翻訳|coolant
広義には冷却のために用いる材料を総称していうが,一般に冷却材といった場合,原子炉の炉心のおもな構成要素の一つで,炉心にある燃料から熱を受け取り,炉心の外にあるタービン,熱交換器など熱を利用する個所に熱を運び出す役割をもつものをいう。気体または液体の状態で使用される。おもな実例は,軽水炉での軽水,重水炉での重水,ガス冷却炉での炭酸ガス,高温ガス炉でのヘリウム,液体金属冷却高速増殖炉でのナトリウムである。運転中の原子炉の炉心では,核分裂によって燃料が発熱しているほか,γ線の吸収などで炉心の構成材料も発熱していて,それぞれ適切に冷却して適正な温度に保つ必要がある。炉心での発熱量の大部分は燃料からであるので,冷却の対象としては燃料がおもなものである。また,原子炉を運転して燃料が燃焼した後は,原子炉を停止しても燃料の崩壊熱の除去が必要である。研究用の原子炉など熱エネルギーの利用を目的としない原子炉では,冷却材はもっぱら炉心を冷却し,熱を捨てるだけであるが,発電用などエネルギー利用を目的とする原子炉では,燃料に発生した熱エネルギーは冷却材によって炉心外に運び出される。例えば,沸騰水型炉では,冷却材である軽水が直接タービンを回して発電し,加圧水型炉では冷却材である軽水が蒸気発生器で熱交換して二次系の水を加熱して水蒸気をつくり,これがタービンを回す。一般に,冷却材として要求される性質は,(1)冷却能力が大きいこと,(2)比較的低圧で高温にできること,(3)化学的に安定で,冷却系統の構成材料を侵さないこと,(4)放射線下で安定で,分解しないこと,(5)核的特性がよいことなどである。これらの条件をすべて満たすものはないが,上記の実例としてあげたものはそれぞれこれらの条件をかなり満たしている。原子炉の設計を効率化するために,冷却材に他の機能を併せもたせることもあり,軽水炉の冷却材は減速材でもある。
執筆者:大久保 忠恒
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
原子炉を構成している材料の一つで,炉心やブランケットで発生した熱を原子炉外に取り出すために用いられる物質のこと.取り出した熱エネルギーを利用して発電すると同時に原子炉内の熱による損傷を防ぐ.冷却材に求められる性質は,熱容量が大きいこと,熱伝達率が大きいこと,熱中性子吸収断面積が小さいこと,粘度が低いこと,放射線や熱に安定なこと,腐食性が弱いこと,誘導放射能(核反応により二次的に発生する放射能)が低いこと,安価なことなどである.冷却材として,気体では,二酸化炭素,ヘリウム,空気,窒素,液体では,軽水,重水,有機物(ポリフェニル),液体金属では,水銀,ナトリウム,ナトリウム-カリウム合金,ビスマス,鉛-ビスマス合金などが用いられている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…原子炉は多くの機械や構造物から構成されていて,そこで使用されている材料の種類も多いが,そのなかに原子炉特有の機能を果たす役割をもった材料があり,これを原子炉材料という。原子炉の炉心で核燃料物質を含み,その核分裂によって熱を発生するのが燃料体であり,この燃料体から熱を受け取り炉心の外へ運び出すのが冷却材である。炉心には核分裂を制御するために中性子吸収能の大きな制御材を挿入し,軽水炉など熱中性子炉では核分裂によりつくられた中性子のエネルギーを下げるために減速材がおかれる。…
※「冷却材」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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