動産(読み)どうさん

精選版 日本国語大辞典 「動産」の意味・読み・例文・類語

どう‐さん【動産】

〘名〙 土地およびその定着物を除いた一切の有体物無記名債権は、法律上動産とみなされ、また船舶については、不動産に準じて取り扱われる。
※仏国政典(1873)〈大井憲太郎訳〉二「財産は之に動産と不動産との二類あり」

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デジタル大辞泉 「動産」の意味・読み・例文・類語

どう‐さん【動産】

土地およびその定着物をいう不動産以外の物。現金・商品家財などのように形を変えずに移転できる財産。無記名債権は動産とみなされ、船舶は不動産に準じた扱いを受ける。→不動産

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百科事典マイペディア 「動産」の意味・わかりやすい解説

動産【どうさん】

民法上,不動産以外の物(民法86条)。無記名債権商品券乗車券など)も動産とみなされる。容易に移動し得ること,占有によるほか公示の方法がないことなどの点で不動産と異なる。その物権譲渡については占有の移転(引渡し)が対抗要件とされ,占有に公信力(〈公信の原則参照)が与えられ,即時取得が認められている。なお,民事執行法上の動産は民法上のそれとはやや異なる。
→関連項目公示の原則先占引渡し

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「動産」の意味・わかりやすい解説

動産
どうさん

土地およびその定着物を不動産といい(民法86条1項)、それ以外の物をすべて民法上動産という(同条2項)。したがって、土地に付着する物であっても、定着物でない物(仮植中の樹木庭石など)は動産である。建物の造作も建物の構成部分とされないもの(障子ふすまなど)は動産である。また、民法は、無記名債権(たとえば、無記名公債・商品券・乗車切符などのように、証券に債権者名を表示せず、債権の成立・存続行使などに証券の存在を要件とする債権)を動産とみなした(86条3項)。

 動産と不動産とは法律上の取扱いを異にする。たとえば、権利の得喪・変更の対抗要件は、不動産では登記である(177条)が、動産の場合には引渡しである(178条)。また、日本の民法上、登記には公信力がなく、したがって、不動産の場合には、他人の物を善意・無過失で取得しても即時取得(善意取得)されない(したがって、所有権を取得しない)が、動産の場合には、一定要件のもとに即時取得が認められる(192条)。なお、船舶、自動車、農業用動産(農業用機械、牛馬、漁船など)などは動産であるが、特別法によって不動産に準じた取扱いがなされている。

[淡路剛久]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「動産」の意味・わかりやすい解説

動産
どうさん

民法上,不動産以外の物をいう (民法 86条2項) 。また,土地に付着していても定着物でない物 (仮植中の樹木など) は動産であり,無記名債権も動産とみなされる (3項) 。しかし,船舶,自動車,航空機などは特別法によって不動産に準じた取扱いを受ける。動産は,その性質上,不動産と異なり,取引によって転々としてその場所を変えるので,その物権変動の対抗要件は引渡しによる (178条) 。しかし物権変動の対抗要件としての引渡しは動産の物権変動を公示する方法としては不十分なので,取引の安全をはかるため,動産の占有に公信力を与え,占有を信頼して取引した者を即時取得の制度によって保護している (192条) 。

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世界大百科事典 第2版 「動産」の意味・わかりやすい解説

どうさん【動産】

不動産に対立する概念。民法上の定義では,土地およびその定著物(不動産)以外の有体物をすべて動産という(86条2項)。したがって,その種類,範囲は無限にちかい。物の生産に使用される各種の機械・器具から,日常の衣食住(消費生活)に供される食料品,医薬品,衣料品,各種電気製品,家具,自動車,書物,はては,船舶・航空機等々,すべて動産である。(1)通常の動産 動産と不動産との区別は古くからなされ,それは主として,その自然的性質およびその財産的価値の相違を根拠とするものであった。

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普及版 字通 「動産」の読み・字形・画数・意味

【動産】どうさん

家財。

字通「動」の項目を見る

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世界大百科事典内の動産の言及

【所有権】より

…債権が,特定人が他の特定人に対し一定の行為を請求する権利であるのに対し,物権に属する所有権は特定の物を排他的・全面的に支配する権利である。物とは有体物,たとえば動産・不動産をいう(民法85条)。この点で,所有権は無体物の支配権である無体財産権(特許権,意匠権,実用新案権,商標権,著作権など)と異なる。…

【不動産】より

…法律上,動産に対立する概念である。不動産を定義して,民法は,土地およびその定著物という(86条1項)。…

【箕作麟祥】より

…70年翻訳御用掛に制度取調兼勤となり,以後その後半生をフランス民法典をはじめ西洋法律書の翻訳に従い,ボアソナードらとともに旧民法その他の起草に参画するなど,明治政府の法典編纂事業を根底から支えつづけた。民権・動産・不動産・未必条件・治罪法・憲法などの訳語を考案し,フランス法理論の基礎をなす自由・人権思想を理解し,〈国政転変ノ論〉の訳稿で人民の抵抗権・革命権を認めるなど,法学官僚としても異色の存在であった。この間,明六社に参加して啓蒙活動を行い,東京学士会院会員,元老院議官,司法次官,貴族院議員などを歴任した。…

【物】より

… 次に,物は各種の観点から分類しうる。(1)不動産と動産 まず不動産動産とは,その自然的性質,経済的な価値,そのうえに成立しうる権利(とりわけ担保権)などの相違からして,分類の意義がある。不動産は,その重要性にかんがみ,登記簿という国家の管理する帳簿上にその物理的現況,権利関係が公示されうるしくみとなっている。…

※「動産」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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