精選版 日本国語大辞典 「再審」の意味・読み・例文・類語
さい‐しん【再審】
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確定判決の法的安定性と正義との調和を図るために設けられた、確定判決に対してなす非常救済手続である。刑事訴訟法では、事実認定の不当を理由として確定判決に対して行われる救済裁判をいう。再審の請求は、同法第435条に法定されている場合に、有罪の言渡しをした確定判決に対して、その言渡しを受けた者の利益のために、これをすることができる。すでに無罪の裁判のあった行為についてはふたたび刑事上の責任を問われないとする憲法第39条の趣旨から、旧法が認めていた不利益再審の制度を現行刑事訴訟法は認めていない。再審の請求は、刑の執行が終わり、またはその執行を受けることがないようになったときでも、これをすることができる。再審の請求は、刑の執行を停止する効力をもたないが、管轄裁判所に対応する検察庁の検察官は、再審の請求についての裁判があるまで刑の執行を停止することができる。
再審の請求権者は、検察官、有罪の言渡しを受けた者、有罪の言渡しを受けた者の法定代理人および保佐人、有罪の言渡しを受けた者が死亡しまたは心神喪失の状態にある場合には、その配偶者、直系の親族および兄弟姉妹である(刑事訴訟法439条1項)。再審請求に理由のあるときは、再審開始の決定をしなければならない(同法448条1項)。再審の開始の決定をしたときは、決定で刑の執行を停止することができる(同法448条2項)。裁判所は、再審開始の決定が確定した事件については、原則として、その審級に従い、さらに審判をしなければならない。再審においては、原判決の刑より重い刑を言い渡すことはできない。再審において無罪の言渡しをしたときは、官報および新聞紙上に掲載して、その判決を公示しなければならない(同法451条~453条、刑事補償法、国家賠償法)。
再審理由を定めた刑事訴訟法第435条のうち、とくに重要なのは、有罪の言渡しを受けた者に無罪か免訴を言い渡すべき明らかな証拠や、刑の言渡しを受けた者に刑の免除を言い渡すべき明らかな証拠、または原判決の罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠を、それぞれ新たに発見したとき(435条6号)である。再審が開始されるかどうかは、「明らかな証拠」があるかどうかにかかっている。以前は、再審理由は無罪の高度の蓋然性(がいぜんせい)がある場合にのみ認められ、「疑わしきは被告人の利益に」ではなく「疑わしきは確定判決の利益に」と考えられてきたが、そうなると、たとえば真犯人でも発見しないかぎり再審理由は認められないことになり、再審は「開かずの門」となってしまう。そこで、判例は、「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」とは、確定判決における事実認定につき合理的な疑いを抱かせ、その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠をいい、その判断に際しても、再審開始のためには確定判決における事実認定につき合理的な疑いを生じせしめれば足りるという意味において、「疑わしいときは被告人の利益に」という刑事裁判における鉄則が適用されるとした(昭和50年5月20日最高裁第一小法廷決定)。この判例(白鳥事件)により、いわゆる「再審の時代」にはずみがつき、重大事件の再審無罪判決が出されるに至った。
第二次世界大戦後、再審により無罪判決が下された著名な例としては、強盗殺人被告事件について無期懲役刑に処せられてのち約50年を経て再審判決により無罪が言い渡されたいわゆる吉田石松老事件、放火事件についてのいわゆる金森老事件、殺人罪についてのいわゆる弘前(ひろさき)大教授夫人殺し事件、強盗殺人事件についてのいわゆる加藤老事件、強姦(ごうかん)致死・殺人事件についてのいわゆる米谷(よねや)事件などがある。上記白鳥事件判例の後、死刑の確定判決に対し再審で無罪判決が下され、司法界に大きな衝撃を与えた。すなわち、強盗殺人・同未遂等再審被告事件の死刑確定者に対してアリバイの成立を認めて1983年(昭和58)7月15日に無罪を言い渡したいわゆる免田事件、強盗殺人被告再審事件の死刑確定者に対して自白の真実性に疑いがあるなどとして1984年3月12日に無罪を言い渡したいわゆる財田川(さいたがわ)事件、強盗殺人・非現住建造物放火再審被告事件の死刑確定者に対して自白には客観的裏づけが乏しく信用できないなどとして1984年7月11日に無罪を言い渡したいわゆる松山事件がこれである。さらに、その後、強姦致傷・殺人事件の死刑確定者に対して1989年(平成1)1月31日に再審無罪を言い渡した島田事件がある。また、いわゆる徳島ラジオ商殺し事件では、初の死後再審につき、1985年7月9日に無罪の判決が言い渡されている。なお、治安維持法違反事件につき、無罪の再審理由と免訴の再審理由とが競合している場合に、2008年3月14日の判例は免訴の判決を言い渡すべきであるとしている(横浜事件)。また、わいせつ誘拐・殺人および死体遺棄事件につきDNA型鑑定に基づき無期懲役とした事件につき、DNA型鑑定が被告人と一致しないことが判明したとして2010年3月26日に再審無罪の判決が言い渡された足利事件がある。
なお、民事訴訟法では、裁判の確定によって終了した事件について、同法第338条列挙の一定の重大な瑕疵(かし)がある場合に、当事者の再審の訴えをもってする不服申立てにより、その裁判をした裁判所に、さらにその裁判の当否を審判させる手続をいう(同法338条~349条、403条)。また、他の法分野での再審については、行政事件訴訟法(34条)、会社法(853条)、特許法(171条)、国際司法裁判所規定(61条)に定められている。
[内田一郎・田口守一]
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