正安二年(一三〇〇)撰の性空上人伝記遺続集(円教寺蔵)などによれば、性空が日向国
諸権門の帰依を受け、性空在世中に如意輪堂・法華堂・講堂・薬師堂のほか、常行堂(性空の建立、三間四面、本尊は阿弥陀如来)・多宝塔(治部少丞安部有重が半ばまで造り、のち当寺大日院日照が完成させた。五智如来を安置)・真言堂(元国司館の持禅師慶雲が五人の檀越の勧進を受け建立、一間四面)・往生院・大経所・経蔵、鐘楼(寛和三年三月一八日の年紀をもつ鐘銘がある)・湯屋・山王院宝殿(十二所神を勧請)などの伽藍が整ったという(前掲遺続集、「播磨国飾磨郡円教寺縁起等事」円教寺蔵など)。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
兵庫県姫路市の書写山にある天台宗の寺。山号は書写山。西国三十三所27番札所。開山の性空(しようくう)は,多年九州の霧島山,背振(せふり)山にこもって修行した法華持経者で,966年(康保3)当山に移って庵居した。985年(寛和1)播磨介藤原季孝が帰依して法華三昧堂を建立し,調直僧12口をおき加徴知識米(かちようちしきまい)300石を寄進してからにわかに活況を呈し,花山法皇は986年7月と1002年(長保4)3月の2度にわたって御幸,987年(永延1)院の御願寺となり,さらに僧8口をおき,講堂が建立された。かくして書写山は性空聖(ひじり)の名とともに著名になり,藤原実資(さねすけ)・同公任(きんとう)などの公卿,恵心僧都源信(えしんそうずげんしん)や寂心(慶滋保胤(よししげのやすたね))なども結縁のため来山,播磨きっての名刹となり,諸堂充満して西の比叡山と称された。1174年(承安4)4月には後白河法皇が御幸,7日間参籠した。このとき一和尚行事(いちのわじようぎようじ)を長吏(ちようり)と改称。この間,985年に霜月会十講が,988年に六月会三十講が始まり,性空忌日に三月会五時講が,引声念仏は1074年(承保1)8月に始まり,また1168年(仁安3)に始まった一切経会は後白河法皇の御願で平清盛が1000余巻を施入して始まったという。鎌倉時代には将軍家祈禱所となり,34世長吏俊源は,講堂,五重塔,食堂(じきどう)を建立または改造して大興隆期を迎えた。一遍が遊行のさい当寺に参詣した1287年(弘安10)は46世長吏朝豪の時代で第2の興隆期に当たる。1333年(元弘3)5月,後醍醐天皇は隠岐から還幸の途次行幸して安室郷(やすむろごう)を寄進し,1248年(宝治2)に後嵯峨院が寄進した余部荘(よべのしよう)地頭職を安堵した。ついで足利尊氏も丹後志楽荘を寄進し,近世には寺領830余石。
山上伽藍は何回か落雷による出火または失火で焼失し,現存の大講堂,食堂,常行堂,護法堂,鐘楼,金剛堂と塔頭(たつちゆう)寿量院は室町~戦国期の建造(いずれも重文)だが,大講堂本尊の釈迦三尊像と昭和再建の摩尼殿(如意輪堂)安置の四天王像は創建当時の藤原時代の作で重文。境内全域が史跡に指定されている。毎年7月9日の四万六千日には参詣者が群参する。
執筆者:石田 善人
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兵庫県姫路市書写(しょしゃ)にある天台宗の寺。山号の書写山の名で知られる。966年(康保3)「証悟(しょうご)の聖(ひじり)」といわれた性空(しょうくう)上人(しょうにん)の開山。平安時代には、花山(かざん)法皇、後白河(ごしらかわ)法皇が参籠(さんろう)、朝野の尊崇を受けた。また、多くの僧侶(そうりょ)の修行道場として栄え、盛時は山上に多くの堂宇が並び、西の比叡山(ひえいざん)といわれた。西国三十三所第27番札所。970年(天禄1)性空が霊桜(れいおう)に観音(かんのん)像を刻み、堂を建てたという如意輪堂(にょいりんどう)(摩尼殿(まにでん))があるが、現存の堂は昭和初期に再建されたものである。花山法皇の御願により創建された大講堂、後白河法皇の創建と伝える食堂(じきどう)ほか、常行(じょうぎょう)堂、護法(ごほう)堂、金剛(こんごう)堂、鐘楼(しょうろう)、寿量院(じゅりょういん)は室町時代以降の再建、復原によるもので、国の重要文化財に指定されている。
[中山清田]
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
…いずれも仁和寺(にんなじ)の子院で,天皇の後院(ごいん)として営まれた。仁和寺に深く帰依した円融天皇が983年(永観1)に御願寺とした円融寺をはじめとして,998年(長徳4)一条天皇御願の円教寺,後朱雀天皇の御願で,後冷泉天皇により1055年(天喜3)に完成した円乗寺,70年(延久2)後三条天皇御願の円宗寺(初め円明寺と称す)である。円宗寺では,国家の仏事として法華会,最勝会が行われ,のち法勝寺大乗会とともに北京三会(ほつきようさんえ)とよばれた。…
…平安中期の僧。播磨国書写山(しよしやざん)円教寺(現,姫路市)の開山,書写上人の名で知られる。橘善根の子。…
※「円教寺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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