精選版 日本国語大辞典 「切腹」の意味・読み・例文・類語
せっ‐ぷく【切腹】


(2)中世末期からは②のように刑罰としても行なわれたが、執行官の手にかからない、名誉ある死刑として、侍以上の武士にのみ認められた。
(3)明治三年(一八七〇)の新律綱領でも、士族には自裁が認められたが、同六年の改正律例で廃止された。ただし、自殺の方法として、その後も軍人には重んぜられ、これらは「割腹(かっぷく)」と呼ばれることが多い。
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短刀で腹を切って死ぬ自決の一方法で、割腹(かっぷく)、屠腹(とふく)ともいわれ、外国にも「ハラキリ」として知られる日本独特の習俗。平安時代に始まるとされ、武士道が発達した鎌倉時代にかけて定着し、中世、近世を通じて行われた。人間の魂は腹に宿るという考えから、勇敢に腹を切ることは、武士道を貫くうえで最適な行為となった。動機は、主君に殉ずる追腹(おいばら)、職責や義理上の詰腹(つめばら)、捕虜の恥辱を逃れるための切腹、また無念のあまり切腹する無念腹などがある。切り方は、腹一文字にかき切る一文字腹、さらに縦にみぞおちから臍(へそ)の下まで切り下げる十文字腹が勇壮でよいとされたが、体力的にそこまでは不可能で、なお喉(のど)を突いて絶命に導いたようである。江戸期に入ると、動機の純粋さも失われていき、方法も形式化した。つまり、武士の切腹にあたり、付き添って首を斬(き)り落とす介錯(かいしゃく)の作法である。それも、しだいに、腹を切る寸前に介錯人が背後から首を斬ることが多くなった。
介錯は3人で勤めた。3人の介錯というのは、介錯(大介錯ともいう)、添(そえ)介錯(助(すけ)介錯ともいう)、小介錯の三役で、介錯は首を討つ役、添介錯は短刀ののった三方を持ち出す役、小介錯は首を実検に入れる役である。また、首を斬るのに「三つの規矩(きく)」と「四つの間(ま)」という心得があった。「三つの規矩」の一つは短刀をいただくとき、二つは左の腹を見るとき、三つは腹へ短刀を突き立てるとき、「四つの間」の一つは三方を据えて退くとき、二つは三方を引き寄せるとき、三つは刀を把(と)るとき、四つは腹へ突き立てるときで、これらが早すぎても遅すぎてもいけないとされた。しかし、三方にのっているのは短刀でなく、扇子である場合もあり、これを扇腹(おうぎばら)とよんだ。
切腹は自決のほかに、中世から処刑の方法としても採用された。上級武士に対する名誉刑として、自分の不始末を自力で処理するという思想から切腹を賜ったのである。上士の犯罪者の場合は、預けられた大名などの屋敷内で、中士の切腹は牢屋(ろうや)内で行われた。この刑罰としての切腹は1873年(明治6)に廃止された。自殺の方法としては明治時代以降もたまにみられ、1945年(昭和20)8月25日、早暁(そうぎょう)、東京都内旧代々木(よよぎ)練兵場の一角で「大東塾(だいとうじゅく)十四士」が古式にのっとった集団割腹自決を行った。また近年では作家三島由紀夫の切腹(1970)の例がある。
[古川哲史・稲垣史生]
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割腹・屠腹・腹切とも。刀で自分の腹を切る自殺または死刑の方法。平安時代以後,勇気や真心を示す自殺の方法として武士の間で一般化し,室町時代には武士に対する刑罰としても行われるようになった。中世末までは刀を左の脇腹に突き立て右脇まで引く一文字,そこからいったん抜いた刀を縦に鳩尾(みぞおち)から臍下まで切り下げる十文字などがあり,その式法も定まらなかったが,しだいに儀式化した。江戸時代には上級武士に対する死刑としても用いられた。500石以上の者は大名の屋敷内で,それ以下の者は牢内で,検使が見届けるなか執行された。ただしその方法は完全に儀式化し,実質的には介錯人(かいしゃくにん)による斬首の刑であった。刑罰としては1873年(明治6)廃止されたが,自殺としては軍人を中心にその後も行われた。
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…かたわらの御様場(おためしば)においては,死罪人の死体を用い様斬(ためしぎり)を行った。なお武士の閏刑(じゆんけい)である切腹の場所は,牢屋敷内揚座敷(あがりざしき)前庭のほか,時宜によって当人預け先の屋敷内があてられた。牢屋外の刑場として,江戸では千住小塚原(こづかつぱら)と品川鈴ヶ森に常設のものがあり,これを〈両御仕置場〉と称した。…
…【小林 宏】
[日本中世]
律令法で刑罰の適用に大きな意味をもったのは犯罪者の官位の有無であったが,中世の武家法では侍身分が重視され,謀書(文書偽造)の罪について,侍は所領没収,凡下(ぼんげ)は火印,また人を殴る罪について,侍は所領没収,郎従以下は召禁(禁錮),また密懐(姦通)の罪について,侍は所領半分没収,名主,百姓は過料(以上,《御成敗式目》および追加法)などと定められた。また,窃盗の罪について,凡下は1回目は火印,3回累(かさ)ねれば死罪とするが,侍は1回でも遠流(おんる)としたごとく,犯罪の性質によっては侍が重刑を科せられたことや,遅くも15世紀には,侍身分に死罪の栄誉刑として切腹が認められたことなど,いずれも侍身分重視の証左である。 中世の刑罰の態様を見ると,その特徴は大よそ以下の3点にまとめることができる。…
… 腹や腹部臓器に心や魂が宿るとする見方は日本にも古くからあり,今も〈腹をさぐる〉〈腹を割った話〉〈腹に一物〉その他の用法に表現されている。切腹はハラキリharakiriとして欧米にも知られるが,自殺手段というよりは多くの場合自己の潔白あるいは赤心の表明形式(新渡戸稲造《武士道》1899)で,内臓を露出して真心を見せるとの思い入れが強い。腹部臓器を貫いて脊柱のすぐ前を縦走する腹部の大動脈や下大静脈などを切断しなければ,切腹しても直ちに死に至ることはない。…
※「切腹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
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