冴える(読み)サエル

デジタル大辞泉 「冴える」の意味・読み・例文・類語

さ・える【×冴える/×冱える】

[動ア下一][文]さ・ゆ[ヤ下二]
寒さが厳しくなる。しんしんと冷え込む。「―・えた冬の夜」 冬》「―・ゆる夜のかはら音あるこいしかな/碧梧桐
くっきりと澄む。はっきりと見える。「冬の夜空に星が―・える」
楽器の音などが、濁りがなく鮮明である。「―・えたバイオリン音色
色が鮮やかである。顔色表情についてもいう。「―・えたピンク」「顔色が―・えない」
頭の働きやからだの調子などがはっきりする。「今日は頭が―・えている」「目が―・えて眠れない」「気分が―・えない」
腕まえや手際などが鮮やかで優れている。「腕の―・えた職人」「包丁さばきが―・える」
(多く打消しの語を伴って)ぱっとしない。満足できない。「景気先行きがいまひとつ―・えない」「―・えないかっこう」
[類語](2澄む澄みきる冴え渡る冴え返る澄み渡る透き通る澄ます清澄透徹/(6絶妙上手素晴らしい巧みうまい巧妙老巧達者器用賢い素敵すてき見事みごと立派最高卓抜秀逸結構目覚ましい輝かしいたえなるえも言われぬ上出来上上物の見事結構尽くめ何より・申し分が無い・言う事無し天晴れナイスワンダフル目の覚めるよう目に染みる水際立つめぼしい目立つ引き立つ顕著著しい際立つ光る目を引く人目を引く人目につく目に立つひときわおも立つとりわけ値千金掛け替えのない群を抜く卓出卓越卓絶逸出抜群抜きん出る飛び抜けるずば抜ける頭抜ける並外れる人並み外れる度外れ断トツ非凡出色傑出一日いちじつの長素人離れ玄人はだし超人的

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精選版 日本国語大辞典 「冴える」の意味・読み・例文・類語

さ・える【冴・冱】

  1. 〘 自動詞 ア行下一(ヤ下一) 〙
    [ 文語形 ]さ・ゆ 〘 自動詞 ヤ行下二段活用 〙 ( 少しも濁りがなく純粋である意 )
  2. しんしんと冷える。冷え込む。《 季語・冬 》
    1. [初出の実例]「白玉をつつむ袖のみなかるるは春は涙もさえぬなりけり〈伊勢〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)春上・二〇)
    2. 「霜さゆるみぎはの千鳥うちわびてなくね悲しき朝ぼらけかな」(出典:源氏物語(1001‐14頃)総角)
  3. 光、音、色などが、冷たく感じるほど澄む。また、まじりけがないものとしてはっきり感じられる。澄みきる。《 季語・冬 》
    1. [初出の実例]「山かげや岩もる清水音さえて夏のほかなるひぐらしの声〈慈円〉」(出典:千載和歌集(1187)夏・二一〇)
    2. 「松の梢に風さえて」(出典:平家物語(13C前)一〇)
  4. 気持が純粋で澄みきる。
    1. [初出の実例]「万葉はげに代もあがり、人の心もさえて」(出典:毎月抄(1219))
  5. 目や頭の働き、神経、気持などがはっきりする。
    1. [初出の実例]「眠られぬ儘に過去(こしかた)将来(ゆくすゑ)を思ひ回らせば回らすほど、尚ほ気が冴(サエ)て眠も合はず」(出典浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一)
  6. 技術があざやかである。未熟な点がなく、すぐれている。水ぎわ立つ。
    1. [初出の実例]「ずんとさへましたもの」(出典:黄表紙・三幅対紫曾我(1778))
  7. にぎやかである。はなやかである。興に乗る。
    1. [初出の実例]「紙屋仲間の御参会、さへるのさへるの」(出典:浄瑠璃・心中紙屋治兵衛(1778)上)
    2. 「昇の来て居ない時は、おそろしい冴えやうで〈略〉さまざまに騒ぎ散らす」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三)
  8. ( が打消の語を伴って用いられ ) 気持が盛り上がらない。すっきりしない。また、気がめいるようである。ぱっとしない。物足りない。
    1. [初出の実例]「嗟遊楽之不一レ(サヘざることを)」(出典:洒落本・瓢金窟(1747))
    2. 「元を敵手(あひて)世帯を持ってゐた所が、一向に冴えない話だ」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前)

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