で‐は【出端】
〘名〙
※俳諧・崑山集(1651)五「一せいは
はやしのてはか郭公
(ほととぎす)〈定房〉」
② (「でば」とも) 出るてがかり、きっかけ。出るのによいおり、また場所。
※
歌舞伎・芽出柳緑翠松前(1883)
大詰「夜廻りをなす中間共に見咎められて出端
(デハ)を失ひ」
③ (「でば」とも) 出るための便。地の利。
※都会(1908)〈生田葵山〉不安「万世橋際がいい。何処へ往くにも出端(デハ)がいいから」
④ 能で、後シテ、または後
ツレが登場する際に奏する
囃子(はやし)。大鼓・小鼓・笛と
太鼓で演奏する。神(「
高砂」「
春日龍神」など)・鬼(「殺生石」など)・精(「
老松」など)・霊(「融
(とおる)」「砧」など)等の登場に広く用いるが、人間・
化身の登場には用いない。
※申楽談儀(1430)能の色どり「後のではの、
はしがかり、さしごゑ、一せいよりうつる所は、
わきのしてのもの也」
※
評判記・
役者評判蚰蜒(1674)今村久米之助「ことさらはしがかりの出はなどの、あっぱれ見事さ」
で‐ばな【出端】
〘名〙 (「ではな」とも。「はな」は
物事の初めの意)
① (「
出鼻」とも書く) 出たばかりの時。出はじめ。出ぎわ。また、出はじめの
勢いの盛んなころ。はじめのすぐれてよいところ。
※三体詩幻雲抄(1527)「水はてはなであたらしく生(さん)なぞ」
※浄瑠璃・心中二枚絵草紙(1706頃)下「色茶屋の色の出花の里ぞとは」
③ (「出花」とも書く)
番茶・
煎茶(せんちゃ)で、湯を注いだばかりの、かおりのよいころあい。
※俳諧・俳諧勧進牒(1691)上「木がらしや夜半過たる茶の出はな〈里東〉」
④ (「出花」とも書く) 茶。もと、
花柳界の語で
芸者や
娼婦の売れないことを「お茶をひく」ということから、茶を忌んでいったもの。
⑤ 出たさき、店先、店頭など。
※咄本・気のくすり(1779)くら替「廛(みせ)の出ばなに行て見れば」
いで‐は【出端】
〘名〙 出るべき時期。では。〔文明本節用集(室町中)〕
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デジタル大辞泉
「出端」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
出端
では
日本音楽,演劇,舞踊の用語。役者または踊り手の登場の際の音楽,または楽曲の部分およびその舞踊をいう。種目によって内容が異なる。 (1) 能では,神仏,鬼畜,精霊などの後ジテおよびそのツレの登場の囃子。大小鼓,笛に太鼓が入る。太鼓の一声 (いっせい) ともいう。 (2) 歌舞伎または舞踊における人物の登場のこと,およびその伴奏音楽またはそのところにあたる楽曲の構成部分。花道で演じられることが多い。歌曲を用いる場合,その歌を出端歌ともいう。下座 (げざ) としては,主役の登場に打つ囃子をいい,能にならって太鼓の一声ともいう。ただし,その1段目を出端の越と称して太鼓地にも利用。また,せり出しの合方の三味線と合奏した登場音楽として用いるが,その場合は能から離れてチリカラ拍子となる。
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世界大百科事典内の出端の言及
【歌舞伎】より
…〈本花〉〈仮花〉と略称することもある。花道を使っての出端(では)や引込みの六方,またたとえば《妹背山婦女庭訓》の吉野川の場や《鞘当》の不破名古屋の丹前の出のように両花道を効果的に使う場面などは,花道という機構を備えている歌舞伎ならではの魅力溢れる演出となっている。なお,江戸時代の劇場の花道は,揚幕を出たところで直角に折れていた。…
【出入事】より
…謡(うたい)がなく囃子と所作から成る囃子事小段のうち,立方(たちかた)の登・退場に用いられるものの総称。登場に用いるものを〈出端事(ではごと)〉,退場に用いるものを〈入端事(いりはごと)〉と呼ぶが,〈来序(らいじよ)〉や〈早鼓(はやつづみ)〉のように,その前半で前役のシテ,ツレなどが退場し,後半でアイなどの後役が登場するものもある。 出端事は種類が多いが,おもに大鼓(おおつづみ)・小鼓(こつづみ)で奏される大小物と,太鼓が加わる太鼓物,その他のものの三つに大きく分けられる。…
※「出端」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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