分け(読み)ワケ

デジタル大辞泉 「分け」の意味・読み・例文・類語

わけ【分け/別け】

分けること。また、分けたもの。分配。「形見―」
勝負が決まらないこと。引き分け。「痛み―」
芸娼妓などが、稼ぎ高を主人折半にすること。また、その芸娼妓。
「寿々廼家の―の芸者であった竹寿々の」〈秋声縮図
食べ余りの食物
「なんぼ我にくひさいたる桃の―をくれた」〈史記抄・申韓伝〉
支払い。勘定
年明けて、二、三度も―の立つ客に会うた」〈浮・置土産・一〉

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精選版 日本国語大辞典 「分け」の意味・読み・例文・類語

わけ【分・訳】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「わける(分)」の連用形の名詞化 )
  2. [ 一 ] 分割・分配すること。
    1. 分けること。分配。
      1. [初出の実例]「自今以後納所(なっしょ)は君にまかすべし二合三合はわけのよろしき」(出典:良寛歌(1835頃))
    2. 食べ残しの食物。食い残し。また、供物のおさがり。また、食べ残すこと。
      1. [初出の実例]「此鉢にくさった様なる飯汁のわけなんどを著けぬぞ」(出典:足利本人天眼目抄(1471‐73)下)
      2. 「けふは又はきだめ山に蒲鉾のわけをすてたる祇園会の跡」(出典:狂歌・徳和歌後万載集(1785)一五)
    3. 芸娼妓などが、そのかせぎ高を抱え主と半々に分けること。また、その芸娼妓。
      1. [初出の実例]「分(ワケ)とは其花代宿とふたつに分るなるべし」(出典:浮世草子・好色一代女(1686)六)
    4. ( から転じて ) 花代が五分(一匁の半分)の端女郎の称。そろり。北むき。分女郎。
      1. [初出の実例]「端女郎は鹿恋より下、みせ女郎といふなり。〈略〉位は一を壱寸とも、月ともいふ。〈略〉又五を五歩ともわけ共北むき共そろりともいへり」(出典:浮世草子・御前義経記(1700)一)
    5. 勘定。支払い。
      1. [初出の実例]「当座払に万(よろづ)ケ様の分(ワケ)ぞかし」(出典:浮世草子・好色二代男(1684)二)
    6. 村中の小区分。
      1. [初出の実例]「一村中、亦因民之所群処区別、俗称之為字、或小名、履之以組、曰某組又曰某坪・某分」(出典:日本国郡沿革考(1878)一(古事類苑・地一))
    7. 相撲などで、勝負が決まらずひきわけること。
      1. [初出の実例]「初日には小結の源氏山に敗れ、二日目には関脇の朝汐と分を取り」(出典:相撲講話(1919)〈日本青年教育会〉常陸山、梅ケ谷時代の壮観)
  3. [ 二 ] ( 「訳」と書くことが多い ) 物事を判断すること。また、その判断した内容。
    1. 物事の違いなどを判別すること。区別。違い。
      1. [初出の実例]「乱世にならでは、君子小人のわけは、見へぬぞ」(出典:中華若木詩抄(1520頃)中)
    2. 事柄ことばなどの意味・内容。
      1. [初出の実例]「孟徳初は中聖のわけをしらいで疑うたぞ」(出典:玉塵抄(1563)一〇)
    3. 物事の道理。すじみち。わけみち。→わけが立つ
      1. [初出の実例]「Vaqega(ワケガ) キコエヌ、または、キコエタ〈訳〉物事がよく理解できない、または、物事がよく理解できてはっきりした」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    4. 事情や理由。物事の原因やいきさつ。
      1. [初出の実例]「ちと申受にくい訳が御座る」(出典:虎寛本狂言・素襖落(室町末‐近世初))
    5. 特に、情事やそのいきさつ。また、色の道に通じていること。
      1. [初出の実例]「太鞁女郎にも大形成(おほかたなる)わけは見ゆるし」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)六)
    6. 遊里の慣習作法
      1. [初出の実例]「酒のはづみと床入の分(ワケ)、大助べいか実のなき手なれば、分て、時行(はやる)事也」(出典:浮世草子・好色貝合(1687)下)
    7. 活用語の連体形を受けて「…わけだ」「…わけである」「…わけです」「…わけじゃ」などの形で用いる。
      1. (イ) 事情や理由にもとづいて、当然のことと納得できる気持を表わす。→わけが無い
        1. [初出の実例]「ああいふ奴が本校に居っては、到底(つまり)本校体面を汚す道理(ワケ)じゃ」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉九)
      2. (ロ) 事の成り行きやいきさつを説明してその結果や結論を示す。→わけには行かぬ
        1. [初出の実例]「さうすればこんな面倒な会議なんぞを開く必要もなくなる訳だ」(出典:坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉六)
    8. 下に打消を伴って「…するわけでは(も)ない」「…するわけのものでは(も)ない」の形で用いる。
      1. (イ) 常識的に考えて、よくない、ありえないの意を表わす。
        1. [初出の実例]「各自(めいめい)の量簡丈にしきゃア出来る訳のものぢゃ御座いません」(出典:落語樟脳玉(下の巻)(1891)〈三代目三遊亭円遊〉)
      2. (ロ) 事実や事情がそうではない、の意を表わす。
        1. [初出の実例]「金を三円許り貸してくれた事さへある。何も貸せと云った訳ではない」(出典:坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉一)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「分け」の意味・わかりやすい解説

分け
わけ

日本音楽の用語。「歌い分け」の略語。三味線音楽や山田流箏曲などで,その歌唱を分担して独唱すること,およびその部分をいう。詞章本にはかたかなでワケと示される。分担は必ずしも第2奏者であるワキ以下と限らず,第1奏者であるタテもそのワケを分担することがあるが,タテは別にシテと示される第1奏者が担当することに限定された独唱部を必ず演唱する。

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