改訂新版 世界大百科事典 「制度理論」の意味・わかりやすい解説
制度理論 (せいどりろん)
théorie de l'institution
フランスの公法学者M.オーリウの唱えた理論。当時のフランスの個人主義的法理論およびドイツの法実証主義的法人格理論を克服するものとして提唱された。それはさまざまな側面を有する理論で統一的な把握は容易でないが,次の三つの研究を含むとされる。第1に,〈客観的な社会的なるもの〉として考えられた制度に関する研究,第2に,その制度が生成存続していく法的メカニズムとしての表象(代表)的過程,第3に団体的制度もしくは法人格の研究である。彼はカトリック的個人主義の立場に立ちながら社会的なるものの客観的実在と持続性を論証しようとし,そのための概念として〈制度〉をとらえる。制度とは,社会内の要素でその持続が個々人の主観的意志に依存しないものいっさいを指す。では何がその持続を支えているのか。客観的実在としての理念である。この理念に支えられた制度の内部構造の法的分析は制度理論の最も重要な部分で,とくに行政法の分野で大きな影響を与えた。他方で,制度理論はドイツ的な法人格理論の批判としても構想されている。しかし,L.デュギーと異なり,法人格理論を全面的に否定するのではなく,法人格理論の適用場面を団体(主体)間の関係に限定し,団体内部の関係には制度理論が適用されるとした。
執筆者:高橋 和之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報