デジタル大辞泉
「分」の意味・読み・例文・類語
ぶん【分】
1 分けられた部分。分けまえ。「これは私の分です」
2 ある範囲の分量。区別されたもの。「あまった分をわける」
3 その人の持っている身分や能力。身の程。分際。「分をわきまえる」「分を守る」「分に安んずる」「分に過ぎる」
4 当然なすべきつとめ。本分。「学生は学問をその分とする」「己の分を尽くす」
5 物事の状態・様子・程度。「この分なら計画の実行は大丈夫だ」
6 仮にそうであるとする状態。「行く分には差し支えあるまい」
7 しな。ほう。
「よい―のふだん着に着換えている」〈鴎外・阿部一族〉
8 それだけのこと。だけ。
「跣足になります―のこと」〈鏡花・高野聖〉
9 他の名詞につけて用いる。
㋐それに相当するもの、それに見合うものの意を表す。「増加分」「苦労分」「五日分」
㋑その身分に準じる意を表す。「私の兄貴分」
㋒成分の意を表す。「アルコール分」
㋓区切られた時間の意を表す。
「夏―の水飴の様に、だらしがないが」〈漱石・坊っちゃん〉
[類語]勤め・任・任務・義務・責任・責務・本務・使命・役目・役・役儀・本分・職分・職責・責め・課業・日課・身分・柄・身の程・ステータス・分際・分限
ぶ【分】
1 どちらに傾くかの度合い。自分のほうに有利になる度合い。「対戦成績では分が悪い」
2 利益の度合い。「分のいい商売」
3 平らなものの厚さの度合い。「分の厚い本」
4 音楽で、全音符の長さを等分に分けること。「四分音符」
5 全体を10等分したもの。10分の1相当の量。「工事は九分どおり完成した」「三分咲きの桜」
6 単位の名。
㋐割合・利率で、1割の10分の1。全体の100分の1。「打率二割三分」
㋑尺貫法で、1寸の10分の1。
㋒尺貫法で、1匁の10分の1。
㋓温度で、1度の10分の1。体温にいう。「七度八分の熱が出た」
㋔江戸時代の通貨で、銭1文の10分の1、または金1両の4分の1。
㋕足袋などの大きさで、1文の10分の1。「一〇文三分」
ふん【分】
1 時間の単位。1分は60秒で、1時間の60分の1。記号min ミニット。「分刻みで行動する」
2 角度および経度・緯度の単位。1分は1度の60分の1。記号′ 分角。
3 尺貫法の目方の単位。1分は1匁の10分の1、厘の10倍。
[補説]上に来る語によって「ぷん」ともなる。
[類語]時・秒
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ぶ【分】
- 〘 名詞 〙 ( 多く数詞に付けて用いる )
- [ 一 ] 数量を分けること。また、分けた数量。
- ① 一定の数量をいくつかに等分すること。また、等分した数量。
- [初出の実例]「其田租為二二分一。一分入レ官。一分給レ主」(出典:令義解(718)賦役)
- ② 全体の数量をいくつかに分ける比率、割合を表わす単位。
- [初出の実例]「凡国司処二分公廨一式者、〈略〉其法者、長官六分、次官四分、判官三分」(出典:続日本紀‐天平宝字元年(757)一〇月乙卯)
- ③ 全体の数量を十等分したものの割合を表わす単位。割(わり)。
- [初出の実例]「凡田有二水旱虫霜一。不熟之処。〈略〉十分損二五分以上一免レ租」(出典:令義解(718)賦役)
- 「友をえらばば書を読みて、六分の侠気四分の熱」(出典:鉄幹子(1901)〈与謝野鉄幹〉人を恋ふる歌)
- [その他の文献]〔調謔篇‐七分読〕
- ④ 全体の数量を百等分したものの割合を表わす単位。割(わり)の十分の一、厘(りん)の一〇倍。パーセント。
- [初出の実例]「Ichiuariichibu(イチワリイチブ)」(出典:ロドリゲス日本大文典(1604‐08))
- [その他の文献]〔算経‐小数〕
- [ 二 ] 物事の度合。割合。
- ① ( 自分の方への比率の意で ) 自分の立場がうまくいく度合。→ぶ(分)が悪い。
- [初出の実例]「安子の側に〈略〉多少の歩はあるにしても」(出典:普賢(1936)〈石川淳〉六)
- ② 強さなどの度合。
- [初出の実例]「腕(かひな)の筋を抜れしかば、〈略〉弓も又分(ブ)を減ぜしが、弓勢は衰へず」(出典:読本・椿説弓張月(1807‐11)残)
- ③ 厚さの度合。また、厚み。「分が厚い(薄い)」「分がある(ない)」など。
- [初出の実例]「いや此の位の分(ブ)があっては、無疵でござりますから」(出典:歌舞伎・人間万事金世中(1879)序幕)
- [ 三 ] 単位を表わす。
- ① 長さの単位。
- (イ) 尺(しゃく)の百分の一、寸(すん)の十分の一、厘(りん)の一〇倍の長さ。曲尺(かねじゃく)で約〇・三センチメートル。〔令義解(718)〕 〔説苑‐弁物〕
- (ロ) 足袋(たび)・靴などの底の長さの単位。文(もん)の十分の一の長さ。「十文三分」
- (ハ) 銭貨の直径の十分の一の長さ。一文の直径を一寸として、その十分の一の長さ。〔随筆・世事百談(1843)〕
- ② 重さの単位。
- (イ) 両(りょう)の四分の一、銖(しゅ)の六倍の重さ。
- [初出の実例]「於二部内廬原郡多胡浦浜一、獲二黄金一献レ之。〈練金一分、沙金一分〉」(出典:続日本紀‐天平勝宝二年(750)三月戊戌)
- (ロ) 匁(もんめ)の十分の一の重さ。ふん。
- ③ ( 「歩」とも ) 貨幣の単位など。
- (イ) ( 重さの単位から転じたもの ) 金貨・銀貨の単位。両(りょう)の四分の一、銖(しゅ)の四倍の価。〔ロドリゲス日本大文典(1604‐08)〕
- (ロ) 銭貨の単位。文(もん)の十分の一の価。
- [初出の実例]「今銭幾文を幾字といふ人あり。〈略〉一文は四字也、是後世は銭面に必四字あればなり、〈略〉即、銭文之一字、蓋二分半也とあり」(出典:随筆・梅園日記(1845)三)
- [その他の文献]〔算法統宗‐彙法章・銭鈔名数〕
- ④ 体温の単位。度(ど)の十分の一。
- [ 四 ] ( 「歩」とも )
- ① 「いちぶきん(一分金)」の略。
- [初出の実例]「さて、二三度めのくはひに〈略〉酒一つなどいふて、取つくろはす、分一つかふたつとらせてよし」(出典:評判記・吉原すずめ(1667)上)
- ② 江戸、吉原で、座敷持の遊女をいう。金一分以上の揚げ代を取るのでいったもの。
- [初出の実例]「『ヘ、分でござります』『ぶとはげせぬ』『イヤおざしきもちでござります』」(出典:洒落本・自惚鏡(1789))
- [ 五 ] ⇒ぶ(歩)[ 二 ]
分の補助注記
「分」は呉音「ぶん」漢音「ふん」慣用音「ぶ」であるが、日本では、度合や度量衡の単位としては、「ぶ」が一般的である。
ぶん【分】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① 分けられた部分。分けまえ。
- [初出の実例]「嫡孫庶孫各承二父分一」(出典:令集解(738)田)
- 「其中己が分の饌を以て」(出典:日本霊異記(810‐824)上)
- ② その領域・範囲・種類に属する部分。
- [初出の実例]「此皇子、風骨不レ似二世間人一、実非二此国之分一」(出典:懐風藻(751)大友皇子伝)
- 「四五番までは破の分なれば」(出典:花鏡(1424)序破急之事)
- ③ ある範囲の分量。その相当量。
- [初出の実例]「只今のいひわたしのぶんにては、世に住甲斐はなかりき」(出典:浮世草子・好色盛衰記(1688)二)
- ④ 身分。身の程。分際。また、力量の度合。
- [初出の実例]「已足レ分、於レ今者、従レ有二非常一、何恨之有哉」(出典:左経記‐長和五年(1016)四月三〇日)
- 「貧しくて分を知らざれば盗み、力おとろへて分をしらざれば病を受く」(出典:徒然草(1331頃)一三一)
- [その他の文献]〔淮南子‐本経訓〕
- ⑤ ( 形動 ) 本来的にそのように認めたり、そのようにしたりするのが、当然であること。また、そのさま。
- [初出の実例]「分の敵を討て、非分の物をうたず」(出典:保元物語(1220頃か)下)
- ⑥ 他と区別される状態や段階・様子。ありさま。
- [初出の実例]「このときはじめて、生死をはなるる分あり」(出典:正法眼蔵(1231‐53)生死)
- 「しかし其様な事を苦にしてゐた分(ブン)には埒が明かない」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一)
- [その他の文献]〔荀子‐不苟〕
- ⑦ 仮にする状態。ふり。かっこう。
- [初出の実例]「我は此世にはない分(ブン)にして隠ゐるを」(出典:浮世草子・風流曲三味線(1706)一)
- ⑧ 限定される程度や事がら。それだけの事。その程度。
- [初出の実例]「けりゃう、三体の外はさいどうまでの分にて候」(出典:禅竹宛世阿彌書簡‐永享六年カ(1434か)六月八日)
- ⑨ ( 形動 ) 一般のものとちがっていること。一般のものとちがって、よいさま、すぐれているさま。特別。格別。結構。
- [初出の実例]「やしきひろくば竈をぶんにすへて、水をひなた水にし」(出典:浮世草子・立身大福帳(1703)七)
- ⑩ 一定の数量をいくつかに等分した数量。また、それによって比率を表わす単位。
- [初出の実例]「又売掛(うりかけ)も、たとへば十貫目の物、みつ壱(ひと)ぶんにして三貫目と請払ひすれば」(出典:浮世草子・日本永代蔵(1688)五)
- ⑪ 全体の数量を十等分したものの数量を表わす単位。割(わり)。ぶ。
- [初出の実例]「其子を養はかすに二百匁、肝入が分(ブン)一に廿匁取」(出典:浮世草子・新色五巻書(1698)五)
- ⑫ 長さの単位。寸(すん)の一〇分の一。ぶ。〔ロドリゲス日本大文典(1604‐08)〕
- [ 2 ] 〘 造語要素 〙 ( 名詞につけて用いる )
- ① それに相当するもの、それに見合うものの意を表わす。「苦労分」「辛労分」「一人分」「追加分」など。
- [初出の実例]「ソノ ytocubunni(イトクブンニ) マ ヒトエダワ ワレニ クレイ」(出典:天草本伊曾保(1593)獅子と犬と狼と豹との事)
- ② それに相当する身分・立場であることを表わす。「大将分」「士分」など。
- [初出の実例]「火燵にも四人の外は借屋分」(出典:俳諧・二息(1693))
- ③ その身分に準じるもの、また、仮にその身分に見立てるものの意を表わす。「母親分」「兄弟分」など。
ふん【分】
- 〘 名詞 〙 単位の名称。促音、撥音に続くとき「ぷん」となる。
- ① 重さの単位。また、銀目の単位。匁(もんめ)の一〇分の一、厘(りん)の一〇倍。ぶ。〔ロドリゲス日本大文典(1604‐08)〕
- ② 時間の単位。一時間の六〇分の一、一秒の六〇倍。
- [初出の実例]「一時を六十分とし、一分を六十秒とす」(出典:暦象新書(1798‐1802)中)
- ③ 角度や、経度・緯度の単位。度(ど)の六〇分の一、秒の六〇倍。
- [初出の実例]「夫より以来、漸く離れ、今に至ては五度四十余分の処に在り」(出典:北極出地測量艸(1834)(古事類苑・文学四一))
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
普及版 字通
「分」の読み・字形・画数・意味
分
常用漢字 4画
(旧字)
4画
[字音] ブン・フン
[字訓] わかつ・わける・はなれる・きまり・さだめ
[説文解字]
[甲骨文]
[金文]
[字形] 会意
(八)+刀。は両分の形。刀でものを両分する意。〔説文〕二上に「別つなり」とし、「刀は以て物を別するなり」という。分割・分異の意より、その区分に従うこと、身分・名分などの意となる。
[訓義]
1. わかつ、わける、二分する。
2. はなれる、へだてる、ことにする、ばらばらになる。
3. ちがい、くべつ、きまり、さだめ、つとめ。
4. ものの単位、長さ、重さ、角度、時間。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕 ワカツ・ワク・ワカレタリ・コトハリ・ヒトシウス・イササカバカリ・アキラカナリ・アカル・ケヂメ・アタフ・ホド・シバラク・ヒトリ/大 オホムネ/不 ネタマシカ・ネタイカナ/隨 ナフサナフサ 〔字鏡集〕 コトハリ・タダス・アキラカナリ・イタス・ワカツ・ナカバ・ホドコス・アミ・アカル・ケジメ・イササカバカリナリ・ヒトヘニ・ココロフカシ・ヒトシウス・ワカレタリ・ヒトシ・ヘダツ・シバラク・カギル・アタフ・ホド・オホキナリ・ワキマフ・ヒトリ・ウタ
[声系]
〔説文〕に(ふん)声として、氛・・・・(貧)・(粉)・・忿・扮・(紛)など二十五字を収める。おおむね細分するもの、勢いよく分散するものの意がある。(きん)を〔説文〕三上にの亦声とするが、は酒器を倒(さかさま)にして頭上にそそぎ、鬯をする形で、の部分は、人の側身形の上に鬯酒(ちようしゆ)のふりかかる形である。
[語系]
piunは(半)puanと声義近く、(判)・phuan、辨(弁)bianも両分・分別することをいう。別biatは骨を解く意で、分解することをいう。分与することを(頒)penという。
[熟語]
分異▶・分位▶・分陰▶・分韻▶・分紜▶・分秧▶・分解▶・分乖▶・分界▶・分外▶・分隔▶・分劃▶・分割▶・分甘▶・分管▶・分岐▶・分器▶・分期▶・分義▶・分居▶・分境▶・分鏡▶・分暁▶・分局▶・分均▶・分襟▶・分区▶・分形▶・分権▶・分限▶・分光▶・分功▶・分毫▶・分国▶・分座▶・分際▶・分歳▶・分剤▶・分索▶・分錯▶・分散▶・分爨▶・分施▶・分賜▶・分至▶・分次▶・分日▶・分手▶・分銖▶・分守▶・分售▶・分処▶・分書▶・分職▶・分身▶・分振▶・分親▶・分水▶・分寸▶・分析▶・分席▶・分説▶・分陝▶・分▶・分訴▶・分曹▶・分争▶・分贓▶・分族▶・分題▶・分宅▶・分▶・分担▶・分段▶・分地▶・分直▶・分庁▶・分定▶・分鼎▶・分途▶・分土▶・分度▶・分頭▶・分内▶・分年▶・分派▶・分背▶・分白▶・分撥▶・分半▶・分班▶・分藩▶・分泌▶・分秒▶・分付▶・分布▶・分賦▶・分袂▶・分別▶・分弁▶・分▶・分封▶・分謗▶・分剖▶・分崩▶・分脈▶・分明▶・分門▶・分野▶・分憂▶・分与▶・分賚▶・分理▶・分釐▶・分離▶・分流▶・分領▶・分量▶・分類▶・分隷▶・分裂▶・分列▶・分路▶
[下接語]
安分・按分・一分・応分・分・過分・涯分・気分・岐分・暁分・局分・均分・襟分・口分・区分・検分・才分・細分・三分・四分・時分・銖分・秋分・十分・充分・宿分・春分・処分・条分・常分・職分・随分・寸分・成分・星分・積分・節分・存分・多分・大分・中分・通分・定分・鼎分・天分・当分・等分・二分・派分・配分・八分・半分・微分・百分・布分・部分・平分・剖分・本分・未分・名分・命分・明分・夜分・余分・養分・利分・両分・領分・隷分
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分 (ぶん)
元来は区分されていることを意味する語であるが,そこから派生した,位,身分という意味が士農工商の区分けと重なって江戸時代には一般化した。〈分に過たる衣裳を是非に着よと言ものはなき事なり〉(石田梅岩《斉家論》)のごときが典型的な用例だが,さまざまな名辞と結びついて相似たニュアンスの中で使われた。しかし,その用法は微妙な含意をもつことになる。〈それ天下の四民士農工商とわかれ,各々其職分をつとめ,子孫業を継で其家をとゝのふ〉(三井高房《町人考見録》),〈下に居て上をしのがず,他の威勢あるを羨まず,簡略質素を守り,分際に安んじ〉(西川如見《町人囊》),〈家業を専にし,懈る事なく,万事其分限にすぐべからざる事〉(1711年(正徳1)の高札,手島堵庵《会友大旨》)。これらは階層秩序にかかわる通常の意味の例である。このうち分限は〈人の分限になること〉(井原西鶴《世間胸算用》)の場合には金持ちの意になる。同じ意味の用例は西鶴のほかにもかなりあり,士農工商という階層身分の中でその上限に達した人という意である。〈分散,欠落行方しれず〉(中沢道二《道二翁道話》)の〈分散〉が分からはずれたから破産した者とされたのも,同じ発想の悲惨な場面への運用である。しかし他方,〈其一分を捌き兼ねつるは独りもなし〉(西鶴《日本永代蔵》),〈一分立てて見せて下さんせ〉(近松門左衛門《心中天の網島》)の〈一分〉は,それぞれ一人前の仕事,一人前の心意気という意味を含みもっている。人間が分に区分けされている存在であるとされるところで,個人としてのあり方を表現する際に一分という言葉で限定する発想が生じた。それは自分が自分であることの意地を示す言葉でもあった。分という言葉が備えることになったこのようなふくらみに注目すべきである。
執筆者:野崎 守英
分 (ぶ)
尺貫法における長さまたは質量の単位および割合の単位。(1)長さの単位。1/10寸に等しく,1891年制定の度量衡法では,曲尺(かねじやく)の場合約3.03mmであり,分量単位は十進法による厘,毛,糸である。また鯨尺1分は約3.8mmである。(2)質量の単位。匁の1/10で約0.375gである。平安時代から江戸時代まで用いられ,6銖(しゆ)に等しく,4分で1両になる。(3)割合の単位。1/100を表し,1/10割である。分量単位は十進法による厘,毛,糸である。
執筆者:三宅 史
分 (ふん)
(1)時間の単位で,記号はmin。1min=60sと定義されている。(2)角度の単位で,記号は〈′〉。1′=(1/60)°=(π/10 800)radである。(1)(2)とも国際単位系(SI)以外の単位であるが,SIと併用される単位となっている。(3)尺貫法の質量の単位。1/10匁に等しく,1891年制定の度量衡法によれば,0.375gに等しい。分量単位は1/10分の厘,1/10厘の毛である。
執筆者:大井 みさほ+三宅 史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
分(ぶ)
ぶ
「ふん」ともよぶ。量の種類にかかわらず、ある単位の分量をいう。文字は物を切り分けるという意味。(1)尺貫法の単位として、尺度の場合は1寸の10分の1(330分の1メートル)、質量の場合は1匁(もんめ)の10分の1(0.375グラム)をいう。(2)割合を表すのに用いる場合は、一般には10分の1、つまり0.1をいうが、何割何分というときの分は1割(0.1)の10分の1、つまり0.01を表すことになる。また近世以前に用いられた通貨である両の4分の1も分といわれる。時間の単位の「ふん」(記号はmin)、あるいは平面角(角度)の単位「ふん」(記号は′)と混同しない注意が必要である。
[小泉袈裟勝・今井秀孝]
分(ふん)
ふん
minute
時間、平面角および経緯度の単位。時間と平面角の場合は国際単位系(SI)と併用される単位である。(1)時間の単位 1秒の60倍、1時間の60分の1で、記号はmin。(2)平面角の単位 1度角の60分の1、1秒角の60倍、π/10800ラジアンに相当し、記号は「´」。(3)経緯度の単位 経緯度1度の60分の1、1秒の60倍で、記号は「´」。
[内田 謙]
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分
ぶ
(1) 小数の単位で 0.1。ただし何割何分というときは1割の 0.1倍,すなわち 0.01。 (2) 尺貫法の長さの補助単位で,1寸の 0.1倍。 (3) 尺貫法の質量の補助単位で,1匁の 0.1倍。 (4) 江戸時代の通貨単位で,1両の4分の1。
分
ふん
minute
(1) 時間の単位 記号は min。1秒の 60倍,1時間の1/60。 (2) 角度の単位 記号は′。1度の1/60,1秒の 60倍。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
分
ぶ
江戸時代における金貨の貨幣単位。両の4分の1,朱の4倍。両と同様に重量単位から転じた。慶長小判では1枚の重量を4匁7分6厘,一分金はその4分の1としたが,のち改鋳によって小判の重量が変化しても両と分の割合は変わらなかったので,重量単位としての意味を失い,貨幣単位として定着した。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
分【ぶ】
(1)漢数詞では1/10を表す。1分=10厘(りん)=100毛。(2)割合を表すときは1/10割つまり1/100をいう。(3)尺貫法の長さの単位。1分=1/10寸=1/100尺≒3.0303mm。(4)昔の通貨単位。1両の1/4,または1文の1/10。
分【ふん】
(1)時間の単位。記号min。1分=1/60時=60秒。(2)角度の単位。記号′。1分=1/60度=60秒。
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
ぶ【分】
➀尺貫法の長さの単位。1分は1尺の100分の1。約0.003m。◇名称は、キビ1粒の長さにちなむとされている。
➁尺貫法の重さの単位。1貫(かん)の1万分の1、1匁(もんめ)の10分の1を1分とする。約0.375g。
ふん【分】
➀時間の単位。記号は「min」。1minは1秒の60倍、1時間の60分の1。
➁角度・経緯度の単位。記号は「′」。1′は1度の60分の1。πラジアンの1万800分の1。
出典 講談社単位名がわかる辞典について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
世界大百科事典(旧版)内の分の言及
【円】より
…銭・厘を補助単位とする十進法の計算体系をもつ。それまで流通の江戸期金貨には1601年(慶長6)制定の両・分(ぶ)・朱という単位が使用されていた。1両=4分,1分=4朱の四進法であり,鋳貨の形態にも小判形と方形との2種があった。…
【金】より
…日本では古くから黄金(おうごん∥こがね)と呼ばれ,五色の金の一つとされている。 古くから使用された理由は,大部分単体の形で産出するからである。これを自然金という。…
【尺】より
…尺貫法における長さの単位。曲尺(かねじやく)の尺と鯨尺の尺の2種に分かれる。(1)曲尺の尺。…
【度量衡】より
…
[語義と出典]
度,量,衡の3文字は順に,長さ,体積,質量を意味し,同時にそれぞれをはかるための道具(ものさし,枡,はかり)や基準を意味する。なお衡と類縁の文字で権(けん)というのもあるが,これは,はかりそのものではなく,分銅のほうを指す。これら4文字をさまざまに組み合わせた語が古くから用いられており,例えば度量という語は,人の心の広さを指すのに用いられ,また他方では度量衡,度量権衡などの語と同義的にも用いられて,〈長さ,面積,体積,質量をはかること,これらの量をはかるための道具や基準,また,それらにかかわる法律的,行政的な制度ないし公共的な協約〉を指すものと解されてきている。…
【両】より
…1891年に制定された度量衡法によって尺貫法が確立される以前に用いられた質量の単位。古代中国の単位に由来し,銖‐分‐両‐斤(銖は中位の秬黍(くろきび)100粒の重さ,分=6銖,両=4分,斤=16両)の系列をなし,唐の開元通宝の目方に等しい匁に対しては1両=10匁の関係にあり,ほぼ37.3gに相当する。ただし鎌倉時代後期以降,京都では金1両は4匁5分,銀1両は4匁3分などとされた。…
※「分」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」