兵学(読み)ヘイガク

デジタル大辞泉 「兵学」の意味・読み・例文・類語

へい‐がく【兵学】

用兵戦術などを研究する学問軍学。「兵学者」

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共同通信ニュース用語解説 「兵学」の解説

兵学

軍学、兵法ともいう。いくさで軍隊を動かす方法を研究する学問。中国の基礎きそ的な兵法書「六韜りくとう」「三略さんりゃく」「孫子そんし」「呉子ごし」が有名。

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精選版 日本国語大辞典 「兵学」の意味・読み・例文・類語

へい‐がく【兵学】

  1. 〘 名詞 〙 戦術、用兵などを研究する学問。兵術。軍学。
    1. [初出の実例]「甲州流兵学(ヘイガク)の起は、小幡勘兵衛より始る」(出典:大和事始(1683)五)
    2. [その他の文献]〔宋史‐芸文志六〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「兵学」の意味・わかりやすい解説

兵学
へいがく

用兵、戦法、戦略を研究する学問で、軍法、兵法、軍学、軍略などとよばれた。これら呼称について伊勢貞丈(いせさだたけ)はその著『安斎随筆(あんさいずいひつ)』のなかで、「軍法とは軍中にて諸(もろもろ)の士卒を治むる法度(はっと)・法定(ほうじょう)の定(さだ)めなり。兵法とは兵士の組合せ、鳴り物合図(あいず)の定、坐作進退(ざさしんたい)の法式なり。後代、甲州流・謙信(けんしん)流などを軍法と云(い)ふは誤りなり、軍術と云ふべし」と述べている。

 わが国に中国の古兵法、すなわち『孫子』『呉子』『六韜三略(りくとうさんりゃく)』などの兵書や史書による用兵の術が初めて伝えられたのは、奈良時代前後、朝鮮半島からの帰化人や遣唐留学生の吉備真備(きびのまきび)らによってである。平安時代には源義家(よしいえ)の師と伝え、のちに兵学の祖と仰がれる大江匡房(おおえのまさふさ)らが現れた。ついで武家時代に入り、しだいに攻城野戦の術が発達するとともに、南北朝時代から室町時代にかけて、『兵法秘術一巻書(へいほうひじゅついっかんしょ)』(虎(とら)の巻(まき)四十二か条)が流行し、また大江小笠原(おがさわら)家系の『訓閲集(きんえつしゅう)』が成立した。この時期の兵法は、宿星(しゅくせい)、雲気(うんき)、日取(ひどり)、時取(ときどり)、方位(ほうい)などを重視する軍敗(ぐんばい)(配)術を中核に、これに弓馬礼法(きゅうばれいほう)や武家故実を結び付けた、いわば軍敗兵法ともいうべきもので、信州の小笠原氏隆(うじたか)から上州の上泉秀綱(かみいずみひでつな)へ、ついでその子秀胤(ひでたね)に、さらに井伊直孝(なおたか)に仕えた岡本半介宣就(おかもとはんすけのぶなり)に伝えられた系統などが有名であった。

 江戸時代に入って平和が回復すると、前代の名将たちの戦略・戦法を学問的に検討しようとする傾向が高まり、中世的な軍敗兵法から脱皮して、流派兵学としての体系化・組織化が図られた。その先駆となったのは、甲斐(かい)の武田信玄(しんげん)の施政・軍事・言行などを集録したという『甲陽軍鑑(こうようぐんかん)』の分析・研究を出発点とする甲州流で、始祖の小幡景憲(おばたかげのり)(1572―1663)が幕府に仕えたため、その門流は全国諸藩に広がった。その高弟北条氏長(うじなが)は軍敗を迷信なりと断じて、兵法即士道という理念を打ち出し、1646年(正保3)『士鑑用法(しかんようほう)』を著して北条流を確立した。ついで氏長の高弟山鹿素行(やまがそこう)は諸流を集大成して『武教全書(ぶきょうぜんしょ)』を、さらに『中朝事実(ちゅうちょうじじつ)』を撰(せん)して日本的武教を説き、山鹿流を称した。また長沼澹斎(ながぬまたんさい)は『兵要録(へいようろく)』22巻を著し、朱子学をもって指導理念とし、練兵節制(れんぺいせっせい)の実事を重視する新しい兵学を唱えた。この長沼流から一全(いちぜん)流を唱えた近松茂矩(ちかまつしげのり)らが出た。

 一方、上杉謙信を祖と仰ぐ越後(えちご)流は、宇佐美伝(うさみでん)と加治伝(かじでん)の二派に分かれ、前者は宇佐美良賢(よしかた)の『武経要略(ぶきょうようりゃく)』を、後者は加治景英(かげひで)の弟子沢崎主水(さわざきもんど)の『武門要鑑抄(ぶもんようかんしょう)』を主要兵書として発展した。また謙信三徳(さんとく)流も有名であった。以上、甲州流、越後流、北条流、山鹿流、長沼流の五大兵法学のほか楠(くすのき)流、風山(ふうざん)流、源家古法(げんけこほう)、合伝(ごうでん)流などが現れたが、その多くは、鉄砲出現後の現実的な戦闘や兵員・物質の動員に関する主張はほとんどなく、実体のない机上の学であった。やがて天保(てんぽう)年間(1830~44)鈴木春山(しゅんさん)が『三兵活法(さんぺいかっぽう)』を著して初めて西洋兵制を論じ、長崎通詞(つうじ)の高島秋帆(しゅうはん)が西洋砲術の研究から入って高島流を創始し、幕府に召し出されて、最初の洋式操練を実施したりしたが、幕末の兵制改革以後は西洋兵学にその座を譲るに至った。

[渡邉一郎]

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百科事典マイペディア 「兵学」の意味・わかりやすい解説

兵学【へいがく】

軍学

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普及版 字通 「兵学」の読み・字形・画数・意味

【兵学】へいがく

軍法。

字通「兵」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の兵学の言及

【軍学】より

…兵学,兵法ともいう。軍学は一般に隊伍・兵器の配合,軍役の数などを論ずる軍法が中心と思われがちだが,その内容は,出陣・凱旋・首実検などの式を定める〈軍礼〉,武器の製法・製式を論ずる〈軍器〉,戦略・謀計を論ずる〈軍略〉,そして〈軍法〉,雲気・日取り・方角の吉凶を占う〈軍配〉に分けられ,その奥義は軍配とされる。…

【兵法】より

…軍学,兵学のこと。〈用兵の法〉の略語で,兵はもと武器の意から転じて軍隊の意。…

※「兵学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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