〈くすりのつかさ〉とも読む。律令制下における中央の最高衛生行政機関。中国の唐制の大医署,尚薬局に相当する。大宝令制定前から宮中内の医事を担当する内薬官と宮中外の外薬寮があり,令制では前者が中務省所管の内薬司,後者が典薬寮となって宮内省に属した。平安期には内薬司を併合した。庁舎は平安宮では談天門の北,左馬寮の東にあり,医薬,診療,医学教育,宮中諸司への配合薬の分配を行い,諸国より送られてきた年料の薬種を収納し,薬園,茶園,枸杞(くこ)園,乳牛院,御井などが付属した。職員は医官の最高官の典薬頭だけが従五位下の殿上人で,おもに和気,丹波の両氏が交互に世襲し,その下に助,允,大属,少属が各1,医師(くすし)10,医博士1,医生40,針師5,針博士1,針生20,按摩(あんま)師2,按摩博士1,按摩生10,呪禁(じゆごん)師2,呪禁博士1,呪禁生6,薬園師2,薬園生6,使部20,直丁2などのほか,品部の薬戸,乳戸がいた。
執筆者:宗田 一
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令(りょう)制官司(かんし)の一つ。宮内省の被管。和名で「くすりのつかさ」と読み、唐名は大医署(たいいしょ)、尚薬局(しょうやくきょく)にあてる。薬剤、治療、薬園のことをつかさどる。職員には頭(かみ)、助(すけ)、允(じょう)、大属(だいさかん)、少属各1人のほか、医師、医博士(いはかせ)、医生(いしょう)、針師、針博士、針生、案摩(あんま)師、案摩博士、案摩生、呪禁(じゅごん)師、呪禁博士、呪禁生、薬園(やくおん)師、薬園生、使部(つかいべ)、直丁(じきちょう)があり、薬戸(やくこ)と乳戸(にゅうこ)が付属する。後世、典薬頭、助、医博士は和気(わけ)、丹波(たんば)両氏の世襲となった。
[渡辺直彦]
「くすりのつかさ」とも。令制の宮内省所管の官司。官人の医療と医師の養成とをつかさどる。唐の太常寺(たいじょうじ)被管の太医署(たいいしょ)にならったもの。頭・助・允・大属・少属各1人の四等官のほか,医療技術者である医・針・按摩・呪禁(じゅごん)の各師,医学教育者である医・針・按摩・呪禁の各博士とその学生である生(しょう),薬園を管理する薬園師・薬園生が配され,品部として薬戸・乳戸が付属。896年(寛平8)内薬司を併合し,侍医・女医(にょい)博士・薬生をも擁した。
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…中国の唐制の大医署,尚薬局に相当する。大宝令制定前から宮中内の医事を担当する内薬官と宮中外の外薬寮があり,令制では前者が中務省所管の内薬司,後者が典薬寮となって宮内省に属した。平安期には内薬司を併合した。…
…また中務省に所属する陰陽(おんみよう)寮においては,陰陽頭(かみ)の職掌として〈天文,暦数,風雲の気色,異(あや)しきこと有らば,密封して奏聞せむ事〉を規定し,その属僚として〈占筮して地を相(うらな)う〉ことを職掌とする陰陽師6人,陰陽生(定員10人)を教育指導する陰陽博士1人,〈天文の気色を候(うかが)い,異しきこと有らば密封する〉ことを職掌とする天文博士1人などが記載されている。さらにまた宮内省に所属する典薬寮には,典薬頭の属僚として医師10人,針師5人,案摩師2人のほか,呪禁の事をつかさどる呪禁師2人,呪禁生6人を教育指導する呪禁博士1人が記載されているが,これらの陰陽頭や陰陽博士,典薬寮の呪禁師などの職掌は,〈陰陽〉〈占筮相地〉〈呪禁〉などの言葉が何よりも端的に示しているように,道教の神学教理もしくは道術を大幅に持ちこんだものであり,道教のそれらを学習し修得することなしには,その職務を遂行することが不可能ともいえる性格のものであった。そのことは4世紀以後,中国南北朝期から11世紀末,隋・唐・五代・宋初に至る道教の神学教理もしくは道術――その思想的根底基盤をなすものは,《易》(《易緯》)の陰陽五行を中心とする〈神道〉の哲学と《老子》の〈道〉と〈玄妙〉の形而上学。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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