機能別による軍隊分類の一方法。おもに直接戦闘に従事する戦兵は、旧日本陸軍の場合、歩兵、砲兵、騎兵、工兵、航空兵、輜重(しちょう)兵、憲兵の7兵科に区分されていた。軍の近代化が進むにしたがって、砲兵は山砲兵、野砲兵、重砲兵、高射砲兵などに、工兵は電信兵、鉄道兵、船舶兵などに細分化された。また、直接戦闘に従事しない非戦兵は各部と称し、技術部、経理部、衛生部、軍楽部、軍医部、法務部、獣医部などに区分された。これら7兵科と各部を総称して兵種ともいった。
旧日本海軍の場合には、陸軍と若干異なり、士官を将校と将校相当官に区別し、士官は兵科、機関科、将校相当官は軍医科、薬剤科、主計科、造船科、造機科、造兵科、水路科に区分されていた。また特務士官以下にも兵科、航空科、整備科、機関科、軍楽科、看護科、主計科が、兵についても同様の各科があり、兵科に属する兵は水兵と呼称された。ただし、海軍には陸軍と同様な兵科の区別はなく、下士官以下に掌砲兵、掌水雷兵、掌測的兵、掌帆兵、掌信号兵などの特修兵があった。
武官の補充については陸軍の場合各科ごとに実施された。たとえば現役士官について憲兵科士官は各兵科からの転科が多かったが、候補者は憲兵練習所甲種学生として10か月間の修業を経て正式の憲兵科士官に任官した。また歩兵、騎兵、砲兵、工兵、航空兵、輜重兵の6兵科は、陸軍幼年学校(東京)で3か年の修業を経るか、または中学校4学年第2学期修了程度の試験に合格したのち陸軍士官学校予科にて2年間修業して士官候補生となり、5か月間の隊付を経験してから陸軍士官学校の本科に1年10か月間修業する。その後2か月間の見習士官としてふたたび隊付を経て各兵科の少尉に任官する仕組みになっていた。下士官でも陸軍士官学校あるいは陸軍工科学校で1年間の修業を経、2か月間の隊付勤務をすれば各兵科の少尉に任官する道が開かれていた。現役下士官は、憲兵科の場合に上等兵のなかで2年間憲兵職務の経験がある志願者か、他の兵科の隊付下士官で6年間以上の現役服務者で憲兵への転科志願者から補充された。歩兵、騎兵、砲兵、工兵、航空兵、輜重兵科の下士官は、下士官候補者で約2年間の現役服務者で所定の条件を満たした者から補充された。海軍の場合に兵科は海軍兵学校、機関科は海軍機関学校、主計科は海軍経理学校の卒業者から補充された。各学校とも中学校第4年修業程度の学術試験に合格した者で、3年8か月の修業を経たのち各科の候補生となり、練習艦隊で実地訓練を受け、卒業後1年半で各科少尉に任官した。また各科准士官は一等下士官、各科特務少尉は准士官より選抜進級された。三等下士官は一等兵のなかで1年4か月の実役停年を有した任用試験合格者より各兵科別に任用された。陸海軍とも兵科選定にあたっては各兵科の特性に適合した者を厳しく選抜した。
現在自衛隊では兵科にあたるものを職域または職種と称し、陸上自衛隊には戦車部隊と偵察部隊からなる機甲科、戦闘に関連する掩体(えんたい)構築、道路・飛行場建設を任務とする施設科、糧食、油脂、燃料の整備などを任務とする需品科、各国陸軍の砲兵に相当する特科、同じく歩兵に相当する普通科がある。とくに普通科は陸上自衛隊最大の職種で主力部隊となっている。また各部は監理部、人事部、調査部、防衛部、装備部、教育訓練部、衛生部の7部から構成され、防衛大臣の幕僚機関として陸上幕僚監部を形成している。
[纐纈 厚]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…実力部隊である軍隊は通常,陸,海,空の三軍から成るが,国によってはこのほかに海兵隊をもち,かつてのソ連は防空軍,戦略ロケット軍を独立した軍種としていた。陸軍の諸兵科統合の基本作戦部隊は師団である。師団は歩兵(狙撃),戦車,機械化,空挺等の種類があり,山岳師団をもつ国もある。…
※「兵科」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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