二つの面が鋭く交わる刃先cutting edgeによって,切り,削り,彫る道具の総称。剣のように身の両側に刃がつくものを諸刃(もろは)または両刃(りようば),刀のようにその片側に刃がつくものを片(偏)刃(かたは)と呼ぶ。こうした呼び分けは,日本では奈良時代以来行われ,〈かたな〉の語も片刃(〈な〉は刃の古称)に由来する。しかし考古学では,刃と直交方向の断面で,刃の両面が相称をなせば両刃,非相称であれば片刃とする呼び分けを行っている。この断面が直線をなせば切刃(きりば)と呼び,丸みをもつ刃は蛤刃(はまぐりば)と呼ぶ。
刃物を材料で分類すると石,青銅,鉄に大別される。石器における刃物には,打ち欠きのみによって刃を形成した打製の刃物と,磨いて仕上げた磨製の刃物とがある。前者が旧石器時代から製作・使用され,後者は後出であるため,後者の方が万事に優れるという誤解がある。しかし,ナイフ,鎌,鏃,錐としての打製の刃物は,磨製の刃物に勝るだけでなく,鉄の刃物に勝る威力をもつこともある。木を対象とする石斧の場合は,磨製刃は打製刃に比べ,深く打ち込むことができ,また抜き取りやすく,壊れにくい。土を対象とした効果では,打製刃・磨製刃の差は大きくない。一方,製作に要する時間を比較すると,大多数の打製刃物が分単位の時間で完成するのに対し,磨製刃物は何日もあるいは何週間も必要とする。
石器・金属器を問わず,刃物は損耗すると刃がつけなおされる。打製石器の場合は新たな打ち欠きによって,磨製石器・金属器の場合は砥石で磨くことによって新しい刃を作り出す。この過程が繰り返され,長さや幅が,柄に着装する,あるいは手に握る限度に達すると,刃をつけなおすことなく使われ,最後に捨てられる。遺跡から見いだされる刃物,伝世された刃物には,未製品,新品,使用途中のもの,廃品の全過程のものが含まれる。
→刀剣 →木工具
執筆者:佐原 眞
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
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