刻む(読み)キザム

デジタル大辞泉 「刻む」の意味・読み・例文・類語

きざ・む【刻む】

[動マ五(四)]
刃物で物を細かく切る。「ネギを―・む」
物の形を彫りつける。彫刻する。「仏像を―・む」
刃物などで筋状に切れ目を入れる。また、彫ったような凹凸をつける。「文字を碑に―・む」「額に―・まれたしわ
細かく区切るようにして継続・進行していく。「柱時計が時を―・む」「年輪を―・む」
心の中にしっかりとどめる。しっかりと記憶する。「忠告を胸に―・む」「心に―・まれた幼い頃の記憶」
入れ墨をする。
おもてを―・みて」〈雄略紀〉
責め苦しめる。さいなむ。
「わが身をただ今までいろいろに―・まれ」〈浮・文反古・五〉
[可能]きざめる
[類語](1切る裁つちょん切るぶった切るかき切る切り刻むちぎる切り抜く刎ねる切り込む切り出す叩き切る焼き切る捩じ切る切り開く切り落とす切開/(6入れ墨彫り物刺青タトゥーくりからもんもんげい文身ぶんしん入れ黒子ぼくろ黥首げいしゅ黥面げいめん筋彫り箚青さっせい墨刑ギミックアクセサリー彫る

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「刻む」の意味・読み・例文・類語

きざ・む【刻】

  1. 〘 他動詞 マ行五(四) 〙
  2. 切って細かくする。こまぎれにする。
    1. [初出の実例]「青き苔をきざみて、まき絵のかたに、此の歌を附けて奉りける」(出典:伊勢物語(10C前)七八)
    2. 「日本にては葉を細かに刻みて糸の如くにし、烟管につめて火を点じ、其の烟を吸ふを常とす」(出典:幼学読本(1887)〈西邨貞〉五)
  3. 物の形を彫りつける。彫って形づくる。彫刻する。
    1. [初出の実例]「丁蘭は木を雕(キサみ)て母と為(せ)り」(出典:東大寺諷誦文平安初期点(830頃))
    2. 「やうやう仏のみかたにきざみたてまつるあひだ」(出典:古本説話集(1130頃か)七〇)
  4. 刻み目をつける。また、そのような形につくる。また、比喩的に、顔の表面にしわなどができる。顔に、ある表情や雰囲気をつくる。
    1. [初出の実例]「情(こころ)の惷(おろか)なること船を刻(キサミ)しに同じく〈国会図書館本訓釈 刻 キサミシニ〉」(出典:日本霊異記(810‐824)中)
    2. 「目尻に皺をきざんだ三十八歳という女の年齢が」(出典:夏の終り(1962)〈瀬戸内晴美〉)
  5. いれずみをする。黥刑(げいけい)に処す。
    1. [初出の実例]「天皇瞋て。面を黥(キサミ)鳥養部と為」(出典:日本書紀(720)雄略一一年一〇月(前田本訓))
  6. 分割する。細かくわける。
  7. 細かく区切るようにして、継続的に動作や状態を続ける。「時をきざむ」「年輪をきざむ」
    1. [初出の実例]「その僕の門を出るより、返るまで大鼓をきざみて」(出典:随筆・槐記‐享保九年(1724)八月二二日)
    2. 「数十年の歴史を刻み」(出典:婉という女(1960)〈大原富枝〉五)
  8. 責め苦しめる。さいなむ。
    1. [初出の実例]「或は後世の福楽を期して、己を剋(キサミ)自を勉め」(出典:大智度論平安初期点(850頃か)一三)
    2. 「わが身を只今までいろいろにきざまれ」(出典:浮世草子・万の文反古(1696)五)
  9. 心に深く記憶する。刻みこむ。
    1. [初出の実例]「今生の遺言とも心得て深く心にきざみ置かれ度候」(出典:遺言(1900)〈国木田独歩〉)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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