出す(読み)ダス

デジタル大辞泉 「出す」の意味・読み・例文・類語

だ・す【出す】

[動サ五(四)]《「いだす」から変化した語》
自分の範囲内のものを外の方へ動かす。
㋐ある所の中から外部へ移す。「小鳥をかごから―・す」
㋑ある場所からほかの方へ進み行くようにする。「舟を―・す」
㋒ある場所に行かせる。また、ある目的のために特定の場所に差し向ける。「使いに―・す」「競技大会に選手を―・す」
㋓特定の場所に届ける。「小包を―・す」「願書を―・す」「見本市に―・す」

㋐隠れているもの、しまってあるものなどをおもてに現す。人目に触れるようにする。「二の腕を―・す」「ぼろを―・す」
㋑蓄えてある力などを外に示す。「実力を―・す」
㋒おもてだったところに発表する。掲示や掲載して公表する。また、書物を出版する。「新聞に謝罪文を―・す」「名前を―・す」「全集を―・す」
㋓食してもらうために、飲食物を人前に用意する。供する。「酒を―・してもてなす」
㋔店を構えて営業を始める。「支店を―・す」
㋕声や顔つきなどに表す。「大声を―・す」「喜びを顔に―・す」
新たに存在させる。
㋐新しく発生させる。生じさせる。「芽を―・す」「ぼやを―・す」
㋑味・味わいを生じさせる。「うまみを―・す」「つやを―・す」
㋒水分などを外へ放出させる。「汗を―・す」「うみを―・す」
㋓新しい事物をつくる。生む。「この県は首相を二人―・している」
㋔産出する。「良質の鉱石を―・す地帯」
㋕勢いなどをさらに加える。いっそう増す。「スピードを―・す」
㋖ある事態・結果をもたらす。「死傷者を―・す」「結論を―・す」
動詞連用形に付いて)
㋐そうすることによって外や表面に現れるようにする意を表す。「しぼり―・す」「見つけ―・す」
㋑その動作を始める意を表す。「降り―・す」「笑い―・す」
[可能]だせる
[下接句]あごを出す足を出す居候三杯目にはそっと出しおくびにも出さない我を出す顔を出す楽屋から火を出す陰で舌を出す口に出す口を出す暗闇くらやみの恥を明るみへ出す地金を出す舌を出す尻尾しっぽを出す精を出すだまを出す駄目を出す角を出す手を出す脳天から声を出す暇を出すやぶをつついて蛇を出す
[類語]現す送る遣る送り出す発する派する差し向ける差し遣わす差し立てる遣わす回す差し回す派遣する差遣する届ける送り付ける送り届ける送付する送達する発送する託送する郵送する差し出す仕向ける寄せる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「出す」の意味・読み・例文・類語

だ・す【出】

  1. 〘 他動詞 サ行五(四) 〙 ( 「いだす」から転じて、中世頃から用いられる )
  2. [ 一 ] 手もとにあるものを外の方へ移動させる。
    1. 内のものを外へ移す。また、外の方へ向かって伸ばしあらわす。
      1. [初出の実例]「出はいだす也。それをただだすといへり、如何。答 いを略してだすといへる也」(出典:名語記(1275)四)
      2. 「首出してはつ雪見ばや此衾〈竹戸〉」(出典:俳諧・猿蓑(1691)一)
    2. ある限られた場所から外へ進み動くようにしむける。出発させる。
      1. [初出の実例]「らんぐいさかもぎをして、人をそとへたさぬものぞ」(出典:史記抄(1477)一二)
      2. 「フネヲ dasu(ダス)」(出典日葡辞書(1603‐04))
    3. ある場所に行くようにしむける。出勤、出場、出演、出席などをさせる。
      1. [初出の実例]「あまやかして奉公にも出(ダ)しませんから」(出典:滑稽本浮世風呂(1809‐13)二)
    4. 追放する。また、離縁する。
      1. [初出の実例]「親子喧嘩の合間こまには夫婦喧嘩さ。出(ダ)しゑへもしねへくせに出て往といふ」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二)
    5. 郵便物などを送る。
      1. [初出の実例]「返事は最(も)う出しました」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一)
    6. 他のところに持っていく。提出する。
      1. [初出の実例]「猪を狩場の外へ追にがし〈曲翠〉 山から石に名を書て出す〈臥高〉」(出典:俳諧・続猿蓑(1698)上)
    7. 割り当てのものをさし出す。料金などを支払う。また、出資したり、貸し出したりする。
      1. [初出の実例]「家ごとに斗穀を税(ダシ)て以て饋(やしな)ひ遺る」(出典:大唐西域記長寛元年点(1163)三)
      2. 「其代(そんでへ)に本銭(もとで)はいらねへス。荷は借荷で損料を出(ダ)すばかり」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四)
    8. 買うの意にいう、酒問屋仲間などの隠語
      1. [初出の実例]「やすくはうりやすめへ。なんぞだしなすったか」(出典:洒落本・仕懸文庫(1791)二)
  3. [ 二 ] 今まで見えなかったもの、なかったものなどを外に現わす。
    1. 隠れているもの、しまってあるものなどを外に現わす。
      1. [初出の実例]「アリドモ アマタ アナヨリ ゴコクヲ daite(ダイテ)」(出典:天草本伊曾保(1593)蝉と蟻との事)
      2. 「ふたつ子も草鞋を出すやけふの雪〈支考〉」(出典:俳諧・続猿蓑(1698)冬)
    2. 他に与えるために用意する。飲食物などを人前に用意する。
      1. [初出の実例]「たのふだ人のござったに、酒があらばだせ」(出典:虎明本狂言・富士松(室町末‐近世初))
    3. 上方の遊里で、置屋から茶屋へ芸娼妓を呼び迎える。
      1. [初出の実例]「さきにも綿富から出(ダ)しに来たけれど、あんまり気色がわるいよって、ことわりいふていかなんだが」(出典:洒落本・北川蜆殻(1826)上)
    4. 生じさせる。発生させる。「芽を出す」「元気を出す」
      1. [初出の実例]「汗出して谷に突こむ氷室哉〈冬松〉」(出典:俳諧・曠野(1689)五)
    5. 声や顔つきなどに表わす。意志表示をする。また、模様や色として表わす。
      1. [初出の実例]「コトバヲ dasu(ダス)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      2. 「一向に面白くない。けれども顔には少も出(ダ)さなかった」(出典:悪魔(1903)〈国木田独歩〉七)
    6. 表だった所に発表する。また、掲示・掲載する。また、書物を出版する。
      1. [初出の実例]「おめへが手本を出したから、ツイおれも」(出典:滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)三)
      2. 「色々な投書がのって居たが、中には随分拙いのも人気とりに出してあった」(出典:思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉七)
    7. 世間に現れるようにする。輩出させる。
      1. [初出の実例]「弟子の中から少からぬ師にまさる秀才を出(ダ)した」(出典:黒い眼と茶色の目(1914)〈徳富蘆花〉四)
    8. 商店や飲食店を作って営業を始める。
      1. [初出の実例]「酒屋の跡の明家(あきや)をば仮初(かりそめ)の見世(みせ)(ダ)し」(出典:当世商人気質(1886)〈饗庭篁村〉四)
  4. [ 三 ] 補助動詞として用いる。動詞の連用形に付く。
    1. その動作によって表や外に現われるようにする意を表わす。「染め出す」「作り出す」など。
    2. その動作を始める意を表わす。「歩き出す」「話し出す」「読み出す」など。

出すの補助注記

古く「いだす」が他の動詞と複合する場合、上の動詞の語尾がイ段の音のとき、「だす」となることがある。「万葉‐三七六五」の「まそ鏡かけて偲(しぬ)へとまつり太須(ダス)形見の物を人に示すな」など。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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