴事由の第1は,確定判決を経たことである。これは,同一の公訴事実につき有罪もしくは無罪の判決,または免訴の判決が確定している場合をいい,一事不再理の効力が認められる場合である。第2は,犯罪後の法令により刑が廃止されたことである。犯罪行為が終了した後,当該行為に適用されるはずの罰条が,法令の改廃により,廃止または失効した場合をいう。第3は,大赦があったことである。恩赦法2条,3条2号の定める大赦令に該当する場合をいう(恩赦)。第4は,時効が完成したことである。これは,刑事訴訟法250条に定める公訴時効の完成の場合である。刑事訴訟法337条が規定する免訴事由は,以上の四つであるが,判例上,憲法37条1項の定める〈迅速な裁判〉を受ける権利が侵害された異常な事態では,免訴判決で手続を打ち切るべきであるとされている。これらの免訴事由が,同じく形式裁判である公訴棄却の判決または決定(刑事訴訟法338条,339条)の要件となる事由と区別されているのは,主として治罪法以来の沿革的理由によるが,理論的には,免訴事由は,公訴棄却事由と異なり,およそ訴訟追行を許さない事由,あるいは訴追および処罰を禁止または放棄する旨の国家意思の表明があったと考えられる事由であると説明されている。公訴提起の時点ですでに免訴事由が存在するときは,検察官は公訴を提起すべきではない。したがって,その存在を看過して公訴を提起してしまったときには,免訴判決で手続が打ち切られる。公訴提起後に免訴事由が生じたときにも,同じく免訴判決が言い渡される。免訴事由が存在するにもかかわらず被告人が無罪判決を求めている場合であっても,審理は続行されず,免訴判決が下される。免訴判決を言い渡された被告人は,無罪判決を求めて上訴することはできない。免訴判決が確定した場合には,形式判決であるにもかかわらず,一事不再理の効力が発生する。なお,免訴の件数は最近ではきわめて少なく,大赦のあった1989年の38件を別にすれば,年間で0ないし数件にとどまっている。
執筆者:長沼 範良
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刑事訴訟法上、未確定の具体的刑罰権の存否の確定化を妨げる事由があるときに言い渡す判決をいう。フランス法から日本の治罪法(明治13年太政官(だじょうかん)布告第37号)に導入され、以後、免訴事由に変動はあるが、一貫して認められてきている。ただ予審免訴は予審の廃止とともに姿を消し、現在は、(1)事件についてすでに確定判決を経たとき、(2)犯罪後の法令により刑が廃止されたとき、(3)大赦があったとき、(4)公訴時効が完成したときに、免訴の判決が言い渡される(刑事訴訟法337条)。免訴の判決の本質が実体裁判(起訴の理由について有罪か無罪かの判断をする裁判)なのか形式裁判(公訴棄却など手続上の理由から訴訟を打ち切る裁判)なのかについては学説上争いがあるが、形式裁判説が通説とされている。判例も、大赦があったときは、裁判所は単に免訴の判決をすべく、公訴事実の存否または犯罪の成否などについて実体上の審判を行うことはできず、また、大赦を理由とする免訴の判決に対して当事者は無罪を主張して上訴することはできないとしている(昭和23年5月26日最高裁判所大法廷判決)。しかし、免訴の判決は、有罪の判決、無罪の判決と同様に、既判力(前訴判決の後訴に対する訴訟法上の効力をいい、主として一事不再理の効力)を生じるとされている。なお、判例は、いわゆる高田事件(1952年に起き、審理途中で15年余の中断があった事件)で、迅速な裁判の保障条項に反する事態が生じた場合に、憲法第37条1項により、判決で免訴を言い渡している(昭和47年12月20日最高裁判所大法廷判決)。
[内田一郎・田口守一]
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